米国の中間選挙が目前に迫るなか、トランプ大統領の支持率低下を背景に、共和党は厳しい選挙戦を強いられています。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、最新の世論調査や有力候補の動向を踏まえ、中間選挙の行方と米国政治の今後を考察します。
来週に迫った米中間選挙/「トランプ教」のカルト集団化した共和党に勝ち目はあるのか?
米中間選挙が8日後に迫った。民主党が下院で過半数を奪うことはほぼ確実と見られており、焦点はすでに、同党が上院でも激戦を制して1議席でも過半数を上回って、トランプ政権をいよいよ崖っぷちにまで追い込むかどうかに絞られている。
●上院35、下院435議席の争い
まず、基本をもう一度、おさえておこう。
上院は定数100議席のうち35議席が改選される。民主党は現有47のうち非改選34で改選13、共和党は現有53のうち非改選31で改選22。民主党は改選と同数の13で優勢、共和党は改選数に6つ足りない16で優勢なので、残り6が接戦となる。民主党がこの6のうち4以上を制すれば、過半数を獲得する。
下院は定数435議席のすべてが改選される。民主党は現有212、共和党は219で(欠員4)、民主党優勢が205、共和党優勢が209なので、残りの21が奪い合いになる。
民主党はその21のうち13以上を制すれば、過半数を獲得する。
以上は、文章では分かりにくいので、毎日新聞9月4日付の図を借用する。日付が9月初なので、「優勢」の数は今ではもっと民主党有利に傾いているかもしれない。
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●下がり続けるトランプ支持率
どの調査でも、トランプ大統領の支持率は投票日が近づくほどに過去最低水準にまで下がり続けている。ロイター/イプソスが10月19日に発表した調査では、トランプ支持率は31%で、1期目と2期目を通じての最低を記録した。「選挙が今日行われるとしたらどちらの党に投票するか」の問いには、登録有権者の47%が民主党、35%が共和党と答えた。
ニューヨーク・タイムズ/シエナ大学が10月12~19日に行った調査も同様の問いを発していて、52%が民主党、41%が共和党だった(23日付同紙)。同調査はまた、投票に当たって考慮すべき関心項目を8つ挙げて、どちらの党がそれを上手く解決できると思うかを問うたところ、そのすべてで民主党への期待の方が上回った。
民主党 共和党 民主優位差
医療 57% 37% +20
生活費 55 40 +15
ガソリン価格 53 39 +14
対外戦争 51 41 +10
経済全般 51 43 + 8
移民 50 46 + 4
汚職 50 39 +11
人工知能 48 37 +11
これはもうほとんど、米国の有権者がトランプ政権に「無能」の烙印を押したに等しい結果である。
これに対しトランプはまともな政策で対抗しようとするのでなく、9月上旬にテキサス州ダラスで開いた共和党全国大会という名の実際は「トランプ熱狂翼賛パーティ」で、同党が上下両院で勝利すれば全成人に5000ドルの「トランプ配当」をバラ撒くという、法的根拠も財源も不明であるばかりか、政府が全国民の票を買い上げるかの狂った構想を改めてブチ上げ、さらに次のように演説して、中間選挙では投票用紙にトランプの名前は記されていないけれども必ず投票に行くようにと支持者に呼びかけた。
「右手を挙げてこう唱えなさい。『私は、米国史上最も偉大な大統領〔自分のことだ!〕に宣誓します。私は11月3日のその日、家族と共に、友人たちと共に家を出て、投票に向かいます。自分が登録有権者であるかどうかなんて気にしません。ちょっとくらい誤魔化し(cheat)があってもいいでしょう、奴ら〔民主党支持者〕だってやっていることなんだから』と」
この有様を見て、コラムニストのジャメル・ブーイエは「共和党は、1人の年老いた不動産屋のセレブの周りに集まったカルト集団に成り下がった」とまで酷評した(9月15日付NYタイムズ)。これでは、高卒以下の白人労働者層というMAGA派の最もコアな部分を固め直すことには役立つかもしれないが、それ以外の一時的に幻惑されてトランプを支持した無党派層、とりわけ黒人やヒスパニックなどは呆れ果てて去っていくだろう。それが、直近の30%台前半という支持率となって現れている。
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●注目される民主党の若手とDSAの伸長
ちなみに、戦後の歴代大統領の中間選挙前の支持率ランキングを見ると、ベスト3は、1998年のビル・クリントン(66%)、1986年のロナルド・レーガン(63%)、2002年のアフガン戦争最中のジョージ・ブッシュ子(62%)である。それに対してワースト3は、ルーズベルトの死で副大統領から昇格したばかりの1946年のハリー・トルーマン(33%)、2026年のトランプ(34%)、2006年のイラク戦争泥沼化の中のジョージ・ブッシュ子(37%)。つまりトランプは、戦後米国史上でも最悪レベル
の大統領であるにも関わらず、残り少なくなった熱烈支持者に自分を「米国史上最も偉大な大統領」と呼ばせようと足掻いているのである。
もちろん、選挙は水物で、今後1週間で何がどう動くかは分かったものではない。また負けたら負けたでMAGA派が「民主党の不正(cheat)だと言って暴動でも起こしかねないので、結果を予測し、その先の政権の行方を占うなど、ほとんど甲斐もないことである。とはいえ、各選挙区の動静を見るに、例えばテキサス州の民主党上院候補のジェームズ・タラリコ(37歳)や、ジョージア州の同党上院現職のジョン・オソフ(39歳)などは穏健派の立場から民主党を立て直し、将来の大統領候補にも育ちうる人材として注目を集めている。他方、民主党内でその穏健派の経済政策を批判しながら急速に勢力を広げているのは、マスコミ的には急進左派と呼ばれるが、私に言わせれば正統リベラルだと思う「米国民主社会主義者(DSA)」の潮流で、ミシガン州の上院候補ムスリムのアブドゥル・エルサイード(41歳)、コロラド州の下院候補メラット・キロス(29歳)などがどこまで勝ち上がってくるか、興味が尽きない。
もう1つ、番外編として目を向けておきたいのは、同じ11月3日に行われるワシントンDC(コロンビア特別区)の市長選挙で当選が有力視されている民主党のジェニース・ルイス・ジョージ前市議(38歳)。彼女もDSAの党員で、連邦直轄地であるDCを州に格上げして自治権を獲得すると共に、上下両院に投票権のある議員を送り出せるようにしたいとアピールしている。トランプは彼女を「共産主義者」と呼んで目の敵にしている。
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