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AIに仕事を奪われる前に知っておけ。「すぐ役立たない教養」こそ最強の武器だった!

「効率」「コスパ」「すぐに役立つスキル」——そんな言葉に追われ、「無駄なこと」を切り捨て続けていませんか?実は、一見無駄に見えるものの中にこそ、本当の豊かさと創造力の源泉が隠されているかもしれません。最新の脳科学も、その事実を裏付けています。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では、心理学者の富田隆さんが、荘子の「無用の用」という東洋哲学をひもときながら、AI時代を生き抜くために本当に必要なものを問い直します。

すぐに役立たないもの

沈黙と「間」が生む芸術の深み

・「一服の掛け軸」

日本を代表する作曲家・武満徹(たけみつ とおる 1930-1996)さんが、かつて「沈黙」について語っていたことを思い出しました。 音楽といえば、それを構成する様々な「音」に注目が集まります。 常識的には、「音」さえあれば音楽が出来上がると考えがちです。

しかし武満さんは「音の無い状態」つまり「沈黙」が音楽において果たしている役割の大切さを指摘したのです。 「沈黙」は「間(ま)」と言い換えても良いでしょう。

考えてみれば、音と音の間に存在する一瞬の「間(ま)」が、劇的な効果を生み出したり、旋律の美しさを強調したりする例はいくらでもあります。 音と「間」が組み合わされるところからリズムも生まれます。

音楽だけでなく、日本の、いや東洋における絵画などの芸術一般においても、「間」は重要な役割を果たしています。

欧米の邸宅や宮殿などの壁面は、数多くの絵画で埋め尽くされていますが、日本の場合は、季節に合わせた1服の「掛け軸」を床の間に飾るだけです。 日本の住居においては、敢えて、何も置かない「空間」を大切にするのです。

花の飾り方でも、できるだけ多くの花々を詰め込めるだけ詰め込む洋風の「フラワーアレンジメント」と、厳選された最低限の花や枝で小宇宙を造り出す和風の「活け花」とでは、空間の扱い方がまるで違います。

私たち日本人から見ると、欧米の人たちは何か音や物によって「間(空間)」を埋め尽くさずにはいられない「空間恐怖症(広場恐怖症〈Agoraphobia〉の一種)」のようにさえ思えて来ます。

荘子が説く「無用の用」の哲学

・「無用の用」

東洋には「無用の用(むようのよう)」という考え方があります。 これは、荘子(そうし BC369年頃-BC286年頃)に由来する思想で、一見役に立たない(無用)と思われるものが、実は非常に重要な役割(用)を果たしているという意味です。

「空間」の重要性も、この荘子の思想から来ています。 たとえば、茶碗や瓶などの器(うつわ)は、中が空っぽ(無)だからこそ、茶や飯などを入れることができるのです。 何もない「空間」こそが真の機能を持っているというわけです。 建物における部屋の場合も同様です。 壁や床という「有」によって作り出された「何もない空間(無)」こそが部屋としての本来の機能を発揮しているのです。

このように、「有用」つまり使えるか「無用」使えないか、といった基準も見方によって変わる「相対的」なものに過ぎません。

たとえば、曲がった木は建材としては使えない(無用)ので、一見「有用」にはならないと見なされますが、特徴的な形をそのまま生かして庭に植えれば、やがてその庭の良いアクセントとなり、味わいのある存在(有用)へと成長します。

中国では、こうした「無用」の概念が「処世術」としても使われました。 たとえば、優れた才能を持つ(有用な)人間は、反対派などから危険視され、命を狙われることも多いわけですが、周囲から「役立たず」(無用)と見なされていれば上手く生き延びて権力の座に着くこともできる、と言うのです。 「能ある鷹は爪を隠す」といった感じでしょうか。

こうした「身を守る知恵」が昔の宮廷などでは必要だったのでしょう。 しかし、ひるがえって現代、中共の習近平による「粛清」の嵐などを見ていると、今もなお、あの国では同じ「処世術」が役立ちそうです。 中国は今も昔も変わらないものだとつくづく溜息が出ます。

