どんなトップ女優にも不遇の時代や、人知れず流す涙はあります。ファンには決して見せられない、心の底から湧きあがる悔し涙――。でもその涙が、現場のスタッフを鼓舞したり、芸能マスコミに“隠れファン”を作ったりもするのですから人生わからないものですよね。芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんが詳しく解説します。
テレビの現場は「視聴率」に命を懸けている
『Smart FLASH』が、番組改編のこの時期にピッタリな【“番組打ち切り”通告の瞬間】という企画記事を何本か掲載しています。
番組の打ち切り理由としては視聴率低迷がいちばん多いわけですが、記事ではこれを出演者に通達するスタッフの苦悩や、自ら降板を申し立てたタレント、打ち切りを受け止めるタレント側の反応等の切り口で、テレビ局関係者等のコメントもまじえて伝えています。
私も、これまで幾度となくドラマや映画、バラエティ番組の収録現場に立ち会わせていただきましたが、高い視聴率の現場というのは、常に出演者やスタッフの笑いが絶えない印象で、タレントとスタッフたちとの距離感もとても“いい感じ”で、眉をひそめる面持ちの人間なんて誰ひとりいない、というのが正直な感想です。
みんなで高みを目指して、一緒に作品を作っている現場は団結力も高いです。少しでも関係者の労をねぎらいたいタレントたちから自発的な差し入れが入り、それが通路や前室(出演者たちが世間話に花を咲かせる待合のような場所)に溢れているのも特徴的と言えるでしょう。
逆に視聴率の悪い番組の収録現場は、まるで通夜のような状態です。
スタジオ内の空気もどんよりと淀んでいますし、スタッフたちは黙々と自分の仕事をするだけ…私語はほとんど聞こえてきません。
聞こえてくるのはスタジオや通路の隅っこで、ヒソヒソ話をするスタッフたちの声だけなのです。
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低視聴率に“号泣”した川口春奈のリベンジ劇
この企画記事で私の印象に残ったのは、女優デビューからわずか4年で、ゴールデンタイムの連続ドラマの主演を務めた川口春奈のエピソードでした。
2013年10月期、川口は『夫のカノジョ』(共演/田辺誠一、鈴木砂羽他)で、TBS“木曜ドラマ9”枠に出演しましたが、連ドラの平均視聴率成否が2桁だった時代に、このドラマは4.7%でスタート、第5話では3.0%という、とんでもなく低い数字を記録してしまったのです(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
結局TBSは、当初「打ち切りではない。予定通りの終了」と頑張っていましたが、定例記者会見で編成局が打ち切りを認め、全10話の予定が全8話で終わってしまいました。
これに川口が、“スタッフの前で「私の力不足ですみません」と頭を下げ、大きな瞳から大粒の涙をこぼした…”という逸話がありました。
しかし川口はこの涙を糧にして7年後、みごと大河ドラマ『麒麟がくる』で大ブレイクするのです。女優の流す涙に、無駄な涙なんてひとつも無いのですね…。
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石原さとみの“涙”を見て燃えないテレビマンはいない
もうひとり、先日第2子妊娠を発表した石原さとみにも“涙”エピソードは存在します。
それは2018年7月期、水曜22時からの石原が主演の『高嶺の花』と、火曜22時からの綾瀬はるかが主演の『義母と娘のブルース』がバッティングした時のエピソードです。
当時は2人とも、今のお相手とは違いますが、幸せなプライベートを過ごしていました。芸能記者の中には「視聴率対決に勝った方が結婚発表の優先権を手に入れられる」なんて豪語する輩もいたほどです。
結局この対決、平均視聴率は『高嶺~』が9.5%、『ぎぼむす』が14.2%で、綾瀬の圧勝、石原の大敗でした。
石原にとってはこれが相当ショックだったのでしょう、打ち上げパーティの席で人目もはばからず「悔しい…」「全責任は私にあります」「本当にご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」と、大号泣したのです。
2人は1歳違いで同じ所属事務所ですが、石原が露骨に綾瀬に対しライバル心を剥き出しにしたのは、これが最初で最後でした。
結婚、出産に関しては石原が何歩もリードしている形ですが、女優としては、この“2度と綾瀬には負けたくない”が、昨年公開の『ミッシング』でのなりふり構わない演技へと繋がっているのかもしれません。
女優ですから、劇的に、自分のいちばん美しい涙を流すのはお手の物かもしれません。
ですがそれが、悔しさや、やるせない私情が絡んでくる涙だとしたら…芸能記者はそんなエピソードを忘れないものです。
必ず数年後、その涙へのリベンジや、秘めたるバック・ストーリーが公になる時が来るものなのですから…。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
image by : Dick Thomas Johnson, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons