モノがあふれるいま、「これだけは手放せない」と胸を張って言える道具は、どれくらいあるでしょうか。
暮らしの達人たちに話を聞きながら、数ある選択肢のなかで「なぜそれが手元に残り続けているのか」を、その人の価値観や暮らしとともに紐解いていきます。
今回話を聞いたのは、イラスト集『銭湯図解』を手がけるなど、画家として活躍する塩谷歩波さん。
「かれこれ6年くらい、使い方を変えながら愛用しています」と語る、飛騨産業のセミアームチェアについて話を聞いてみました。
飛騨産業のセミアームチェア
「最初はデザインやカラーに惹かれて選びましたが、機能面でも大満足で、手放す理由が見つかりません」と塩谷さんが紹介してくれたのは、老舗の国産家具メーカー・飛騨産業の「SEOTO-EX セミアームチェア(張り座)」。
使い始めたきっかけは、自宅の仕事環境を見直したことでした。
飛騨産業「SEOTO-EX セミアームチェア」114,000円〜(税別)
今とは別の家で一人暮らししていたときは、安いダイニングチェアとテーブルで仕事をしていました。座面が硬くて、このままだと腰がおかしくなるなと思って、仕事に使える椅子を探しはじめました。
以前働いていた会社の先輩からすすめられたのが、飛騨産業のセミアームチェア。
気になってショールームへ足を運び、実際に座ってみることに。デザインと座り心地の両方が気に入り、即決したといいます。
古道具やヴィンテージ家具との相性が良い
「購入の一番の決め手は見た目」と語る塩谷さん。
ヴィンテージ家具が並ぶ塩谷さん宅
もともと古道具やヴィンテージ家具が好きで、自宅のインテリアにもなじみそうなウォルナット材に惹かれたといいます。
さらに背中を押したのが、オーダーメイドで選べる張り布の色。一番好きな色は緑で、青みがかった緑の張り布を見て、「これしかない!」と思ったそうです。
腰にフィットする椅子はいろいろあると思うのですが、ワークチェアだけど見た目がかわいくていいなと思いました
体に合うことはもちろん、自分の部屋に置きたいと思えること。その両方を満たしていたのが、この一脚でした。
腰を包み込んでくれる座面が快適すぎる
デザインと同じくらい塩谷さんが気に入っているのが、体にフィットする座り心地。
座面がくいっと上がっていて、腰を立たせてくれる感じがします。本当に座り心地がよくて、絶妙なフィット感があるんですよね。普通に座っても、あぐらをかいても座りやすい。作業効率が上がりましたね
作業中に姿勢を変えたくなったときも、そのときどきの座り方を受け止めてくれるところが気に入っているそうです。
脚は3〜4cmカットして「自分の体に合う特別な一脚」
足のひらが地面に届くように、椅子の脚を3〜4cmカット
長く使うものだからこそ、自分の体にぴったり合うものを選びたい。チェアの脚を身長に合わせてカットしてもらったのも、塩谷さんならではのこだわり。
私は身長154cmと背が低いほうなので、普通のチェアだと足がしっかり地面につかないこともあるんです。なので、3~4cmほどオーダーで脚をカットしてもらっています
既製品をそのまま使うのではなく、自分専用にカスタマイズした特別な一脚だからこそ、愛着もひとしおです。
仕事用でなくなっても、手放す選択肢はない
購入当初は、絵を描くときの作業用として使っていたセミアームチェア。
その後、ワークデスクを昇降式に変えたことで、残念ながら高さが合わなくなり、現在はダイニングテーブルと合わせて使っています。
結婚してからは夫婦でこのチェアを使うようになり、用途も少し変わりました。2人で一緒に映画を観たり、コーヒーを飲みながら本を読んだり、アイデアを練ったりするときにも座ることが多いんだとか。
夫も気に入って座っているので取られちゃった感もありますが(笑)、調べものをしたり、文章を書いたりするときにも使っています。あとは深めに座って考えごとをするときにもフィット感があるなと思いますね。作業するチェアが2脚になったことで、使い分けができて気分転換にもなっています
仕事に集中するための椅子から、考えごとをしたり、夫婦でくつろいだりする椅子へ。暮らしが変わるなかで、この一脚の役割も少しずつ変化してきました。
不便が思い浮かばないから、買い替えようと思ったこともない
6年間使っていて、買い替えようと考えたことはないという塩谷さん。
