営業の現場でお客様の発言に対して否定しなければならないとき、あなたならどうしますか?メルマガ『菊原智明の【稼げる人、売れる人に変わる知恵】』の著者であり、経営コンサルタントで関東学園大学で教鞭も執る菊原さんは、営業で成果を出す人が大切にしているある一言について語っています。
お客様が言ったことに対して「よく分かります」と言う効果
お客様と話をしていて「ずいぶん勘違いしているなぁ」と思うことがある。
こちらからすれば「明らかに事実と違う」ということをお客様は完全に信じ込んでいる。
自分が間違っている、などみじんも感じていない。
ひとつ例を挙げる。
ハウスメーカーの営業スタッフ時代のこと。
その頃によくお客様から聞いたのは、「鉄骨は高いから」という言葉。
これは正しくはない。鉄骨住宅は必ずしも木造より金額が高いわけではない。いい木材になれば鉄骨よりはるかに高い。
しかし、その場で「そんなことはありません。たとえば……」と訂正しても、お客様は聞く耳を持たない。
それどころか、「いやいや、友人もそう言っていたし間違いないですよ」などと、さらに強く主張してくる。
どんなに訂正してもこちらの言葉は届かない。ただただフラストレーションが溜まる。営業をしていれば、誰もが経験しているだろう。
ここで多くの営業スタッフがやってしまう失敗は「正しい情報を伝えるべきだ」と思ってしまうこと。
もちろん、正しい知識を伝えることは大切。しかし、タイミングが重要。
相手が勘違いをしているときに「それは違います」と正面からぶつけてしまうと、お客様の心は閉じてしまう。
人間には「自分の考えを否定されると聞く耳を持たなくなる」という心理がある。
だからどんなに丁寧に説明しても「そんな情報は知りたくない」と拒否されてしまう。
ではどうすればいいのか?どんなに間違っていても“一度肯定する”ということ。
先ほどの例で、お客様が「鉄骨は高いですからね」と言ったとする。
否定するのではなく、「なるほど、そういった意見もあります」と一度肯定する。
もしくは「なるほど、鉄骨は高いと思われているのですね」と完全に認めてもいい。
この記事の著者・菊原智明さんのメルマガ
この一言で、お客様は「自分の言葉を理解してもらえた」と感じる。
もちろん、「鉄骨は高い」という事実そのものに同意しているのではない。
あくまで「お客様がそう考えていることを理解しました」というスタンスということ。
こういった“一度認める”というワンクッションを置くことで、相手は安心する。
お客様は「この人は私の話をちゃんと聞いてくれている」と思うようになる。
すると、その後でこちらが事実を伝えた際“耳を傾けてもらえる確率”が格段に上がる。不本意だとしても一度お客様の意見を認めたほうがうまくいく。
営業をしていてつくづく感じるのは「お客様は正しい情報を求めているわけではない」ということ。
多くのお客様が求めているのは「自分のことを理解された」と感じることである。
家族や友人との会話を思い出してほしい。
悩みを打ち明けた時、相談した相手から「そんなことで悩んでどうする。こう行動したらいいに決まっている」といきなり正論や解決策を突きつけたらどうだろう?
どんなにいいアドバイスでも「なんかイラっとくる」と感じるものだ。
それよりも、まず「大変だったね、わかるよ」と共感してもらえるほうが何倍も心は落ち着く。
営業の場面も同じ。
お客様は「事実を知りたい」よりも「自分の話を理解して欲しい、聞いて欲しい」と思っている。
だからこそ、「なるほど、よくわかります」という一言が、商談の流れを良くする。
商談中のお客様から「菊原さんの建物の構造は地震に弱いんですよね」と言われたことがある。
これは明らかな誤解だったーーー(『菊原智明の【稼げる人、売れる人に変わる知恵】』2025年9月26日より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・菊原智明さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com