世界の目がホルムズ海峡やウクライナ戦争に向かう中にあって、激しつばぜり合いを続けている米中両国。しかしその「戦略」には確実に変化が生まれ、トランプ政権にとっては「分の悪い戦い」となりつつあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、米中双方が繰り出した最新の制裁措置とその背景を詳しく検証。さらに中国側の対抗策から浮かび上がるアメリカの「見えない中国依存」と、米国側のカードが尽きつつある現状を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ホルムズ海峡でミサイル枯渇に悩むトランプ政権が対中交渉ではカードの不足に直面か
対中交渉では「カード不足」か。ホルムズ海峡で「ミサイル枯渇」に直面するトランプ政権の悩みどころ
米中間では相変わらず激しい制裁・規制合戦が続いている。
8月5日には、米連邦通信委員会(FCC)と米国土安全保障省が、いわゆる「ウイグル強制労働防止法」に基づき中国企業40社余りを新たに制裁対象とすると発表した。
リストにはひまわりの種や水餃子を生産する企業までが含まれていて、中国のSNSでは失笑も広がったが、中国政府は当然、これに強く反発した。
アメリカは釜山での米中首脳会談後も中国への攻勢の手を緩めていない。この半年余りで電気通信事業やドローン、消費者向けルーター、海底ケーブルなど多くの分野で対中制限措置を打ち出し、直近では先進的ロボットと電力インバーターの輸入制限も発表している。
中国側が神経質になるのも無理からぬところだろう。
だが、中国側の対抗措置の中身を詳細に見てゆくと、そこからは実に計算された、或いは抑制的に反応する姿勢が浮かび上がってくるのだ。
米中の戦いは、従来の喧嘩から一定のルールの下で行われるボクシングに変わったようでもある。
思えば第1次トランプ政権の末期には、米中が互いに領事館を取り潰してしまうほど対立はヒートアップした。あのころに比べれば、現在の対立はやはり一定のガードレールの中で起きているとみて間違いないのだろう。
実際、9月に予定されている習近平国家主席のワシントン訪問の予定も、現状では何の影響も受けていない。
米中が激しく競う最先端技術は、いまトランプ政権が最も力を入れるAIだ。しかし興味深いのは今回、アメリカ側が繰り出した制裁や規制は、必ずしもAI分野に限ったものではなかった点だ。
それはあたかもトランプ政権が、未だに中国に大きなダメージを与えられる「弱点」を探っているようにも映る。
両大国が「関係の安定」を選択したとしても「競争」は残る。従って、有効打を探る動きが残るのも想定の範囲と言ってもよいだろう。
だが、今回の米中間の制裁・規制の応酬を見ていて感じるのは、明らかにアメリカ側のカードが尽きつつあることだ。
それは中国側が発した対抗措置からも読み取れる。
中国側の反撃の中身を、少し整理して以下に列挙しよう。
- ドローンと関連部品・技術の対米輸出規制強化。
- 中国強制製品認証(CCC認証)の工場追跡検査で米国側認証機関への委託停止。
- 米試験・認証サービス企業コンプライアンス・テスティングの制裁リストへの追加。
- 輸入業務用プリンター・複写機に対する国家安全保障調査の開始。
- 米6企業・団体の制裁リストへの追加。
以上の5点だが、この反撃リストを見て、直ちに全体像が把握できる人は少ないはずだ。だから先に種を明かしておけば、この意図を要約すれば、「中国で儲けているにも関わらず中国に不利な動きをする企業や団体への攻撃」と「目には目を」、そして「見えない中国依存の強調」という3点に落ち着くだろう。
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