アフリカ中部で猛威を振るい、周辺国にも感染が広がりつつあるエボラ出血熱。国境を越える人々の移動が容易となった現代社会においては遠く離れた国々にも脅威は及びかねず、実際にフランスでも感染者が確認される事態となっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、コンゴ民主共和国を中心とする感染拡大の実態と各国の検疫体制が抱える問題を紹介。その上で、海外の感染症を「対岸の火事」と捉えることへの危機感を示すとともに、日本政府の支援のあり方に疑問を投げかけています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:対岸の火事
日本メディアは「対岸の火事」扱い。アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱の実態
10月28日にスペイン中部ウルダ近郊で発生した列車同士の衝突事故は、69人の犠牲者が出てしまいましたが、乗客名簿にあった日本人2人のうち、1人目に続いて2人目も死亡が確認されたと、日本時間の11月3日朝、報じられました。そのため、この日のラジオは、各局とも朝昼夜のニュースのコーナーでこの内容を繰り返し報じていました。
8月26日にネパールと中国の国境付近で発生した大規模な土石流は、当初、約5,000人の行方不明者の中に日本人5人が含まれているということで、こちらもテレビやラジオで繰り返し報じていました。
一方、アフリカ中部のコンゴ民主共和国で今年5月に流行が宣言されてから、歯止めが掛からずに感染が広がり続けている「エボラ出血熱」は、10月30日の時点で感染者が1万人を超え、死者が5,000人を超えてしまったのに、日本ではほとんど報じられていないようです。あたしは、ほぼ毎日ラジオを聴いていますが、少なくともラジオでは一度もこのニュースを聴いていません。もしかすると、日本人の感染者や死者が出ていないからでしょうか?
しかし、新型コロナが世界的に流行していた時期のような水際検査も行なわなくなり、外国からの観光客をじゃんじゃん入国させ、今では全国各地の観光名所が外国人で溢れている時代に、日本人の死者が出ていないからと「対岸の火事」のままで良いのでしょうか?
エボラ出血熱の何よりも恐ろしい点は、もともと60%という高い致死率が、治療開始が遅れると80~90%に急上昇してしまうという特性です。そして、さらに恐ろしいのが、今回のエボラ出血熱は「ブンデイブギョ株」という希少なウイルスによるもので、このウイルスにはまだ承認済みの治療薬やワクチンが皆無という点なのです。そのため、5月に流行が宣言されてから、コンゴ国内だけでなく周辺国にも拡大しているのです。
コンゴの東に隣接するウガンダにも感染が広がり、10月にはウガンダの東に隣接するケニアでも感染者が確認されました。世界保健機関(WHO)のアフリカ担当者は「アフリカの国々を隔てる国境は、検査要員がまったく足りずに穴だらけの状態にある」「ケニアの感染例は今後さらに他の国へと感染が拡大して行くという警告だ」と述べました。そして、日本で暮らすあたしが最も恐怖を感じたのが、フランスでも6月に渡航者の中から感染者が確認されたという報道です。
これまでのエボラ出血熱の流行で最大のものは、2014年から2016年にかけてギニア、リベリア、シエラレオネで発生した大流行で、この時は2万8,600人超が感染して、1万1,000人超が死亡しました。しかし、現在発生しているエボラ出血熱は、5月の発生から10月末までのわずか半年で1万人超の感染者と5,000人超の死者が出ているのです。3年間で1万1,000人超が死亡した過去最大のケースと比較すると、単純計算で約3倍のスピードで拡大しているのです。
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国境も検疫もすり抜ける感染者。浮き彫りになる水際対策の限界
今回、海外の報道を片っ端からチェックしていたら、10月にケニアで確認された感染者についての詳細を報じているCNNの記事を見つけました。その記事によると、この感染者は、もともと発生国のコンゴに住んでいたケニア人で、すでに感染して体調が悪化していたため、コンゴの複数の病院で治療を受けていたそうです。そして、ケニアの実家に帰るため、東に隣接するウガンダの首都カンパラまで陸路で移動し、エンテベ国際空港からケニアの首都ナイロビ行きの航空機に搭乗し、10月3日にナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港に到着し、自宅に帰ったそうです。
しかし、自宅で急激に体調が悪化したため、家族がすぐにナイロビ市内の病院へ搬送しました。感染者は、発熱、悪寒、激しい疲労感、脱力感、筋肉痛、嚥下痛、皮下出血などの症状があり、医師はウイルス性出血熱と診断し、すぐに隔離され、エボラ出血熱の治療をスタートしました。しかし、2日後の10月5日午後11時30分、死亡してしまったのです。ケニアの保健当局は、この感染者と接触した家族や医療従事者の計28人と、カンパラからの航空機に同乗していた23人を特定し、隔離措置を取ったそうです。
