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「誰が言うか」が価値になる時代——PRIZMA杉本昂輝×まぐまぐ熊重晃が語る、企業の”一次情報”の活かし方

クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。プロフェッショナルや経営者をゲストに迎え、「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」を掘り下げる30分番組だ。MCの越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)と、アシスタントMCの上條美沙子氏が進行を務める。

今回は番組史上初となる、ゲスト2名体制での収録。市場調査やプレスリリース配信、漫画を活用したプロモーションなど、包括的なPR・マーケティング支援を手がける株式会社PRIZMA 代表取締役社長の杉本昂輝氏と、1997年創業・日本最大級のメールマガジン配信プラットフォーム「まぐまぐ」を運営する株式会社まぐまぐ 代表取締役社長の熊重晃氏だ。

杉本氏は2017年に株式会社ゼネラルリンクへ新卒入社し、2024年にプロパー初の執行役員に就任。同年8月、株式会社PRIZMAを設立した。「リサーチ力」「企画力」「メディアリレーション」を掛け合わせたPR支援を強みとし、独自調査を活用したプレスリリース配信を得意とする。一方の熊重氏は、29年にわたり個人・企業の発信を支えてきたまぐまぐの代表を務める。今回は、熊重氏がPRIZMAに調査を依頼し、その結果を持ち込んでの登場という、両社の協業企画でもある。

テーマは「一次情報」。AIによるコンテンツ生成が当たり前になり、SNSに似たような発信が溢れる今、企業や個人が本当に発信すべきものとは何か——杉本氏が持ち込んだ独自調査データをもとに、越川氏と上條氏が切り込んでいく。

なぜ今「一次情報」なのか

越川: 早速ですが、今日は珍しくお二人体制ですね。何か特別な理由があるんですか?

熊重: 特別ですね。今日はある調査を持ち込んでお話ししたいなと思いまして。調査をPRIZMAの杉本さんのところにお願いして、それを今日ご紹介できればと。

越川: 調査データを基に話すというのは、僕の大好物ですね。杉本さん、今日のテーマを教えていただけますか。

杉本: はい。今回ご紹介する私の「グッド」は、一次情報です。

越川: 一次情報。まだよく知らないという方に向けて、どう説明するのが分かりやすいですか?

杉本: 本人や企業が実際に体験した、調査した、実験した——そういう「元の情報」が一次情報です。個人だけでなく、企業が持っている情報も一次情報と言います。

越川: 誰かから聞き伝えられたものではなく、自分自身が経験して発信しているもの、ということですね。逆に権威のある人から聞いた情報が二次情報、誰が言ったか分からない伝聞が三次情報。SNSやAIが生成する情報は、この三次情報に近いケースも多い。だからこそ今回は「本当の話しか扱わない」というわけですね。

こうして番組は、越川氏の軽妙な進行のもと、一次情報という言葉の定義から丁寧に紐解いていく形でスタートした。

「一次情報はない」と答える経営者が半数以上——気づいていないだけという実態

越川: では早速、調査の中身を聞かせてください。

杉本: まず最初にした調査が、「社内・事業内に、外部へ発信できるような自社独自の一次情報はありますか」という質問です。

越川: それは何かありそうですよね。

杉本: ありそうじゃないですか。ですが実際は、こういう聞き方をすると半数以上が「ない」と答えるんです。

越川: それだけ事業をしているのに、一次情報なんてないと。

杉本: そうなんです。ただ、あえてこういう聞き方をしていて。2問目として、「発信の有無に関わらず、収集・蓄積しているデータはどれですか」と選択式で聞いてみると、皆さんポツポツ選んでいく。結果、「何もない」と答えたのは23%にまで下がるんです。

越川: なるほど。多くの企業が本来一次情報を持っているのに、それを一次情報だと認識できていないだけ、ということですね。仮説としては、①「一次情報」という言葉自体の定義を理解していない、②溜まっていることに気づいていない、の2つが考えられますが、杉本さん的にはどちらの比率が高いと思いますか?

杉本: 後者の方が、話していて多い印象がありますね。代表インタビューや、企業の思い、事業への思い——これも結局は一次情報になるので、そう伝えると納得していただけることが多いです。

上條: それを聞くと、実質「一次情報を持っていない会社」ってないんじゃないかと思えてきますね。

杉本: まさにそう思います。何かしらは絶対にあるはずです。

「一次情報がない会社を、むしろ世界の中で探したいくらいですよね」

越川氏がそう笑いながらまとめたように、企業が「ない」と思い込んでいるだけで、実は誰もが一次情報を持っている——これが今回の調査が浮き彫りにした、最初の発見だった。

AI時代に「一次情報」が目立ち始めた理由

越川: そもそも、お二人が一次情報の重要性に気づいたターニングポイントは何だったんですか?

