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中国市場に走った衝撃。テスラが事前予告や発表会なしで新型車「Model Y L」をサイトに発表の掟破り、競合は戦々恐々

中国EV市場の競争が一段と激しさを増すなか、テスラが大胆な一手を打ちました。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、オンラインストアに事前予告も発表会もなく姿を現した「Model Y L」について詳細を紹介しています。

もう勝負はついた?テスラModel Y L、6人乗り他社は戦々恐々

テスラは2025年8月19日、中国市場向けオンラインストアで、3列6シーターSU BEV「Model Y L」をアップした。

テスラにとってはお馴染みの手法だが、全世界の自動車の常識には沿わないオンラインにおける無告知販売開始。

特に競争が激しい中国では、事前予告、発表会、少額手付金予約、多額手付金予約と段階を踏むのが常識。

理想(Lixiang)の李想CEOも、「テスラが羨ましい」と羨むこの手法。

テスラキラーとして台頭してきたシャオミもようやく少額手付金予約をスキップできるようになった程度で、勢いある中国勢でも真似できるところは全くの皆無だ。

Model Y Lはどんなクルマなのか?

Model Yを拡張

後席独立レイアウトで、価格は33.9万元から。6人乗りSUVは各メーカーにとってまさに“人気商品”なのだと言わんばかりにテスラも中国専業でここに打って出た形。

Model Y L は通常の Model Y と比べ、2+2+2の独立シートレイアウトを採用。

ホイールベースは150mm延長され3040mmに、全長も179mm伸びて4976mmとなり、そのスペースに強引に第3列を収めた。

荷室容量は最大2539Lに達し、第3列を使用した状態でも28インチスーツケース4個+20インチ2個を収めることができる。

最大の変更点は2列目

最大の変更点は第2列。これまで「テスラは余分な装備は削ぎ落とす」というイメージが強かったが、今回は誠意ある設計といえる。

2列目は前後スライドや125°リクライニング、一括フラット化が可能。電動式アームレストや収納式テーブルも備える。

前2列はシートヒーター・ベンチレーション機能を装備、3列目にもヒーターあり。

さらに2・3列目には電動リクライニング調整、独立エアコン吹き出し口、カップホルダーや充電口も装備され、シートを倒せばフルフラットの“車中ベッド”も可能で、ファミリー利用を強く意識した作りだ。

駆動系は安定のテスラ

駆動系はテスラらしく堅実。

デュアルモーターAWD、フロント142kW・リア198kWの出力、0-100km/h加速4.5秒。72kWhバッテリーでCLTC航続751km、電費は12.8kWh/100kmと、業界でもトップクラス。

さらにシャシーは6人乗り市場に合わせ快適性を重視。CDC連続可変ダンパーを採用し、振動吸収や高速走行時の安定性を強化。全体として快適性が大きく向上している。

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3列6シーターSUV市場

この3列6シーターSUV市場は中国において激戦区だ。

PHEVやREEVを入れてしまうと複雑になりすぎるので、BEVだけで見たとしても、理想i8、蔚来(NIO)の「楽道(ONVO)L90」、ファーウェイ「鴻蒙智行(HIMA)」の問界(AITO)の「M8」など競合がひしめく。

3列6シーターで最も重要な要素となりえるのが、居住性だ。この居住性について、これら中国勢はあの手この手で工夫を加えてくる。それらと比べると、実はModel Y Lは弱い。

例えば、無理やり押し込めた感のある3列目の空間の広さは、これら中国勢には全く歯が立たない。

2列5シーターの既存のModel Yの拡張版であるだけに、その良さは残しつつも、3列目を慌てて取って付けた感は否めない。

それでもテスラが強い訳

しかし、それでも中国3列6シーターSUV市場でModel Y Lが存在感を示す可能性は極めて高いと思われる。

EVといえばテスラ、という問答無用のブランド力が中国では強すぎるためだ。

LiやNIO、ファーウェイがここは束になっても敵わない領域。

つまり中国3列6シーターSUV市場でもテスラが主導権を握るのか、あるいはやや苦戦する可能性があるのか、程度の先行き感だ。

Model Y Lの存在意義はここに集約されている。

テスラも中国消費者を無視できない

広い視点で見ると、Model Y L の発売は単なる製品投入を超えた意味を持つ。つまり、テスラの中国市場戦略が変化しつつあるということだ。

かつての「自分本位」のやり方が、今では必ずしも通用しなくなっていることをテスラ自身も認めた形だ。

今回の取り組みは、テスラにとって一種の賭けだ。成功すれば新たな成長領域を切り開き、新しい成長曲線を描ける。失敗してもSKUがひとつ増えるだけで損失は小さい。

だが重要なのは、テスラですら中国市場向けに“魔改造”を始めたこと自体だ。

これは中国の新エネ車市場の競争が、これまで以上に残酷かつエキサイティングな局面に入ったこと、またテスラでさえ中国消費者のニーズを重視せざるを得ない状況を指し示すものだ。

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出典: https://mp.weixin.qq.com/s/BcedXnzQ8TH7GnJ64hefVQ

CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

image by: Anton Pentegov / Shutterstock.com

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