『女性セブン』が昨年12月19日発売号でスクープし、年末年始の話題をさらった元SMAP中居正広(52)の女性トラブル。このスキャンダルはまた、日本芸能界の闇をも明らかにするものでした。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東森さんが、これまでの旧ジャニーズ事務所タレントたちを巡る数々の疑惑と、昨年末に報告された芸能界の前近代性を象徴するさまざまな「不都合な真実」を紹介。さらに我が国のエンタメ市場が抱える問題点を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:24年末中居正広女性問題と公取委の芸能界の契約についての実態調査が映し出す、クールジャパンの虚像 オンナ子どもを露骨にターゲット コンプラ遵守のかけらもなし
深すぎる日本芸能界の闇。中居正広の女性トラブルが浮き彫りにした不都合な真実
年末に報じられた中居正広の女性トラブルは、日本の芸能界が抱える前近代的な問題を改めて浮き彫りにした。
報道によれば、2023年6月、中居と芸能関係者の女性が会食中にトラブルが発生。詳細は明らかにされていないが、中居側が約9,000万円の解決金を支払い、示談が成立したという(*1)。
中居の代理人は暴力行為を否定しているものの(*2)、女性は週刊誌の取材に対し「今でも許せない」と語っており、完全な解決には至っていないようだ(*3)。
中居を巡る女性問題は今回が初めてではない。2000年頃、SMAPの全盛期だったとき、彼は飲み屋で知り合った女性と交際。4年間の関係の中で女性が妊娠し、中居が中絶を強く勧めたとの報道があった(*4)。
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今回の件を受けて、かつての共演者である、おすぎ(79)が語った中居の「素顔」にも注目が集まっている。SMAP解散後、ラジオ番組で「嫌なところを散々見た」と述べたおすぎは、中居の表向きのイメージとは異なる一面を示唆していた(*5)。
一方、12月26日には、公正取引委員会が実施した音楽・放送業界の初の実態調査結果が発表され、芸能界の契約や慣行に関する問題点が明らかに。芸能人との契約が全て口頭のみの事務所が約3割存在し(*6)、契約内容を明示的に説明していない事務所も約1割あった(*7)。芸能の世界の闇は深い。
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SMAPも嵐も。オールドメディアが創り出したアイドルたちの所業の数々
SMAPについては、2001年8月24日、稲垣吾郎が東京都渋谷区内で現行犯逮捕される事件が発生。駐車禁止の路上に車を止め、女性警察官に免許証の提示を求められたが、これを拒否し車を急発進させようとしたため、道路交通法違反と公務執行妨害の容疑で逮捕。
2009年4月23日未明には、草なぎ剛が公然わいせつ容疑で現行犯逮捕。東京都港区の檜町公園で泥酔し、全裸になって騒いでいたという報道があった(*8)。
木村拓哉も2011年9月末と2012年1月にスピード違反を繰り返し、免許停止処分を受けている。当時、トヨタ自動車のCMキャラクターを務めていた木村は、交通ルールの順守を厳しく求められることとなった(*9)。
一方、嵐のメンバーについても、2010年に亡くなったセクシー女優・牧野田彩(AYA)さんとの関係が取り沙汰された。報道によると、櫻井翔を除く4人(大野智、相葉雅紀、二宮和也、松本潤)が牧野田さんと「親しい関係」にあったとされる(*10)。
旧ジャニーズ事務所は、テレビ、新聞、雑誌といったオールドメディアと密接な関係を築き、取材内容や報道に強いコントロールを持っていた。この影響力により、ネガティブな報道が抑えられるケースも多かった。
これらの出来事は、旧態依然とした事務所におけるコンプライアンスの緩さと、事務所の強い影響力を浮き彫りにしている。
公正取引委員会の実態調査で明らかになった日本芸能界の前近代性
年末には、日本の芸能界の前近代性を象徴する、もう一つの動きがあった。
12月26日、公正取引委員会は、芸能界で行われている独占禁止法違反の可能性がある行為について実態調査を行い、注意喚起を発表。特に、芸能人の移籍や独立を妨害する行為(例:「今後の芸能活動を一切行えなくなる」と脅す)(*11)や、移籍先の事務所に対して悪評を流す行為(*12)、複数の事務所が結託して移籍を制限する行為などがあったと報告(*13)。
契約に関する問題についても、契約書を介さず、口頭で契約を行っていた事例が全体の2割超(*14)、契約内容を明示的に説明しない事例が約1割存在し(*15)、あるいは退所後に芸名やグループ名の使用を制限する行為もあったとする(*16)。
さらに、報酬額や支払い方法に関する交渉に応じない(*17)、芸能人が望まない露出の多い仕事を強要する(*18)、放送局との関係で契約条件の交渉ができない(*19)、放送局の都合で仕事が直前にキャンセルされても補償がないといったことを問題視。
公正取引委員会は、これらの行為が独占禁止法上の「優越的地位の乱用」や「取引妨害」「取引拒絶」に該当する可能性があると指摘し(*20)、特に、移籍や独立が「ご法度」とされる業界の慣習に基づく妨害行為については、強い警告を発した(*21)。