熊重: ここは杉本さんとまさに共感したところで。まぐまぐの事業を進める中で、AIによってコンテンツが作りやすくなり、SNS上にも「これAIが書いてるな」というテキストが溢れかえるようになりました。運営しているウェブメディアでも、検索からの流入は格段に落ちている。そんな中で、企業が持つ一次情報を受け手側も求めているのではないか、と感じるようになったんです。まぐまぐはもともと一次情報を扱う事業でしたから、経営者の方々に「一次情報が大事ですよ」と話し始めたのは、ここ半年から1年くらいのことです。杉本さんと打ち合わせをした際に同じようなことをおっしゃっていて、そこから今回の調査、そして両社での取り組みにつながりました。

越川: AIが普及すればするほど、「一次情報」というキーワードが目立ってくる、と。SNSの投稿でも、AIが書いたにせよハルシネーション(AIがもっともらしく誤った情報を断定的に語ること)が多く含まれる。文章が綺麗だと本当だと錯覚してしまう分、「誰がそれを言っているのか」がより重要になっている感覚があります。

杉本: 私も熊重さんと近い感覚で、情報が同質化していて面白くない、と感じていました。企業が出すコンテンツが、どこかで見たようなものばかり横並びになっている。そこで差別化できる要素は、結局その企業でしか使えないデータや情報——つまり一次情報をどう使うか、だと思ったんです。

一次情報を公開することには、当然ためらいもある。越川氏はその点を率直に尋ねた。

越川: 一方で、一次情報を出すのを恥ずかしいと感じたり、手放したくないと感じたりする経営者の方もいると思うんです。メリットもある反面、失うものもある中で、どうお考えですか。

熊重: そうですね。以前この番組に出させていただいた際にも「恥ずかしくない」という話をしたんですが、本当に伝えたいことを本当に知りたい人に届けていく——それがメルマガであり、ラジオであるべきだと思っています。

越川: 僕は、最上のコンテンツは「逆境と挫折」だと思っているんですよ。逆境と挫折を乗り越えた数がキャリアだとすれば、それは経験した本人にしか語れない。全部がキラキラうまくいっている話より、そういう失敗談の方が、その人なりのコンテンツになる。企業にとっても同じことが言えるんじゃないでしょうか。

発信したいメディアは「ニュースレター」が1位、SNSは意外にも下位

熊重: これもデータを取ったんですが、自社の一次情報をストック・資産化し、発信していく上で関心のある媒体・表現手法を聞いたところ、1位がニュースレター、つまりメルマガで32%でした。これはちょっと意外でしたね。

越川: ニュースレターって、昔からある手法という印象がありますが、今また注目されているんですね。

熊重: あとはウェブメディアや出版、ラジオも上位に入ってきます。逆にSNSは、下の方だったんです。

越川: それは予想外ですね。

熊重: 予想外でした。「何かやろう」となったらまずSNSを頑張ろう、という空気を感じていたんですが、一次情報を出せるフォーマットとして、むしろメルマガのような手段が見直されているのかもしれません。

5年前は経営者がこぞって短尺動画でのダンス投稿に挑戦していた時代もあった。それが今、メールマガジンという地道な手法に注目が集まっているというデータは、越川氏にとっても興味深いものだったようだ。

一次情報を「出していい情報」に変える線引きと、目的設定の重要性

越川: 一次情報を取得すること自体、簡単ではないと思うんです。「うちの情報を使っていいですよ」と言ってもらえるまでには、信頼関係を築く必要がありますよね。

杉本: おっしゃる通りです。内部の一次情報と、外部から引っ張ってくる一次情報がある中で、私たちの場合はまず外部からデータを取りながら信頼を獲得し、その上で「もっと発信していきましょう」という形で、内部の一次情報の発信につなげていくケースが多いです。

越川: 社内の情報は大きく「機密情報」と「それ以外」に分かれますよね。機密情報はもちろん出さない。それ以外の部分は、本来もっと発信していい一次情報のはずなのに、他社事例を交えながら「これは出した方がいい」と気づいてもらう必要がある。

杉本: そうなんです。気づいてもらうこと自体が、一番大事なポイントですね。

上條: 最初の質問でも、まさに「気づいていない」という結果が出ていましたもんね。

杉本: もったいないんですよね、意外と。この調査自体も匿名で実施しているので、「知らない」「持っていない」と答えることへの抵抗感はある程度カバーできていると思います。

越川: 一次情報を集めるときのマイルールのようなものはありますか?

