細川内閣誕生時の再来も。自民公明の“下野”が見えてきた衆院選「大惨敗」を総括する

 

中でも裏金問題は自民党による組織犯罪であり、個人レベルの悪事ではありません。見て見ぬフリをした議員も含めて、自民党の国会議員全員に責任があると言えます。特に旧安倍派や旧二階派では事務局長が有罪となり、いわゆる旧安倍派「5人衆」は裏金問題の首謀者たちです。しかし、何とそのうちの4人が再び当選し、減らしたとは言え191人もが議席を確保したわけです。これでは、裏金問題に決着がついたとは到底言い難いでしょう。

この状況を鑑みると、若干の地域差はあるものの(福井2区と、和歌山2区や東京24区等)、日本社会は今や健全な自浄能力を失っていると言えるでしょう。当選した裏金議員たちがドヤ顔で万歳三唱している姿を見ると、一切何の反省もしていないことが伝わってきます。早速自民党は、非公認で当選した萩生田光一氏、西村康稔氏、平沢勝栄氏と、離党した世耕弘成氏を含む無所属当選者6人を自民党会派に引き入れるそうです。まさに「裏金の禊は済んだ」とばかり、節操のなさを露呈しています。

今回の選挙で良かったこととしては、自公、維新、国民民主他、改憲派の合計が2/3の310未満になったことです。自公暴走政権のまま改憲に突き進むのは極めて危険でしたが、ひとまずその危機は回避されました。そもそも、改憲だの護憲だのと言う前に、憲法を軽視し尊重しない国会議員が多過ぎます。おそらく、日本国憲法を一度もまともに読んだことすらない議員もいるのではないかと思います。

以前にも数々の具体例を挙げて書きましたが、ここしばらくの日本政府は、憲法に違反することばかりやってきました。日本国憲法を真に尊重しその精神を実践していたなら、今ほどおかしな社会にはなっていないはずです。

関連記事: 「改憲議論」以前の問題。率先して憲法違反を犯す自民や維新に高レベルの見識と叡智、倫理観が必要な憲法改正を任せられぬ訳

前回、田中秀征氏と佐高信氏の対談新刊本 『石橋湛山を語る いまよみがえる保守本流の神髄』(集英社新書) を紹介しましたが、両氏がYouTubeでも石橋湛山や日本の保守政治について語り合っています。1時間弱の動画ですが、こちらも見応えがありますので、最後に紹介しておきます。

関連動画: 石橋湛山と保守本流 総選挙が問うもの(田中秀征さん)【佐高信の隠し味】20241025

この本を読んだり、この動画を見たりすると、かつての日本には、「日本の良心」ともいえる保守本流の政治家として、石橋湛山はもとより、田中秀征氏もそうですが、まともな歴史認識と高い見識を持ち、気骨のある「無欲」の政治家が何人もいたことをあらためて思い起こすことができます。果たして彼らに匹敵するような政治家が今の日本にいるのでしょうか。

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【関連】自国民の幸福と安全を“ないがしろ”にした経済成長や世界貢献など砂上の楼閣。今こそ石橋湛山の「小日本主義」に立ち戻ろう

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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