「同期が生成AIに強く、報告書をすぐに仕上げて上司に高く評価されています。自分ではろくに書いていないのに評価されるのは問題がないのでしょうか?」世界的なコンサルティング会社マッキンゼーで14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さんは、今回のメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』に送られてきた、そんな読者からの相談に答えています。赤羽さんはどんな回答をしているのでしょうか?
同期の一人が生成AIに強く、報告書をあっという間に仕上げて上司にも高く評価されています。彼がろくに自分では書いていないのを知っています。
Question
電子部品メーカーの調査部でいろいろな視点から調査をし、報告書を書いています。米国、欧州、韓国、中国、インドなどの状況を調査し、まとめる仕事です。
調査と言っても99%は公開されたウェブ情報や統計資料に基づきます。作業量が膨大なため、1つの報告書をまとめるのに3~4週間は優にかかります。英語の資料も読み込まないといけません。
新しく設置された部署で、同じ部署に同期が3人いるのですが、そのうちの一人が生成AIを徹底的に活用し、報告書をあっという間に仕上げて上司にも高く評価されています。
だいたい4,5日で一つの報告書をまとめているので、私の3~4倍のスピードです。最初は似たり寄ったりだったのですが、1年くらい前から速くなってきました。同期なので、彼がろくに自分では書いていないのを知っています。彼自身も自慢していますので。ずるをしているとは言いませんが、これで問題ないのかとも思います。今後どう取り組んでいけばいいでしょうか。
赤羽さんからの回答
ご相談どうもありがとうございます。最近よくあることだと思います。
結論からいうと、同期の方は生成AIを大変うまく活用しておられるので、相談者さんも大急ぎで学んで同じように活用していかれるのがベストです。
本来、上司がその同期の方の使い方を他の人にも共有させ、皆で切磋琢磨して使いこなすようにすべきなのですが、理解が乏しいのか、彼一人使うままに放置しているということだと思います。仕事なのにおかしな話です。
まずは、「生成AIを使った情報収集」「生成AIによる報告書作成」などで検索してください。YouTube動画が多数あるので、最新状況を頭にいれます。
同時に、同じような質問をGemini、Claude 3.5 Sonnet、ChatGPT、Feloなどに投げて5,6回質問を掘り下げ、理解します。PCのブラウザにはこの4つを立ち上げておき、最初の質問をGeminiにしたら、他の3つにもコピペでさっと質問をするのがいいです。そうすればそれぞれの違い、よさ、弱さなどが見えてきます。
その後、Gemini Deep Researchに最近取り組まれた調査を依頼してください。15~20ページの報告書がさっとできますので、どのくらい使えるものか、あやしいところはどこかを把握します。
理解している分野だと、意外に微妙な部分があることもわかると思います。依頼のしかたも文章を少し工夫して何度かやってみると、回答の癖なども見えてきます。
その上で同期の方に使い方を詳しく教えてほしいとお願いします。
プライドなど横において、先生・先輩のつもりで全部聞いてください。わかった振りをしなくていいです。付け焼き刃な状況だし、その方が明らかにうまいやり方をしている状況なので、「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」ということで聞いていきます。
それでバカにしてくるような同期の方なら、むしろこわくないです。人としてどうなのか、という疑問が残りますよね。
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30分でもいいからやり方を教えてもらったら、その日、家で2~3時間徹底的に使い込みます。出てきた疑問点は全部Gemini、Claude 3.5 Sonnet、ChatGPTに聞き続けます。関連動画も見ます。睡眠時間を削ってでもやったほうがいいです。
ここで出てきた疑問点を翌日また30分ほど時間をもらって全部聞きます。そしてその夜、また2~3時間徹底的にやりこみます。
ここまですると、2日ほど前にあった苦手意識がほとんど解消しているはずです。
相談者さんのほうが問題把握・解決力があり、洞察力もあり、慎重な性格であれば、同期の方の報告書の質を超えるのも時間の問題です。
その方は、かなり適当に使いこなして、出てきた報告書を大して吟味せずに提出している可能性が高いからです。生成AIのアウトプットは一見もっともらしいですが、自分が詳しい分野でやってみると結構いい加減なことがよくわかりましたよね。
そのようなやり方をしていると、必ず足をすくわれますので、相談者さんはぜひ適切な使い方をして、上司にも理解してもらってください。
上司をうまく巻き込んで、上司にも詳しくなってもらうのが結構重要です。教える立場になると関係が大いに改善されるからです。
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