・「認識の転換」

中国に限らず、荘子の考え方は現代社会にも多くのヒントを与えるものです。

現代社会の常として、「効率」や「目先の成果」といった企業や組織にとって「有用」なものばかりを追求しがちです。 しかし、一見無駄に見える「余白(間)」や「遊び心」、「非効率なこと」、つまり「無用なもの」の中に、実は真の豊かさが隠されているのかもしれません。

最新の脳科学によれば、言葉や名前が出て来なくて、一生懸命思い出そうとジタバタ「あがく」ことや、何もせずに「ボーっとしている時間」などが、脳の新陳代謝や若返りを促進するのだそうです。 つまり、一見「無駄」に見えることが、脳の健康にプラスなのです。 まさに「無用の用」。

逆に、疑問があると、すぐにケータイで「ググって」正解を調べるといった、ネットAIへの習慣的な依存は、一見「適応的」に見えますが、実は脳の老化を早めるのだとか。

「無用の用」という荘子の思想は、「ものの見方」を変えることであり、「認識の転換」なのです。 そして、多くの場合、変えるべきはその時代に世間で流布されている「常識」なのです。 ですから、まずは「常識を疑う」ことです。

老子や荘子は「ありのまま」の「自然」を大切にしますから、仮に、社会常識の命ずることが私たち人間の「本性」に逆らうような「無理難題」なら、そんなものはさっさと捨てて、自然に従って生きなさいと言うわけです。 人間らしく、ありのままに生きなさい、というのが彼らの主張です。

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AI時代に「教養」が逆転する理由

・「すぐに役立たない教養」

どうやら、私たちは時代の転換点にいるようです。

時代が変われば「常識」も変わります。 これまで「無用」だったものが「有用」になるのです。 しかし、多くの人々は、変化を嫌います。 その結果、かえって、古い「常識」にしがみつき固執するのです。

そんな社会常識は、さっさと捨てた方が「自由」になれるのに、その方が、もっと「楽」に「気持ち良く」生きられるのに、自分で自分を縛ってしまいます。 老人だけではありません。若者も例外ではないのです。

その背景には、投資の利益をすぐに求める金融資本主義(ハイエナ資本主義)が幅を効かせていること、それに、メディアの洗脳もあるのでしょう。 何かと言えば「コスパ」を気にする現代の若者は、「すぐに役立つもの」といった「目先の利益」を重視しがちです。

その結果、大学の専攻学科を選ぶ際も、自分の好みや興味は無視して、就職や「資格」に有利な「実用的な学科」を選んでしまいます。 ですから、英文学科、仏文学科といった「文学部」の志望者は激減して、純粋な「文学」や「芸術」「哲学」などを専門とする学科は軒並み縮小、廃止の憂き目に遭っています。

しかし、単なる「趣味の世界」、知的な「ゆとり」、貴族的な「教養」として「無駄」の烙印を押された「一般教養」系の諸科目こそが、実は新しい時代には必要とされるのです。

これまでホワイトカラーが担って来た規則づくめの仕事をAIが肩代わりする時代にあって、「人間ならでは」の大切な役割とは何でしょう? それは自由な創造力を身に付け、人類の知的・文化的遺産を我がものとして体現した「教養人」としての役割です。 ですから、一見無駄のように見える「一般教養系諸科目」こそが、その人の「人間的な器(うつわ)」を拡げ、「創造力」を豊かにし、新しい時代を切り拓く智慧の源泉を育てるために役立つのです。

文科省なども、「百年の計」に立ち帰り、こうした「すぐに役立たない」知識や教養が、長い目で見れば社会を豊かにし、人々の人生を充実させる、ということを再認識するべきです。 実用的なことや規則に従った仕事は全てAIにまかせて、人間はもっと人間らしい「価値」を追い求めて楽しく生きれば良いのです。

とりあえず、流行や社会常識に囚われず、自由に生きましょう。 それが、自身の幸せのため、さらには「世のため人のため」になるのですから。

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image by: Shutterstock.com

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