職場で部下に過剰な気遣いをすることで、結果的に成長の機会を奪ってしまう「ホワイトハラスメント」が話題です。マイナビが2026年に発表した調査では、中途入社1年以内の正社員の13.6%が経験したと回答し、そのうち71.4%が「1年以内に転職したい」と考えていることが明らかになりました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、上司と部下のすれ違いの実態を読み解きながら、誰かに「与えられる」ものではない、本質的な成長とは何かを問いかけます。
ホワイトなハラスメント? 戸惑う上司たちの本音
最近、ネットやビジネス界で「ホワイトハラスメント」が話題です。 これは「上司や先輩が部下に対して過剰な配慮のもとで業務を調整することで、結果的に、成長の機会を奪う行為」を指します。
具体的には・・・ 本来の業務以外の簡単な事務仕事をさせる 責任ある仕事を一切任せてもらえない 休日開催の会社の行事に参加させてもらえない ミスや遅刻をしても、注意してもらえない といった上司の気遣いから生まれています。
なんでもかんでもハラスメントって・・・という気がしないでもありませんが、問題の核心は「気遣い」という名の下、部下の能力発揮の機会を奪っている点です。能力発揮の機会は、「人」のやる気を引き出す、極めて重要な外的なリソースです。ところが、成長する機会が奪われてしまうことで、その機会までなくなってしまうのです。
むろん、上司からすれば「期待してるっていうだけで、パワハラと言われちゃうわけだし」「そうそう。いい経験になるからって仕事を任せたら残業を強要されたってSNSに上げられる」「ほんと、どう接していいか分からない」という戸惑いと、我が身を守るための防衛策というのが本音なのでしょう。
そもそも40代以上の人たちは、若い頃「なんで私がこんなことまで?」と思うような泥臭い雑務に奔走させられたり、知り合いが誰もいない土地へ転勤になり、一から自分で生活も仕事も立ち上げなければならなかったり……、といった経験をしてきました。 若手に意見するだけで、「老害」呼ばわりされる時代です。 “あの時の不条理”を押し付けてはダメ、とリミットをかけるのは当然の成り行きです。
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マイナビ調査が示す衝撃の現実
しかし、そんな上司の気持ちも露知らず。 マイナビが2026年に発表した調査によれば、中途入社1年以内の正社員のうち13.6%が「ホワイトハラスメント」を経験したと回答。そのうち71.4%が「1年以内に転職したい」と考えていることがわかりました。
良かれと思った「過剰な配慮」が、皮肉にも、成長を求める人材を組織から追い出す結果になっている。この歪んだ構造を前に、上司側は「じゃあ、どうすればいいんだ」と頭を抱えているのです。
正直なところも、ホワイトハラスメントも、嫌なことがあれば転職するという考え方も、私には理解するのがちょっとむずかしい。ただ現場の声を聞き続けていて感じるのは、コミュニケーションがすごく難しい時代になったなぁ、という上司部下関係のリアルです。
これまで私は、「若い世代にインタビューしていて一番感じるのはコミュニケーションツールやコミュニケーションスタイルが変わろうとも、人間の本質はそうそう簡単には変わらない」という確信を伝えてきました。
しかし、実際の現場では、私の想像をはるかに超えた「壁」が存在する時代に突入した、ということでしょう。
「成長」は誰かに与えられるものか
一方で、めったやたらに取り沙汰される「若者の成長」とは、上司や会社がお膳立てするなどして、誰かから与えられるものなのでしょうか? 甚だ疑問です。
本質的な成長とは、特別な役割や派手なキャリアアップの機会だけを指すのではないはずです。 日々のルーティンワークであっても、「次はもっと効率的にやってみよう」と工夫する。隣で困っている先輩の手伝いを買って出て、組織の全体像を学ぼうとする。 そんな日々の仕事の中で「学ぼうとする姿勢」を持つことのほうが、よほど大切だと思うのです。 上司もできることといったら、時に「縁の下の力持ち」となり、時に「責任はとるからやってみなさい」と背中を押し、時に「この傘を使いなさい」とストレスの雨に濡れてる部下に傘を差し出すことくらいしかありませんしね。
みなさんのご意見、お聞かせください。
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