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「あの素晴しい愛をもう一度」作詞者が語る「人生の大問題」と日本人の“曖昧な幸福観”

1960〜70年代のフォークソング黄金期を牽引し、数々の名曲を世に送り出してきた「きたやまおさむ」氏。作詞家としてだけでなく、精神科医・研究者としても長年にわたり人間の心と向き合ってきた彼は、「人生の大問題」をどのように捉えているのでしょうか?メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、その思想と世界観に触れる機会となったレクチャー&ミュージック公演の内容から、日本人の生き方や価値観の本質に迫っています。

きたやまおさむさんが説く「人生という大問題」

日本のフォークソング史上、という言葉あれば、間違いなくその歴史の中心にいたのが、きたやまおさむさんである。

「ザ・フォーク・クルセダーズ」を加藤和彦さん(故人)らと結成し、1960年代後半から70年代のフォークブームに、「戦争を知らない子供たち」「あの素晴しい愛をもう一度」「風」「花嫁」「白い色は恋人の色」等の名曲を作詞し世に送り出した。

それらの名曲は今も歌い継がれているのは、歌手だけの話ではない。

巷で口ずさんでしまう歌詞とメロディーは時代を表象する証しでもあり、文化ともいえる。

「歌い継がれている」のは、その日本の文化と時代性を伴った歌詞の奥深さが、今も親しまれているから。

そんな確信をしたのは、3月の終わりに「きたやまおさむレクチャー&ミュージック 『人生の大問題を考える』」に参加したからだった。

きたやまさんは精神科医であり、九州大学、国際基督教大学、白鴎大学でも教え、元日本精神分析学会会長を歴任し、現在は九州大学名誉教授、白鴎大学長を務める。

歌で時代を提示した作詞家は精神疾患を中心にした臨床の場や教育、研究の場で第一線に立ち、人と時代を見つめてきた。

その御大が語る人生とは何だろうか。

そんな期待とともに観客席で待つと、ステージに現れた姿は自然体だった。

「は、は、は」と高らかに笑う。

泰然とした佇まいに、人生の機微をすべて呑み込んで、分かっているよと口笛を吹く風が粋だ。

学術的な背景で物事を語るよりは、聴衆が知っている事に話を突き合わせるのは、歌手としての経験値がそうさせているかもしれない。

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そんなきたやまさんが語る「人生の目的」とは、日本のフォークソングにおける数多ある旅立つ歌を引き合いにして、どれも「たどりつかない」「たどりつく場所が分からない」と言って、「は、は、は」と笑うのである。

きたやまさんが作詞し、シューベルツが歌った「風」はその典型例だ。

「人は誰もただ一人旅に出て 人は誰もふるさとを振り返る」から始まり、旅立っていくのだが、先には何があるのだろう、と歌い進めると、「そこにはただ風が吹いているだけ」と結ばれる。

これは、「もののあはれ」にも通じる。

目的地もしくは目的という具体は必要なく、今ある瞬間や成長の過程を重んじ、答えはその人の中にある、という解釈も成り立つだろう。

きたやまさんは消費者金融会社のCMで語られるフレーズである「そこに『愛』はあるんか?」に対し、日本では「ある」かもしれないし、「ない」かもしれない、と言って笑う。

そして会場も笑う。

愛はある、と言い切らない文化である。

この文化の中で私たちの思考は揺らぎ、決定しながら人生を生きていくわけで、この入口に立てば、人生の大問題をどのように捉えるかは、あなた次第ということになる。

これもきたやまさんの作品である「帰ってきたヨッパライ」は、「おらは死んじまっただ」と言って、天国に行くのだが、天国で酒を飲みすぎて、結局は下界に帰ってくるストーリーである。

天国はよいところのはずだから、そのままいればいいのに、追い出されたとはいえ、帰ってきてしまう。

ここにきたやまさんの世界観があり、大ヒットとした、それを受け入れる日本人の社会観も見逃せない。

天国はあるかもしれないし、ないかもしれない─。

これを聞くと何となく気が楽になったような気がする。

外に出れば桜は満開で、この瞬間に桜を愛でるのもまた、もののあはれ。

そこに幸せを感じて、笑みがこぼれる。

生きていてよかったな、と。

学生時代にフォークソングを聞いた世代の多い観客が、自分はこれでいいのだと安心した横顔が増えればいいなと願いつつ、桜の下、なぜか「花嫁」を口ずさむ。

「命かけて燃えた恋が今結ばれる」。

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image by:Shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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