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中国で多発する「自動運転中」の重大事故。その原因はどこにあるのか?

いま中国では自動運転支援機能を過信したドライバーによる重大事故が複数回起きています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、政府も対応に必死になっているというこの事案について、運転手側にもメーカーにも責任があるとしています。

中国のADASという名の自動運転、問題は技術ではなく人の過信

中国は世界でも有数のスマートドライビング先進国として知られており、自動運転支援機能(NOA: Navigate on Autopilot)を標準またはオプションとして搭載する車両が急速に普及している。

理想(Lixiang)、小鵬(Xpeng)、問界(AITO)などの新興メーカーに加え、BYDなど中国勢は無論、トヨタなど外資系の自動車メーカーもスマートドライブ機能の実装を加速させている。

その一方で、技術の進化に対して運転者の理解や安全意識が追いついていないという深刻な課題が浮き彫りになっている。

「ADAS使用は慎重に」掲示

2025年4月、中国各地の高速道路において「前方にトンネル、スマート運転支援の使用は慎重に」という電子掲示板が相次いで設置されるという、世界的に見ても異例の事態が発生している。

こうした警告は、中国国内で発生した複数の重大事故を受けたものであり、特に安徽省で発生した自動運転支援中の衝突・火災事故は3名の死者を出し、社会に大きな衝撃を与えた。

無茶苦茶な運転

このような事例が後を絶たない理由の一つは、運転者側の”過信”にある。

中国ではスマートドライビング機能を”自動運転”や”代行運転”のように誤認し、システム任せの運転をするユーザーが少なくない。

実際、中国のSNS上では走行中に仰向けになってスマートフォンや車載モニターで娯楽に興じるドライバーの映像が拡散しており、これらは明らかに誤った使用方法である。

トンネル走行中にドライバーがハンドルを握らず、シートを倒して動画視聴している光景は、安全運転という概念を逸脱している。

中国政府も対応必死

中国政府や交管部門はこの問題を深刻に捉え、スマートドライブ中の注意喚起を強化している。

複数の高速道路では「自動運転は万能ではない、安全運転は自らの責任」「車量多し、スマートドライビング使用は慎重に」などの警告を電子掲示板で連続表示。

また一部区間では、システムの使用自体を一時的に禁止する措置も取られている。

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メーカー側の責任大

一方で、多くの自動車メーカーは販売促進のためにスマートドライブ機能を過度に美化・演出し、ユーザーに「すでに自動運転が完成しているかのような幻想」を与えてきたという批判もある。

これにより消費者は、実際にはドライバーが常時監視を要する”運転支援”であるにもかかわらず、過信してシステムに頼りきってしまう傾向を促進している。

使用する人間の問題

技術の側面から見ると、中国のスマートドライブは非常に高度であり、都市部や高速道路でのNOA対応やAEB(自動緊急ブレーキ)、自動レーンチェンジなどの機能は世界水準に達している。

しかしながら、それを”正しく活用できるかどうか”は、結局のところ運転者の理解と行動に委ねられている。

技術がいくら進化しても、それを使う人間のリテラシーが不足していれば事故は防げない。

課題は教育と法整備

今後の課題としては、メーカーによる安全教育の強化、運転中の適切な監視義務の明示、誤使用に対する罰則規定の整備などが挙げられる。

加えて、社会全体としてスマートドライブに対する現実的な理解を促し、「安心ではなく、安全」を最優先に据える文化醸成が求められるだろう。

中国がスマートドライビングの先頭を走るためには、単なる技術競争に留まらず、”人”の意識と行動を含めた総合的な安全設計が不可欠である。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/6ZGOxBYjciQ5LXEZLou-zg

CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

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image by: Shutterstock.com

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