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香港民主化デモのリーダーが「外国勢力との結託」を認めた衝撃。それでも日本メディア“ほぼスルー報道”の大罪

2019年、日本でも連日のように大きく報じられた香港の民主化デモ。先日、その象徴的存在の一人が自らの罪を認めましたが、我が国のメディアの報道ぶりはデモ当時の熱量とは程遠いものでした。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、リーダー格だった黄之鋒氏の裁判で明らかになった外国勢力との関わりを詳しく紹介。さらにデモ隊を「善」、北京を「悪」として扱い続けた日本メディアの伝え方を検証し、運動を無責任に煽ることの問題点を指摘しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:香港デモの裏側が次々と明らかになる中、なぜ日本のメディアは検証しようとしないのか

香港デモの裏側が次々と明らかになる中、なぜ日本のメディアは検証しようとしないのか

黄之鋒(ジョシュア・ウォン、元「香港衆志」秘書長)被告、外国勢力と共謀し、国家安全に危害を加えた罪を認める──。

9月2日、香港の地元紙など複数のメディアが冒頭のような見出しをつけて一斉にニュースを伝えた。

ジョシュア・ウォンは、日本でも注目を集めた2019年の香港民主化デモを率いた学生リーダーの一人で、ある意味、運動を象徴する存在だ。

当時の民主化運動を伝える日本メディアの熱狂ぶりを思い返せば、このニュースが同じ熱量で報じられても不思議ではない。

だが、現状を見る限り熱心にこのニュースと向き合った日本メディアはほとんど見当たらず、多くは通り一遍の報道でお茶を濁したといった印象を残したのだった。

なぜ、入り口と出口でこうも熱量が変わるのか。

一つの答えは、それがメディアの体質だからだ。

とくに体制の異なる国で、「民主化」や「自由」がテーマとなれば熱狂し、ほぼ無批判に運動する側に肩入れする一方で体制側を批判的に報じる流れがつくられる。

運動が政権基盤を揺るがせば揺るがすほど報道も過熱し、善悪のコントラストも鮮明となる。

そして最も批判されるべきは、運動を煽るだけ煽っておいて、その後の経過についてはほとんど関心を示さなくなることだ。

分かりやすい例が「アラブの春」だ。

香港の民主化デモの報道にも、そうした西側メディアの無責任な体質は顕著だった。

私自身、香港の人々が北京の支配が強まる未来に対して漠然とした不安を抱えてきたことは理解できる。

だが、運動が盛り上がった当時、北京がそれを強めようとしていたとは感じられなかった。むしろ、台湾での殺人事件から反送中(犯罪者の中国への引き渡し反対)デモへと至る流れは、北京サイドが騙し討ちにあったにも等しいような経過で、当局が怒りを募らせる動機にもなった。

しかも7月1日にデモ隊が香港立法会の庁舎を破壊し侵入したことで、取り締まりは必然となった。デモ隊は道路を占拠し救急車の通行にも応じず、地下鉄を長時間にわたって止め、最終的には空港を占拠し機能不全に陥らせ、多くの内外の人々の旅行プランに甚大なダメージを与えたのだ。

同じことをアメリカでやったとして、デモ隊は無事で済むだろうか。

それでも日本のメディアはひたすらデモ隊の行為は「善」であり、北京を「悪」として扱い続け、中には「戦う相手が強大だから仕方がない」という識者のコメントを伝えるメディアまであり、驚かされた。

そうした運動の着地点の一つが今回のジョシュア・ウォンの裁判なのだが、これが香港やメディアの望んだ未来だったのだろうか。

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彼が裁かれる法的根拠となり、メディアも批判する国家安全維持法(国安法)は、むしろ民主化運動によって施行が急がれたのであって、もしそれがなければ、ずっと先送りされていたのではないかと思われる。

つまり北京の支配が強まることを恐れていた香港の人々にとって完全なやぶ蛇となったのであるが、そんな矛盾を直視すれば、かえってその裏で糸を引いたとされる「外国」の存在を思わずにいられないのだ。

今回の裁判で香港の検察は「ジョシュア・ウォンが外国勢力と結託して国家安全を害した」罪を問い、本人もそれを認めている。

具体的に彼は「羅冠聰(ネイサン・ロー、元「香港衆志」主席)と共謀し2016年から2019年にかけて、少なくともアメリカに2回、ドイツに1回、イタリアに1回訪問し、欧州議会の人権小委員会にも出席し、米下院のナンシー・ペロシ院内総務(当時)や、マルコ・ルビオ上院議員(当時)と会った。また2019年7月5日から2020年5月20日にかけて、アメリカ、フランス、スイスに対し、香港警察への戦略装備や武器の供給停止を求める4つのオンライン請願を出した」という。

結果、アメリカは香港への催涙弾や群衆制御関連技術の装備供給を制限する法案を可決している。

また「(彼は)イスラエルのデジタルフォレンジックソフトウェア企業Cellebriteに対し、香港警察へのサービス提供停止を要請した」という。

法廷では、検察側が事実経過の朗読を終え、裁判官が黄之鋒に事実経過に同意するか尋ねたところ、黄は「確認する(confirm)」と回答したという。

つまり冒頭に触れたような外国勢力との結託を認めたことになる。

ジョシュア・ウォンが国安法の罪に問われるのはこれが2回目だ。

すでに「国家権力の転覆を共謀した罪」で2024年11月に懲役4年8カ月の判決を受けており、現在は服役中だ。香港国家安全維持法によれば、外国または国外の勢力と結託して国家安全を害する罪は2段階の量刑区分があり、重大な犯罪には無期懲役または10年以上の有期懲役が科せられるという。

ジョシュア・ウォンの弁護士を務める陳政龍(デレク・チャン)氏は、「被告がまだ若く、すでに6年近く服役していることを理由に、『軽度から中程度の区分の限界付近』での刑期を検討するよう求めた」という。

また「被告が、拘留中に多様な本を読み、前向きな気持ちで過ごしており、最終的には釈放されて高齢の両親の面倒を見たいと考えている」と付け加えたという。

外国勢力に利用されるのは愚かだが、年齢を考えれば厳罰が必要とは思われない。むしろ罪深いのは、若さや不満に付け込んだ外国勢力であり、無責任に煽るメディアの方ではないだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年9月6日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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image by: PaulWong / Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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