杉本: 何を目的にするかという共通認識を、しっかり持つことが大事だと思っています。一次情報といっても、ただ垂れ流すだけでは意味がない。目的が売上拡大なのか、企業ブランディングなのか、採用なのか——それを定めた上で、必要な情報を計画的に蓄積していくことが重要です。

「一次情報をくださいじゃなくて、経営課題を解決するために一次情報を活用していきましょう、という順番が大事なんです」

一次情報の線引きと信頼構築の話は、そのまま「採用」というもう一つの経営課題にもつながっていった。

越川: 経営者の方々と話していると、売上・利益と並んでよく出るのが人手不足の悩みです。優秀な人材がすぐ辞めてしまう、大手に取られてしまう——一次情報の活用は、採用活動にもプラスになるものでしょうか。

杉本: とてもあると思います。一次情報を出すことで、業界内での信頼性・権威性・ブランディングにつながります。それは採用にも直結すると思いますね。

越川: データそのものの価値以上に、腹を割って話してくれている、隠していないという透明性が、求職者にとっての信頼につながっていく感覚がありますね。

杉本: おっしゃる通りです。外部データも多角的に取得し、それを定期的に発信していくことも、権威性につながる部分です。求職者からすれば、業界で一番良い企業に入りたいという気持ちがある。その業界内での第一想起を獲得していくことが大事だと思います。

越川: 僕自身、800社ほどの企業データを持っていて、社内会議の録音データを累計3万2000時間ほど集めたり、頷きの深さまで調べたりしている、ある意味ストーカーのような会社を経営しているんですが(笑)、それでも一番重要なのはデータを集めることより、信頼を集めることだと痛感しています。杉本さんが一次情報を集めるときに、何か気をつけていることはありますか。

杉本: データを学習して第三者に勝手に渡さない、ということはきちんとお伝えしています。目的をすり合わせた上で、必要な範囲の情報を適切に扱う——その積み重ねが信頼につながっていくのだと思います。

 

SNS疲れとオフライン回帰——メルマガ・ラジオが選ばれる理由

一次情報を発信するメリットが見えてきたところで、話題はなぜ今メルマガやラジオといった手法が改めて注目されているのか、という点に移った。

越川: SNSは重要だと思う一方で、企業活動や個人の発信がSNSだけでは完結しなくなってきているとも感じています。その中でメルマガや音声配信、ラジオが注目されているのは、AIの影響とSNS疲れがあるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。

杉本: 広告やウェブ上での競争が激しくなる一方で、交通広告やタクシー広告など、オフラインへの回帰も実は進んでいます。コロナ禍はオンライン一択でしたが、出社回帰が進む中で、オンラインだけでなくオフライン・移動という選択肢が生まれ、そちらに人が分散しているのだと思います。地に足のついた、信頼性の高いコンテンツへの回帰が起きているのかもしれません。

熊重: SNSに同じような情報が溢れていることが、疲れにつながっている面はあると思います。私たちもメルマガのニーズを感じていますし、最近はイベントやウェビナーなど「人が集まる」場の盛り上がりも肌で感じています。

上條: 私自身、SNSを見たときに「本当に合っているのかな」と、つい疑いから入ってしまうことがあります。共感できる情報でも、一つフィルターを挟んでしまって、また調べ直す。その複雑さが、疲れにつながっているのかもしれません。

越川: 実は僕も同じ悩みがあって、AIの文章を見抜くAIを作ったんですよ。アスタリスクと罫線が2回出てきたら、もうほぼAI。行動経済学でいう「努力ヒューリスティック」——同じクオリティでも、手間をかけた方が高く評価される、という心理があります。だからこそ、一次情報を本人が伝えることが評価されやすい。個人でも企業でも同じだと思います。

「何を伝えるかじゃなくて、誰が伝えるか。AIができないのは、伝達に情熱を乗せることだと思うんです」

越川氏がそう語ったように、AIが生成する情報が増えるほど、発信者自身の経験や情熱に裏打ちされた一次情報の価値が相対的に高まる——これが今回の対談を貫くメッセージだった。

