中国の広汽トヨタがコンパクトSU BEVを正式発表しました。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、トヨタがついに本気を出したとして、BYDに反転攻勢をかけるきっかけになる車かもしれないと期待を寄せています。
トヨタがついに本気?中国でBYDを上回る300万円の自動運転EV
広汽トヨタは2025年3月6日、全く新たなコンパクトSU BEV「boZhi 3X」を正式に発表した。
LiDARを搭載した、中国新興MomentaのADAS(先進運転支援システム)ソリューションを採用。
LiDAR搭載のADAS、というかもうほぼ自動運転のBEVが中国でも初となる価格帯、15万元(約300万円)以内を実現。
このセグメントで強さを発揮しているBYDの「元PLUS(つまりATTO3)」と価格、BEVとしての性能、そしてADAS能力、いずれでも上回った。
元PLUSにも「天神之眼C」が採用され、ADASを実現しているが、LiDARは搭載しておらず、その能力はboZhi 3Xを下回る。
トヨタがついに本気を出し、中国でBYDに反転攻勢をかけるきっかけになる可能性がある。
サイズや価格
全長4600mm、全幅1850(1875)mm、全高1660(1645)mm、ホイールベース2765mmとなるboZhi 3X。
価格帯は10.98万~15.98万元となり、エントリーにはLiDARやMomentaのADASはないが、日本円で約220万円という低価格。
このうち、LiDARやMomentaのADAS搭載のものが14.98万元と15.98万元のものになる。CLTCによる航続距離は430km、520km、610kmの三種類。
元PLUSとの比較
初のLiDAR搭載15万元以内のboZhi 3Xの14.98万元と比較対象となるのは、元PLUSのスマートドライブ版で14.58万元。
一見boZhi 3Xの方が高いように見えるが、初期特典としての割引が1万元で、元PLUSよりも価格が安くなる。
ボディサイズも全幅のみ両者同一であるものの、全長、全高、そしてホイールベースはboZhi 3Xの方が大きい。
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BEV性能比較
BEVとしての性能では、boZhi 3Xの14.98万元の航続距離が520kmに対して、元PLUSは510km。
急速充電は30%から80%までがboZhi 3Xは24分だが、元PLUSは30分かかる。
電池容量こそboZhi 3Xが58.37kWhに対して、元PLUSは60.48kWhとなっているが、それ以外のBEV性能は両者拮抗。
最も重要な航続距離や充電時間で勝るboZhi 3Xに軍配が上がりそう。
ADAS能力比較
スマートドライブに関して、LiDARの有無が決定的に違う。
また、チップはboZhi 3XがエヌビディアのOrin-Xに対して、元PLUSはOrin-Nか国産としており、やはりboZhi 3Xが上回る。
これは計算能力に如実に表れ、boZhi 3Xが254TOPSに対して、元PLUSは84/128TOPSにとどまる。
これにより、元PLUSは高速道路限定のNOA(ナビゲーションオンオートパイロット)のみであるのに対して、boZhi 3Xは都市内でもNOAを実現している。
車内環境比較
車載システムはまだ不明な点が両者ともに多いが、boZhi 3Xは米クアルコムのスナップドラゴン8155を採用する。
コンソールディスプレイはboZhi 3Xが14.6インチで、15.6インチの元PLUSに後塵を拝し、また元PLUSにはあるが、boZhi 3Xに無いものとして、HUDと冷蔵庫がある。
トヨタも価格競争上等?
元PLUSの他、この分野には吉利(Geely)の銀河「E8」もあり、両者の月販は1~2万台(元PLUSのATTO3としての輸出を除く中国販売のみ)。
boZhi 3Xもまずはここを目指すことになるが、BEV 1車種の月販1万台はトヨタのみならず、外資合弁でもVWのID.3など数えるほどしかない。
この製品力で中国で売れない、となると、もう他の手段が見当たらない、そんな背水の陣的なモデルでもありそうだ。
また、トヨタがこの方面でBYDを代表とする中国勢による価格競争に真っ向勝負する、というよりも引き込まれた、とも受け取られる可能性がある。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/uh8mV6DCKdLG1rWoT9vT-g
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