9月13日投開票の沖縄県知事選挙は、自民党などが推薦する古謝玄太氏が過去最多得票で地滑り的勝利を収め、3選を目指した現職の玉城デニー知事は14万票超の大差で敗れました。2014年の翁長雄志氏の颯爽たる登場以来続いてきた「オール沖縄」の時代は、これで完全に幕を閉じたと言えるでしょう。メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では、著者でジャーナリストの高野孟さんが、この歴史的惨敗の背景にある本土政府の思惑と「中道」勢力の裏切り、そして沖縄が直面する絶望的な未来について論じています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
「オール沖縄」という1つの輝かしい時代が幕を閉じた / 玉城デニー現職知事が惨敗
9月13日投開票の沖縄県知事選挙は、「横一線」などとしたマスコミ各社の終盤予測を完全に覆し、自民党などが推薦する古謝玄太=前那覇副市長が42万3124票と、過去最多得票を獲得する地滑り的勝利を収めた。3選を目指した現職の玉城デニー知事の27万6060票に対し、14万7064票もの大差をつけた。去る1月の名護市長選で自民党や日本維新の会が推薦する現職の渡具知武豊が3選を果たし、また2月の衆院選で沖縄1~4の全区で自民が勝利したのに続く圧倒的な結果で、これにより2014年の翁長雄志県知事の颯爽な登場で始まった「オール沖縄」の一世風靡という1つの輝かしい時代が、完全に幕を閉じた。
古謝は、同県の公選知事として最年少の42歳での就任で、当然、2選・3選を目指すであろうし、「オール沖縄」崩壊の後にそれに歯止めをかけるだけの力は(差し当たり)どこにも見当たらないので、今後8年から12年間は、辺野古基地建設がダラダラと進むけれども普天間基地の返還は全く実現しないという絶望的な状況が深まっていくのだろう。
結局、イノチよりカネなのか
基地問題の解決と経済の振興は、必ずしも二者択一のものではない。かつて「沖縄のミスター自民党」とまで呼ばれた翁長は、「イデオロギーよりアイデンティティ」という名文句を掲げて知事の座に就いた。それ以前を振り返れば、大田昌秀知事は「平和」のイデオロギー、稲嶺恵一・仲井真弘多両知事は「経済」のイデオロギーで県政を取り仕切った。そのどちらでもなく、その両者の対立を超えていく「第3の道」を見出そうとしたのが翁長で、彼は「琉球新報」のインタビューに答えて、こう語っていた。
「戦後の冷戦構造の中で、自分で持ってきたわけでもない基地を挟んで保守と革新がいがみ合わざるを得なかった。保守は経済、革新は尊厳や人権だった。ただ、今のアジアのダイナミズムの中で、経済の位置付けが大きくなってきたが、人の心の中で(経済か尊厳かではなく)生活と平和を一緒に考えられるようになった。それがオール沖縄だと思う。オール沖縄は、誇りのない豊かさではない。誇りのある豊かさだ。殺伐とした豊かさでなく、潤いのある豊かさだ」
しかし本土政府は、翁長とその後継の玉城のこの希望を徹底的に打ち砕いてきた。「何が誇りだ、潤いだ。誇りのない殺伐とした豊かさであろうと、豊かさは豊かさだ。カネはカネだ。黙って受け取ればいいじゃないか」と、もう逆らうのも面倒になるまで県民の耳元で囁き続けた、その結末がこの15万近い票差だと言えるだろう。
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「中道」亡者の罪は余りに深い
96年9月結成の旧民主党は、そのちょうど1年前に沖縄で起きた「少女暴行事件」の衝撃の中から生まれたと言っても過言ではない。沖縄に駐留する米海兵隊員2人と海軍兵士1人がレンタカーを借りて12歳の女子小学生を海岸に拉致し、性的暴行を加え傷を負わせ、その場に打ち捨てた。県民の怒りは天を衝き、10月には大田知事を先頭に8万5000人が集結して抗議の声を挙げた。その光景を、遠くからではあるが我が事として見つめつつ政策の議論を進めた民主党は、日米安保条約がある間でも1日も早く基地負担を軽減し、海兵隊の海外移転を実現すべく、「常時駐留なき安保」を基本政策の1つに掲げたのだった。
今年1月に出来て、7カ月後には早くも壊れてしまった「中道改革連合」は、一応、その民主党の後継政党であるはずなのに、2月総選挙では沖縄2~4区で揃って候補を討ち死にさせ、今回の県知事選では玉城への推薦・支持を打ち出すことができなかったばかりか、公明党県本部が古謝の推薦に走るのを止めることもできなかった。「中道」が応援したところで、何万票にもならなかったに違いないが、しかしこの裏切り行為は歴史に刻まれ、多くの人々の記憶に残ることになるだろう。「中道」はすでに永田町で死んでいたが、念入りにも沖縄でもう一度死んだ。高市早苗首相の高笑いが聞こえてきそうである。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年9月14日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録ください、初月無料です)
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image by: Photo by Lance Cpl. Nicole Rogge, Public domain, via Wikimedia Commons