「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」——高市首相の媚び台詞が世界に流れる一方、スペイン・フランス・イタリアは米軍基地使用を拒否し毅然と国益を守っています。そして日本が約束した「対米投資80兆円」の正体は、利益の90%をアメリカが得るという驚愕の仕組みでした。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、チンピラ国家による「ゆすり外交」の全貌を鋭く告発しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
『対米投資80兆円』という“日本ゆすり”
この原稿を書いている現在は、4月6日19時。「商船三井の船がホルムズ海峡を通過」「日本政府は交渉に関与していない模様」「船はインド籍で、行き先もインド。日本は無関係か」などいろんなことが言われている。
政府はガソリン代を無理やり引き下げて”安定化”を演出しているが、医療資材の不足は心配されているし、建設業界もすでに資材の急騰が決まっている。建物を建てるにも修繕するにも、数か月以上かかる工事を無事に終えられるかどうかがわからず、「怖くて着工できない」という業者の声を聞いた。このままでは、いずれ公共工事や、災害・緊急時の対応などにも影響が出るのだろう。 トランプ大統領は「石油が欲しいなら自分たちで取りに行け」と言っているのだから、日本はイランと交渉すればよいと思う。
そして、トランプにしがみついて、徹夜で考えた「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ♪」という媚び台詞を伝えたところで、アメリカは日本を守るつもりがないという現実をもっと真剣に直視しなければならない。
属国にならない国々の毅然とした態度
スペインは、イラン攻撃当初からアメリカを「根本的に法を逸脱し、正義のかけらもない」と猛批判しており、「我々は属国にはならない」と宣言して、米軍機による基地使用も領空通過も拒否している。
トランプからは貿易を停止してやると脅迫されていたが、「国際法や世界平和、国連憲章を順守するために、恐れることは何もない」と意に介していない。
その後、「ウォールストリートジャーナル」が報じた記事によれば、トランプの脅迫は実際には実行されておらず、これまで同様の貿易が続いているようだ。しかも、スペインのサンチェス首相は、アメリカの民主党有力者と会談するなど、”トランプ後”を見て関係強化を進めているという。
スペインの毅然とした態度に影響を受けてか、フランスも米軍の武器輸送機が領空を通過することを拒否している。
イタリアのメローニ首相もまた、”極右ポピュリズムの女性リーダー”として、トランプとも融和的な親米政権を率いる姿が注目されてきたが、イラン攻撃については「国際法の枠外で行われる介入という、危険な傾向」とアメリカを強く批判。イタリア国内の米軍基地に飛来した米軍爆撃機に対して、着陸許可要請を拒否している。
その上で今月に入り、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦などイランからドローン攻撃を受けた中東諸国を訪問。防空システムの支援やエネルギー供給について首脳会談を行うなど、イランとの距離もとりつつ、自国の利益を確保するための外交を積極的に行っている。
アメリカという国と関係は結んでも、トランプ個人に全面依拠したりはしない。国際法違反は堂々と批判し、自国の国益、自国の将来のために行動する。それが普通の国の首相だろう。
イタリアについては、世論調査でも、イラン攻撃に対する反発とトランプへの強い嫌悪感が示されており、それが政権支持率に影響を及ぼすレベルにあるという。
日本の世論も本来はそうあるべきだと思う。高市早苗の媚び媚び外交とその結果について、もっと批判が巻き起こらなければおかしいし、内閣支持率が揺らぐほどの反応がなければ、日本にはいつまでも国益を守れる政治家が生まれない。
この記事の出典元・小林よしのりさんのメルマガ
80兆円「投資」の驚愕の正体
高市早苗は、先日の訪米で「対米投資第2弾」なるお土産をトランプに献上していたが、この「投資」もわけがわからない。 もともとは、石破政権時代にトランプが「関税を25%に引き上げる」と脅迫したことが発端で取り決められたものである。「格下も格下」と自称する赤沢大臣が、アメリカに対してへりくだりにへりくだって、「80兆円規模の対米投資」を約束して帰ってきた。
投資第1弾は、ガス火力発電所建設、原油輸出港建設、半導体用の人工ダイヤモンド製造など5.5兆円。
そして、先日の高市訪米で発表した投資第2弾は、小型原発建設、天然ガス発電施設、アラスカの原油施設建設、レアアース事業などで11.5兆円だ。 この後も第3弾、第4弾と続くらしいが、それぞれ日本の企業がアメリカの企業と共同で建設するというプロジェクトである。そのためのカネの多くは、日本政府系の金融機関が出す。
ざっくり言うと、日本国民の税金と国の借金(将来の国民負担)を原資にした政府系機関からカネを捻出し、そのカネでアメリカのインフラを整備する。雇用はアメリカで生まれ、利用するのもアメリカだ。 だが驚くべきことに、この投資によって得られる利益の配分は、日本が元本を回収するまでは「日本50%、アメリカ50%」とされているものの、回収後は、利益の90%をアメリカが得るという仕組みになっている。
さらに異様なのが、どこのどんな事業に投資するかは、最終的にトランプが決定するという点だ。しかも、決定されたら、日本は45日以内にカネを出さなければならず、出せなければペナルティが課されることになっている。
「投資」とは、本来、投資する側が、どの事業がどんな利益を生み出しそうか吟味して金額を算定し、出資額やリスクに応じて利益が配分されるものだ。多く出資した人には利益も多く配分される。 ところがこの仕組みでは、日本が最初に巨額のカネとリスクを引き受けて、使ったカネの回収が済んだら、利益の大半はアメリカのものになる。
これを「投資」と呼ぶのはかなり無理があるし、日本の国民に対する誤魔化しではないのだろうか?
そもそも、日本企業が建設を引き受けるのは、アメリカが自ら推進してきた新自由主義・グローバル化によって、製造業を弱らせてしまい、自力で建設する技術がないからだ。
つまり「自分でできないから、日本の力を貸して欲しい」という話なのだから、わざわざイラン攻撃という最悪のタイミングで「ドナルドだけ♪」などと言いながら、手土産のように発表する必要はなかった。逆に、「国際法違反の戦争を引き起こした上に、ホルムズ海峡封鎖に至っている以上、投資は続けられない」という交渉だってあり得たのではないか。
「路地裏チンピラのゆすり」の現場
しかも、「投資」が決められた現場の話が凄まじい。 イギリスの経済紙「フィナンシャルタイムズ」が報じた特集記事「トランプによる日本企業への5500億ドル”ゆすり”の内幕」によると、昨年10月、トランプが訪日した際に、日本企業のトップらが東京のホテルの個室に呼び出された。そして、本来ならば数か月かけて調査してから決定するはずの契約を、今日ここで決断するよう迫られる状況になったという。
ほとんどの企業は、「これを拒否すれば関税を25%に上げる」という圧力に晒されていて、とても国家間での事業交渉とは思えない、乱暴な契約の結ばせ方をさせられたようだ。
過去には、アメリカに言われて投資したものの、日本が大きな損失を被った例がいくつもある。 途中で工事が止まることも珍しくないし、政治体制が変わる、世界情勢の変化でコストが大幅に跳ね上がることもある。建設先の自治体が抜けてしまい、プロジェクトそのものが崩壊してしまった例もある。本当に工場が建つのかどうかあやしく、リスクが大きすぎて話に乗りたくないという企業もあったらしい。
ある日本企業のトップは、この日の出来事を「ゆすり」と表現し、現場を見ていた外交担当者は「路地裏のチンピラまがいのやり口(street-level tactics)」と表現している。 さらに、その後の夕食会では、企業のトップらが、すでに署名された書類を持たされて、テレビカメラの前で、ひとりずつトランプの隣に立って写真を撮るように言われたらしい。自分が何の書類に署名させられたのかも正確に理解できていないままの人もいたという。
民間企業の社長なのだからそんなの情けない、嫌なら断ればいい話だという見方もあろうが、そもそも日本人はどこまでも見下され、一方的に従わされるような構図でもあるのだ。
案の定、その後すぐにイラン攻撃が始まり世界はむちゃくちゃ。そして、日本企業との窓口であるラトニック商務長官が更迭かというニュースが入ってきている。
こんな実態では、大企業を優遇するために円安を維持する方向へますます傾き、庶民の生活は苦しくなる一方ではないかと心配になる。
この記事の出典元・小林よしのりさんのメルマガ
国家を飛び越える孫正義の特権的役割
さらに歪んでいるのは、この話を主導するのが、「国家」ではなく「個人」であることだ。