現在は購入当時よりも価格が上がっていますが、「それでもいま、もう一度買うかと聞かれたら買うと思いますね」と迷うことなく話します。
本当に不便だなと思うことがないから手放したくないですし、ずっと使っています。唯一挙げるとしたら、沈みすぎちゃうことがたまにあることくらいですかね。食事をしているときに後ろに寄りかかりすぎてしまう、みたいな(笑)
体にフィットする沈み込む感じがあるからこそ、ついリラックスしてしまう。それ以外で不満に感じる要素がないというから驚きです。
長い目で見て、体の調子がよくなるモノに投資したい
画家という職業柄、椅子に座っていることが多いといいます。
絵を描くことは想像以上に体を使うそうで、仕事を続けるうちに、長い目で見て体の調子がよくなるものにお金を使いたいと考えるようになりました。
座る場所って本当に大事だなと思っていて。絵を描くと、目を使うし肩や腰も痛くなるし……めちゃくちゃ体を使うんです。なので、長い目で見てできるだけ体の調子がよくなるものにお金を出したいなと思います。
手を痛めたりぎっくり腰になったりしたら仕事ができないじゃないですか。体の調子が悪くなるたびに病院に行くより、いいものを買ったほうが、ちゃんと計算すると断然安いなと思いますね
毎日使うからこそ自分に合ったモノを見極めて選ぶことで、暮らしの快適さも向上します。
古いものの背景にある「時間」に惹かれる
昔から古道具や古民家など、誰かが大切に使ってきたものや建物が好きだという塩谷さん。
惹かれるのは、単に「古いもの」だからではありません。そのアイテムや建物が重ねてきた時間や、そこに関わってきた人たちの営みにも目を向けています。
ただかわいいと消費するだけではなく、長い歴史のなかで古い建物や家具・暮らしに思いを馳せて今後どうあるべきかを考えることが大切だと思っています。過去の暮らしや建物、先人が使ってきたものにどのような意味があるのかを考えて汲み取り、過去の想いを形にしたいなと
使い込むことで生まれる風合いや、長い時間を経たからこそ感じられる魅力。
そうした目には見えにくい背景まで含めて価値を見つけることは、塩谷さん自身の作品づくりにもつながっています。
塩谷さんが描いた作品
私自身も絵を描いて売っていく仕事をしていくなかで、決して安くない絵に対して価値があると思ってもらえるように心を尽くしています。自分がそういう仕事をしているから、大量生産されたものではなく、長く愛せる本当にいいものを買いたいと考えますね
自らもアイデアを形にする仕事をしているからこそ、完成したものだけでなく、その背景にある作り手の考えにも目を向ける。それが、塩谷さんのもの選びにも表れていました。
最後に、「長く愛せる1点」を選ぶ塩谷さんが考える、上質なモノ選びのコツについて聞いてみました。
値段ありきで考えないほうがいいと思います。作り手の人柄や歩みを見る……たとえば、個人の作家さんだったら人柄も大事ですし、飛騨産業のような会社だったら、その会社が今までどういうことをどんな想いでやってきたかをみます。そういうところを見て、自分が好きだなと思って選んだものは長く使える気がします。
たとえば、数年前の蚤の市で会った羽生直記さんは、とても謙虚でありながら、ものづくりに対する職人らしいひたむきさを感じる方でした。ランプシェードも、一つひとつ少しずつ異なる表情を持っていて、細かな部分まで丁寧につくられています。そうした佇まいに羽生さんのお人柄が表れているように感じ、好きになりました
金工作家の羽生直記さんによるランプシェード
値段やスペックだけでなく、誰が、どんな思いでつくったものなのか。その背景まで知ったうえで「好きだ」と思えるものを選ぶ。
そうやって迎えたものだからこそ、暮らしや使い方が変わっても、簡単には手放さないのかもしれません。
仕事用の椅子として迎え、いまでは夫婦でくつろいだり、アイデアを練ったりする場所になった飛騨産業のセミアームチェア。6年間で役割は変わっても、塩谷さんのそばからなくなることはありません。
長く愛せるものを選び、暮らしに合わせながら使い続ける。この一脚には、そんな塩谷さんのアイテムとの付き合い方が表れていました。
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提供元:ROOMIE