このケースで最大の問題は、コンゴでエボラ出血熱の感染が分かり、症状が出て複数の病院で治療を受けていた感染者が、どうして自由に他国へ移動することができたのかという点です。それはこの感染者の経路を見れば分かります。コンゴには首都キンシャサのヌジリ国際空港を始め複数の国際空港がありますが、エボラ出血熱の感染者は出国できません。そこで、この感染者は隣国ウガンダの首都カンパラまで陸路で移動して、ここから空路を使ったのです。
到着したケニアの首都ナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港では、入国の過程で通常の検疫が行なわれたのですが、何故だか通過できてしまいました。この件について、ケニア保健省のパトリック・アモス保健局長は「彼が服用していた薬が発熱などの症状を抑え込み、検疫の目をすり抜けた可能性がある」と述べています。ここで初めて「He(彼)」という言葉が出たのは、あたしは感染者が男性だったと知りました。
現在、感染が拡大しているコンゴは、日本の6倍以上の面積の国土に、約1億800万人が暮らしています。日本は47都道府県ですが、コンゴは26州なので、1つ1つの州が日本の県の10倍以上の大きさです。その26州のうち、現在までに感染者が確認されているのは8州だけです。それでも、わずか半年で1万人以上が感染し、5,000人以上が死亡しているのですから、このまま他の州へと感染が広がれば、収束の目途など立たなくなるでしょう。
コンゴにも鉄道はありますが、新幹線のような高速鉄道はなく、日本が支援の一環として贈った日本のお古のディーゼル車が走っているような鉄道なので、広いコンゴではとても時間が掛かります。そのため、コンゴでは州から州への移動は空路が一般的で、全国には大小ふくめて230を超える空港があるのです。しかし、数カ所の国際空港以外は、検疫の甘い空港も多いようで、小型旅客機に乗り合わせた人同士の感染も危惧されています。
そして、何よりの不安材料は、人手不足で対策がまったく追いついていないという点です。感染拡大を止めるためには、感染者と接触した人たちを隔離するしかありませんが、人手不足で感染者と接触した人たちの追跡調査がほとんど進んでいないそうなのです。さらには、医療施設も救急車も不足しているため、多くの感染者が病院以外の場所で死亡し続けているのです。
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日本政府が責任を持ちチェックすべき3億円超の無償援助の行方
また、この事件の詳細は報じられていないため理由などは分かりませんが、感染が広がっている8州のうちの1つ、コンゴ東部のチョポ州では、感染対策に当たっていた看護師が住民に殺害されるという事件が起こり、医療活動への影響が懸念されていると報じられました。そんな状態のコンゴに対して、日本政府が何をしたかと言うと、感染の流行が宣言された翌月の6月、当時の石破政権はユニセフの東京事務所を通じて50万ドル(約7,900万円)の緊急無償資金協力を実施しました。
また、現在の高市政権は9月、同じくユニセフの東京事務所を通じて150万米ドル(約2億3,700万円)の緊急無償資金協力を実施しました。サスガは高市首相、前任の石破首相の3倍をポンと出して格の違いをアピールしましたが、これまでに日本が無償協力した200万ドル(約3億1,600万円)、本当に全額すべてがエボラ出血熱の対策のために正しく使われているのでしょうか?
日本政府は昔から、途上国に何かあるとODAだ無償支援だとポンポンと気前よく大金をバラ撒いて来ましたが、そのうちの何割かは相手国の権力者たちに抜き取られ、残りも公共事業を受け持つ癒着企業が山分けし、本当に困っている人々のもとにはわずかしか届いていないという話も良く耳にします。
日本国内でも、福島第1原発の廃炉作業に従事する臨時作業員の人件費として政府が搬出した資金が、元請け、1次下請け、2次下請け、3次下請け…とピンハネされ続け、被曝しながら働いている作業員にはわずかしか支払われていなかった、という報道もありました。
日本政府が気前よく他国に大金をバラ撒くのは構いませんが、その資金がどのように使われているのか?本当に正しく使われているのか?原資は日本国民が納めた税金なのですから、政府は最後まで責任を持ってチェックしてほしいと思います。何故なら、普通、約3億1,600万円もあれば、救急車の不足などすぐに解消するはずだからです。
(『きっこのメルマガ』2026年11月4日号より一部抜粋・文中敬称略)
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