実は、対米投資を取りまとめる日本の中心人物は、ソフトバンクグループの孫正義会長だという。孫は、第1次トランプ政権発足前からトランプと仲良く交流しており、過去にも大型の投資を行っている。
アメリカでは、トランプ政権になってから、ロビー活動が爆発的に重要になっているらしい。政策よりもカネとコネ。「トランプと話をつなげることができる」という関係性そのものを商品にするロビー活動専門企業まで存在するほどなのだ。
孫がそのような環境を軽々飛び越えて、トランプとやりとりしているのは、間違いなく「超巨額のカネを動かせる人間だから」だと思うが、今回の対米投資についても、トランプと話しながら交渉をとりまとめる側として、特権的な役割を得ているという。
今回の対米投資では、オハイオ州でのガス火力発電所建設に合わせて、その隣に孫正義個人(ソフトバンク)が80兆円を投じてAI用のデータセンターを建設するという計画も発表されている。
日本政府が複数の企業と事業を組み合わせて、ようやく総額80兆円を捻出するという話に対して、孫正義が1人で80兆円をポンと出すというから凄まじいスケールだとは思うが、問題は、日本が公的資金から捻出して建設する発電所を利用して、自分の商売用の施設を建てるというところだ。
AI用のデータセンターを動かすには、大量の電力が必要になる。本来なら、孫が自分で発電所も建設しなければならないところだが、そこを日本のカネで建てさせるという話なのだ。
しかも当初、日本が出資する発電所建設のプロジェクトから、ソフトバンクが「仕切り役」として1兆円の手数料を受け取る設計になっていたという。さすがにこれは日本政府から文句が出て減額となったそうだが、イヤな話だ。「アメリカファースト」と「ソフトバンクファースト」に引きずられている。
では、日本政府は、一体なにをしているのか? トランプと孫が決めた「アメリカへの投資枠」を受け入れて、カネを用意し、日本企業をその枠のなかへ突き落している……といったところか。そして高市早苗は、そんな構造に乗っかって媚びを売りまくり、わけもわからず「やった感」だけで大盛り上がりする日本人の姿を代表している。高市にはこの対米投資に関する主体がないし、何も決めていないし、何もリスクを負っていない。
自分で決める国になれるか
こうなってしまうのも、日本が軍事面でアメリカにベッタリ依存して、自主独立し、自分で選択し、決断し、責任を持つのを放棄していることが原因だ。
先日の訪米時の晩餐会では、「Japan is Back! 日本は再び世界のイノベーションをリードします」と威勢よく言ってみせていたが、実態はチンピラ国家アメリカによる”ゆすり”。高市は、チンピラ国家と資産家の操り人形である。
日本は、対米依存を本気で脱却しなければならない。
高市を見ていると、「どうせ誰もかれもエゴだけで、現実は変わりゃしないけどね」と何もかもを冷笑したくなる気分に陥ってしまうが、それこそ罠なのだろう。
トランプを見ているとそう感じる。 世界には、損得だけでディールする人間ばかりではなく、強烈な信念と誇りを持ち、そのために血を流すことも辞さず、最後まで戦い抜く人間がいる。トランプは、そんな人間がいるということを理解できなかったから、泥沼にはまったのだと思うのだ。
イランには自国で解決すべき国内問題もあるだろうが、イスラム革命以来、数十年かけてこの戦争のために準備してきたのは変わらない。国家の存亡をかけて、本気で戦う気迫を見せている。
だが、トランプはその本気がわからないから、「どうせ貧乏国家のハッタリだ」と冷笑する。軽く受け止めていたら、イランはどこまでも本気で反撃してくる。
ウクライナだってそうだ。いくらバカにしても、ゼレンスキーは本気で戦っていて、損得でディールしない。
そういう「本気の人間がいる」という現実がわからず、バカの一つ覚えで暴れているのがトランプだろう。日本はそれに付き合って、ホステス外交をしている場合ではない。
「アメリカに従っとけばいい」「現実は変わらない」という態度で責任を放棄していられる時間は、実はそう長くはないのではないか?
自分で判断し、決断し、責任を持つことを放棄しない日本を作っていかなければならない。
(『小林よしのりライジング』2026年4月7日号より一部抜粋・敬称略。小林よしのりさん「ゴーマニズム宣言・第599回『バランス感覚こそ、
この記事の出典元・小林よしのりさんのメルマガ
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