まぐまぐが目指す「クリエイター屋」という立ち位置

越川: 最後に、まぐまぐ自身が今後どう発展させていきたいか、一次情報プラットフォームとしてのビジョンを聞かせてください。

熊重: まぐまぐは何屋さんかを改めて振り返ったとき、「クリエイター屋」だという定義に行き着きました。プラットフォームはありますが、結局は発信者がいて、彼らのコンテンツがあってこそ今のサービスが成り立っている。クリエイターがやりたいことを実現し、最大限グロースさせる——それがクリエイター屋だと思っています。ラジオやメルマガに加えて、イベント、ウェビナー、スクールなど発信の形も、マネタイズの形も増えてきています。発信者の方に儲かっていただければ、私たちも発展できる。そういう展開を考えているので、市場向けの動きは今後もリリースを通じてお伝えしていきたいです。

杉本: データにもあった通り、発信者自身が気づいていないケースは、個人にも企業にもあります。

越川: その一次情報、素敵ですよ、と言ってあげられる存在が必要なんですよね。

杉本: そう言える人が、私たちクリエイター側であればいいなと思っています。

メルマガで伸びるのは「教育」「失敗談」、そして意外にも「占い」

番組本編を終えたあとの雑談でも、一次情報とコンテンツの相性についての話は続いた。

越川: アフタートーク的にぶっちゃけると、キラキラした成功例ってあんまり聞きたくないですよね。

熊重: 苦しいかもしれないですけど、そうですね(笑)。

越川: どんなコンテンツが伸びるんですか、メルマガだと。

熊重: やっぱり失敗系の話は強いですね。あとは有料のメルマガだと「役に立つか立たないか」が重視されるので、ビジネスや教育のジャンルが強いです。子育てなんかもそうで、想像以上に読者がいます。あとは意外と占いも強いんですよ。

越川: 占い、面白いですね。

熊重: 私はまぐまぐというとビジネスのイメージが強かったので、占いというカジュアルな分野が伸びているのは意外でした。子育て世代の方は、お金を払ってでも時間をかけてでもその情報を聞きたいと思うくらい、切迫感があるということなんですよね。

越川: 占いのコンテンツって、実は「私、占いなんて興味ないんですけど」と言っていた人が、その発信者個人のスピリチュアルな話には引き込まれる、という不思議な現象があるんです。誰が発信するか、というところに行き着く話だと思います。

熊重: 昔の占いは、女性が携帯サイトで平均2〜3個の有料占いサイトに登録していた時代があって。なぜかというと、いいことを言ってくれるまで見続けるから、なんです。「今日は不運です」と言われたら嫌になって、「今日のラッキーアイテムは傘です」と言ってくれるものを探して比較する。つまり自信のない方が自己肯定感を上げるために複数の占いを見ていた。今はむしろ逆で、個人の発信力が強い時代になっている気がしますね。

越川: 誰から聞くかによって、人の行動がこんなに変わるというのは、企業の一次情報にも通じる話だと思います。

アウトプットが先、インプットは後から埋める

番組の終盤、杉本氏から越川氏・熊重氏への質問というひと幕も。

杉本: 個人がクリエイターになっていく上で、どうしてもハードルを感じてしまう方が多い印象があります。それを乗り越えるポイントは何でしょうか。

越川: 僕は、全員がクリエイター・発信者になるべきだと思っています。多くの方は「準備ができてからアウトプットする」という順番で考えますが、それは逆で、アウトプットが先。出してみて、足りない部分を後から埋めていく。「必要だろう」と思って準備したものの97%は結局使われないんです。反応があれば、それが第三者からの承認になり、そこを掘り下げることでクリエイターとして成長していく。溜めてから吐き出すのではなく、吐き出してから埋める、という戦略です。

熊重: それは賛成ですね。私自身もメルマガをやっていて、アウトプットを先にしています。メルマガは文字数を書けるので、アウトプットを先にすると、自分の考えを一番整理しなければいけない媒体だと思うんです。整理された考えを発信できて、そのコンテンツ自体を後から活用することもできる。皆さんクリエイターとして活動した方がいい、というのは本当にそう感じますね。

越川: インプットするだけでは変化は起きない。本を読んでも、実践しなければ何も変わらない。このWhy So Good?のラジオ自体も、実はアウトプットが先なんですよ。ゲストが決まる前にオファーのメールが来ることもありますから(笑)。

一次情報という言葉の定義から始まり、企業の広報のあり方、採用への波及効果、そして「アウトプットが先」という発信者としての心構えまで——約30分という短い時間の中に、企業の情報発信を考え直すための視点が詰め込まれた回となった。

番組概要

※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです

 

 

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