長安マツダが2025年6月に発表した新型SUV「EZ-60」が、中国国内で大きな注目を集めています。若年層を中心に支持を集める結果となったその理由とは?日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、長安マツダの戦略について語っています。
長安マツダ、EZ-60の予約件数3万件越え、中国流を大胆に採用
長安マツダは2025年6月24日、発表した最新のSU NEV「EZ-60」の予約件数が3万件を突破したと発表した。
日系も、中国勢同様、新型車の予約件数を発表することが多くなっているが、今回長安マツダは、中国勢のように、そのペルソナも公開。
これは、日系メーカーとしては異例のアプローチであり、むしろ中国新興メーカーやテック系EVブランドが先行してきた「定量+定性」マーケティングを積極的に取り入れた形だ。
EZ-60ペルソナ
まずはそのデータを見てみる。予約者の66%が25~39歳の若年層であり、18~24歳も9%を占める。
従来、日系車の中国ファン層は40代以上、特に“質実剛健”を好む中年層が主流という印象が強かったが、EZ-60はそれを覆す結果となった。
もっとも、年齢区分が「25~39歳」とやや広めに設定されている点には注意が必要で、仮に「25~29歳」「30~39歳」と分ければ、後者(30代)が主力となっている可能性は高い。
それでも、明らかに40代以上を主戦場とする従来の図式とは異なり、20~30代が主軸に浮上してきたことは明確である。
なぜ中国若者に受ける?
なぜ、このような変化が起きたのか。まず挙げられるのは、EZ-60という製品そのものの性質である。
クーペスタイルのSUVでありながら、120Hzディスプレイや27インチHUDなど、ガジェット感あふれる装備を多数搭載。
単なる「移動手段」ではなく「ライフスタイルの一部」として車を位置付けたい若年層にとって、共感しやすい設計となっている。
さらに、「10元(約200円)で予約、キャンセル自由」という心理的ハードルの低さも、若年層の初期エントリーを後押しした。
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ライフスタイルに踏み込む
また、今回のプロモーションでは、購入者の都市属性や趣味嗜好、さらには個人の職業・価値観まで踏み込んだ内容が紹介された。
上海、蘇州、南京、重慶、深セン、西安といった“一線/新一線都市”の中心部での人気が高い。
趣味嗜好としては「テクノロジー」「旅行」「知識文化」「スポーツ」など、感性と実用を両立するライフスタイルが浮かび上がる。
美意識の高い女性、自動車技術にこだわる博士課程の男性、マツダCX-5歴の長いユーザーなど、三者三様の購入動機も丁寧に可視化されている。
これは、理想(Lixiang)や蔚来(NIO)が得意とする「ライフスタイル共鳴型」のマーケティング手法と非常に近い。
スペック優劣だけでは
こうした取り組みは、「日本ブランド」という看板に甘んじることなく、現地市場に深くローカライズしていこうとする明確な意思表示である。
中国市場においては、すでに自動車は“スペックの優劣”で選ばれる段階を過ぎ、どれだけユーザーの生活文脈に寄り添えるかが重視されるフェーズに入っている。
今や、テック装備や電動性能だけでは新興EV勢に勝てず、ブランドストーリーやライフスタイル提案力のなさは、致命的な競争劣位につながる。
日系アイデンティティ再定義
今回のEZ-60の発表は、長安マツダがその点を深く理解し、「日系であること」をアイデンティティにするのではなく、「中国で選ばれる存在になること」を第一に考えている証左である。
従来の日本的な“職人気質”や“安全・信頼”という強みも、中国の若者に刺さらなければ市場は動かない。
むしろ、日系であることにこだわるのではなく、日系として何を捨て、何を進化させるべきかを問い直すタイミングに来ている。
中国での生き残りかけて
このように、長安マツダEZ-60の事例は、単なる販売好調予感の報告ではなく、日系メーカーが中国市場で生き残るために求められるマーケティングの姿勢を体現している。
今後、トヨタやホンダ、日産などもこの流れに追随し、「製品を作る」だけでなく、「誰がどう使い、どう共感するのか」まで描き出す姿勢が求められるかもしれない。
マーケティングは技術と並ぶ“もう一つの勝負軸”であり、そこに本気で取り組めるかどうかが、中国において、日系の命運を左右することになる。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/v0cJ-MtblgFewqDBJNTIfA
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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