女性や子どもを狙い撃ちに。世界的潮流の逆を行くクールジャパン
近年、日本のコンテンツが世界的に注目される理由の一つとして、しばし海外の研究者からは、日本が子どもを消費者として過剰にターゲットにしている点も指摘されている。
子ども向け広告やマーケティングに関する規制状況は、日本と海外で大きく異なる。たとえば、スウェーデンやノルウェーでは1991年に13歳未満の子ども向け広告が法律で禁止されている(*22)。これらの規制は、子どもが広告の意図や影響を十分に理解できないという脆弱性を保護する目的で導入された。
さらに、UNICEFは2018年のディスカッション・ペーパーで、子どもを他の消費者グループと同様にビジネスの対象とするべきではないと提言。子どもの感情や心理を利用したマーケティングの禁止を求めている(*23)。加えて、近年ではSNSの過剰利用によるメンタルヘルスへの悪影響や、子どもを過剰にマーケティングの対象とする問題にも世界的な関心が集まっている。
一方で、日本のビジネス界では、女性や、あるいは子どもをターゲットにしたマーケティングが広く受け入れられ、むしろ成功例として語られることが多い。しかし、このような状況は日本独自の課題を浮き彫りにしている。旧ジャニーズ問題に見られるように、幼い子どもがエンタメ市場の中心に置かれることで、彼らが被害を受けたり、経済的に搾取されるリスクが存在する。
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■引用・参考文献
(*1)「中居正広、9000万円女性トラブルで大ダメージかと思いきや「『テレビ界に必要』降板させられない局の事情」週刊女性 2024年12月29日
(*2)「中居正広、解決金9000万円女性トラブルは『払い損』代理人コメントで指摘される“性的問題”の『やばい内容』」週刊女性 2024年12月27日
(*3)「中居正広“女性トラブル報道”で…ソフトバンクがテレビ局にCM差し替え通達情報 同社に見解を聞いた」日刊ゲンダイ 2024年12月28日
(*4)本多圭「ジャニーズにもみ消されたSMAP中居正広の“中絶強制”過去『ただの細胞だから……』」日刊サイゾー 2012年12月17日
(*5)「中居正広の『嫌なところ散々見た』、女性トラブル報道で注目集めるおすぎ(79)がSMAP解散後に明かしていた『素顔』」女性自身 2024年12月28日
(*6)高島曜介「『契約は口頭だけ』3割、独立・芸名使用の妨害も 初の芸能実態調査」朝日新聞 2024年12月26日
(*7)「芸能人と事務所の関係 公取委が実態調査 “移籍や独立妨害も”」NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*8)「草なぎ剛 公然わいせつ容疑で逮捕 全裸で奇声、住民通報『シンゴ~』の声情報も」デイリースポーツ 2009年4月24日
(*9)「キムタク、2度のスピード違反で免停『心からおわびしたい』」デイリースポーツ 2012年3月15日
(*10)デイリースポーツ 2012年3月15日
(*11)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*12)「芸能人と事務所の関係実態調査 独禁法抵触恐れのケースも 公取委」テレ朝news 2024年12月26日
(*13)「芸能人の移籍妨害に警告=業界慣習、『独禁法違反も』─公取委」時事通信社 2024年12月26日
(*14)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*15)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*16)時事通信社 2024年12月26日
(*17)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*18)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*19)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*20)NHK NEWS WEB 2024年12月26日
(*21)渡辺暢「公取委、芸能界の契約巡り初の実態調査 『独立・移籍』問題浮き彫り」毎日新聞 2024年12月26日
(*22)岡山奈央「子どもをターゲットにした広告のゆくえ」EcoNetworks 2019年9月30日
(*23)「海外で厳格化する「子どもの個人データ保護」。求められる対応とは?」CRITEO 2022年11月2日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年1月4日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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image by: Leah Shang, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons