G7オンライン首脳会議の欠席を巡り、有権者の納得が得られる理由を提示できない状態が続いている高市首相。外務省の国会答弁や過去の首相自身のSNSへの投稿などから、その説明の「食い違い」が浮かび上がる事態ともなっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、高市首相の欠席理由をめぐる一連の発言を検証。その上で、首相の言動が日本の外交や経済的利益に及ぼしかねない影響について持論を展開しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:嘘で国益を損なう高市外交
天下無敵の支持率女王だからこそなせる技か。嘘で国益を損なう高市外交
10月2日の21時半から30分間にわたってG7のオンライン会議が開催されたのですが、高市早苗首相がドタキャンしたことが大きな問題になっています。この日は、イラン情勢とそれによる石油燃料の高騰などが議題の重要な会議だったので、あのドナルド・トランプ大統領ですら出席したのに、高市首相は何故だかドタキャンし、日本からは遠藤和也外務審議官が代理出席したのです。
高市首相の他は、イギリスのアンディ・バーナム首相も欠席しましたが、バーナム首相は父親の葬儀と時間がバッティングしてしまい、これは仕方ない欠席でした。それでも重要な会議であることは理解していたので、エド・ミリバンド外相を代理出席させました。つまり、G7のうち5カ国は首相や大統領が出席し、父親の葬儀という仕方ない理由でバーナム首相が欠席したイギリスも外相を代理出席させたのです。
しかし、高市首相は特に重要な用事があったわけでもないのにドタキャンし、代わりに単なる事務方を出席させたのです。言うなれば、最高にフォーマルな場に、日本だけがTシャツとジーパンで出席したような話なのです。これは死ぬほど恥ずかしいことですし、何よりも招待してくれた相手に失礼なことなのです。事実、議長国のフランスは高市首相の欠席に激怒しているそうです。
オンラインとは言え、これはG7の正式な「首脳会議」です。日本は2023年から始まった過去8回のオンライン会議すべてに、当時の首相がちゃんと出席して来ました。それなのに、今回の高市首相だけがドタキャン、これは余程の理由がなければ許されません。
高市首相の当日夜の動向を見てみると、18時30分から19時45分まで、麻生太郎副総裁や木原稔官房長官らと首相公邸で会食して酒を飲み、その後はずっと公邸で過ごしていたようです。これなら余裕で出席できたじゃないですか。この不可思議すぎるドタキャン劇、このままでは世界から「G7軽視」という烙印を押されてしまいます。
高市首相の「国会軽視」は今に始まったことではありませんが、ここに来てマサカの「G7軽視」まで炸裂してしまったら、全国のギャラリーから「よ!サスガは天下無敵の支持率女王!」という「大向こう」が掛かってしまいそうな今日この頃です(笑)。
ちなみに、高市首相はどうしてG7のオンライン会議を欠席したのでしょうか?会議の3日後の10月5日、高市首相本人が自身のツイッター(現・X)に投稿した言い訳によると、この会議は「議長国のフランスが当日直前に急きょ設定したもの」であり「代理出席が認められていた」とのこと。高市首相は毎朝の身支度に3~4時間も掛かるそうなので、直前に連絡されても出席できないというのは理に適っています。
でも、これって本当なのでしょうか?フランスの大統領府のHPには「10月2日に各国首脳をオンライン会議に招集すると、国民に向けて数日前に発表した」という公式リリースがあるのです。フランスの国民に向けては数日前に発表していたのに、参加国である日本には当日直前まで通達していなかっただなんて、そんなことあるのでしょうか?
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「私には1ミリも責任などない」と聞こえた首相の答弁
そして、このフランスの大統領府のリリースが拡散され、高市首相の言い訳が「嘘っぽい」と広まると、今度は10月16日の参院予算委員会で「(オンライン会議に必要な)大きなディスプレイが、業者に頼むので整わなかった」「回線の接続設定のために業者を呼ばなければならず、間に合わなかった」と言い始めたのです。あたしは「え?」と思いました。一国の首相ともなれば、国際会議に限らず各国首脳とオンラインで会談することもあるのに、まさか首相官邸や公邸にオンライン会議を行なうための環境が整っていなかったとは!
これは立憲民主党の辻元清美参院議員の質疑に対する答弁でしたが、辻元議員も「業者が来ないと国際会議もできない国なんですか?」と呆れていました。でも、マジな話として、高市首相の説明が本当なら、これまでの首相はどのようにオンライン会議に参加して来たのでしょうか?本当にオンライン会議があるたびに外部の業者を呼んで、大型ディスプレイや回線をセッティングしてもらっていたのでしょうか?
でも、これでは本当に緊急のオンライン会議には出席できませんよね?高市首相は今回、それを言い訳にしましたが、歴代の首相は緊急のオンライン会議にどのように対応して来たのでしょうか?これまた激しく「嘘っぽい」ですよね。何しろ、この日の予算委員会では、外務省が「会議があること自体は2週間前に伝えられていた」と認めているからです。
細かい日時などは決まり次第連絡するとのことだったそうですが、2週間もあったなら余裕で準備ができたはずですし、そもそも「議長国のフランスが当日直前に急きょ設定したもの」という高市首相の当初の説明が完全に嘘ということになります。さらに追い打ちをかけるように言えば、高市首相は2カ月前の8月22日に、自身のツイッター(現・X)にこんな投稿をしていたのです。
公邸は総理の住居として知られていますが、打合せや執務の場としての機能もしっかりと持っています。海外要人とのリモート会議、公的行事のメッセージ収録、総理秘書官達との打合せを行える大小の会議室や通信環境も整備されています。
昨年末に公邸に引っ越しをしてから、8ヶ月近くが過ぎました。 公邸は、官邸の隣に建っていますので、危機管理上の観点から、住み慣れた議員宿舎から公邸に引っ越しました。 以降、官邸と公邸、どちらでもしっかりと仕事ができる環境をつくってきました。 これは、早朝・夜間、休日であっても、私が必要な情報を得て、迅速に必要な判断や対応を行えるようにするためです。 その一方で、「官邸職員の負担軽減」の観点から、対応が必要となる職員やSPを含む警護の人数をできる限り少なくすることができる公邸を積極的に活用するよう心がけてきました。 公邸は総理の住居として知られていますが、打合せや執務の場としての機能もしっかりと持っています。 海外要人とのリモート会議、公的行事のメッセージ収録、総理秘書官達との打合せを行える大小の会議室や通信環境も整備されています。 私は、公邸でも読める資料はほとんどを持ち帰り、当該政策の担当秘書官とは公邸内の会議室で打合せをするか、リモートでやりとりをすることで、官邸で執務している時と変わらない環境をつくっています。 多くの案件は、対面の必要があれば担当秘書官や関係の職員だけに公邸に来てもらうことで対応できます。 公邸内での打合せなど公邸での執務は、総理の日々の動静としては報じられませんが、私としては、「公邸も職場」というのが実感です。 私が公邸に居ることで、職員やSPを含む警護の負担を軽減できますので、平日は、官邸から公邸に移動するタイミングを、夕方の出来る限り早い時間帯にしています。 そして、休日や平日の早朝・夜間は、どうしても必要でない限り、公邸から出ないようにしています。 私の外出により、対応するSPの人数と負担が多大なものになるからです。 休日を公邸で過ごすと、「総理動静」は「終日、公邸で過ごす。」となりますが、公邸でも必要な執務を行っています。 官邸職員やSPの「働き方改革」の観点からも、これからも公邸の機能を最大限活用して、働いてまいります。
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) August 22, 2026
え?「海外要人とのリモート会議」の「通信環境も整備されています」って、おいおいおいおいおーーーーい!「大型ディスプレイ」だの「回線」だのって、ぜんぶ真っ赤な嘘だったのかよ!
…という流れから、今回の高市劇場はいよいよクライマックスを迎えます。これも辻本議員の質疑に対する答弁ですが「どうして自分が出席せず代理出席にしたのか?」と問われた高市首相は、こう答えたのです。
「外務省の判断で『今回の議題は欧米間の問題だから代理出席で良し』という話をまずは受けました」
あたしにはこの答弁が、こんなふうに聞こえました。
「私がドタキャンしたのも、事務方を代理出席させたのも、すべては外務省の判断であり、私は外務省の指示に従っただけ。だから1ミリも責任なんてありましぇ~~~ん♪」
つーか、どうして高市首相は「イラン情勢と石油燃料の高騰」が「欧米間の問題」だと言われて納得したのでしょうか?日本だって石油の高騰で莫大な被害を受けてますよね?政府のガソリン補助金で消費者価格はギリギリのラインで踏みとどまってますが、現在までに積み増しして来たガソリン補助金の総額は9兆5,000億円を超えてるんですよ?そして、この原資は国民が納めた税金なんですよ?それなのに「欧米間の問題」だなんて、高市首相の脳みそ、もしかして恐竜みたく「くるみ大」なんですか?
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思い出さずにはいられない「早苗のための奈良鹿」騒動
…というわけで、ちょっと表現が酷くなって来たので、いったん深呼吸してから続けますが、G7のオンライン会議が行なわれていた時、高市首相は何をしていたのかと言うと、ご本人いわく「会議中は所信表明演説を書いていた」とのこと。でもこれって「どうしても会議に出られない物理的な理由があり、仕方なく欠席した」という大前提があって、初めて成立する説明ですよね?もしも会議に出られる状態だったのに、自分が「出たくない」から欠席して「所信表明演説を書いていた」のだとしたら、とんでもない話ですよね?
で、ここまでずっと言わずに来たことを言っちゃいますが、あたしはこの「嘘に嘘を塗り重ねて行く」という高市首相のお家芸を見て『風の谷のナウシカ』ならぬ『早苗のための奈良鹿』を思い出してしまいました。まだ首相になる前、昨年10月4日投開票だった自民党総裁選に出馬した高市氏が、9月22日の告示日の所見発表演説で述べた「外国人観光客が奈良の鹿を暴行している」というデマについてです。
まず高市氏は『万葉集』に収められている大伴家持の「高円(たかまど)の秋野の上の朝霧に妻呼ぶ雄鹿(おじか)出で立つらむか」という有名な和歌を歌い「1,300年も前から奈良にはもう鹿がいて、それも夫婦仲むつまじい鹿がいて、それが歌になっていたのです」というトンチンカンな説明をしました。そして、次のように続けたのです。
「そんな奈良の鹿をですよ、足で蹴り上げる、とんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているもの、わざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている、そう思われませんか?」
そして、次のように続けました。
「SNSでも目にしますよね。神社の鳥居を鉄棒かなんかのようにですね、見立てて、ぶら下がって、そして遊ぶ観光客。神社をなんと思うとるんでしょうか?古い古いものが、大切に大切にされているところ、そういう日本人の気持ちを踏みにじって喜ぶ人が外国から来るようなら、何かをしないといけません」
ようするに反中や嫌韓のネトウヨに対する稚拙な愛国者アピールですが、古典マニアとしては、まずは大伴家持の歌のデタラメ解釈からツッコミを入れて行きます。高市氏は『万葉集』どころか『小倉百人一首』の歌すら読んだことがないのだと思いますが、家持の歌は「夫婦仲むつまじい鹿」など詠んでいません。たぶん高市首相は「妻」という言葉から「夫婦の鹿」だと思い込み、夫の鹿が妻の鹿を呼んでいるのだと勘違いしたのでしょう。でも、まだ古文を習っていない小学生じゃあるまいし、言っちゃ悪いけど無知にもホドがあります。
多くの動物は春が発情期ですが、鹿は秋が発情期です。奈良の春日大社では秋になるとオスの鹿の角をノコギリで切り落とす「鹿の角切り」が行なわれますが、あれは発情したオス同士がメスを奪い合ってケンカをするので、ケガを防ぐためにやっているのです。
9月に入ると、山のあちこちから「ピーー」とか「フィーー」というオスの鹿のかん高い鳴き声が聞こえ始めます。発情期を迎えたオスが、周辺のメスに自分をアピールしているのです。そして10月に入ると、さらに多くのオスが鳴き始めます。近くで聞くとやかましいですが、山から聞こえて来る声は、どこかもの悲しく、これを万葉の歌人たちは「秋の寂しさ」ととらえました。
家持の歌は「高円山の秋の野を流れる朝霧の中に、妻となる雌鹿を求めて寂しく鳴く雄鹿が出て来ている頃だろう」という意味で、妻となるメスを見つけたオスは鳴きません。
メスを見つけてカップルが成立すると、オスは交尾をするだけで、出産も子育てもメスのワンオペです。その頃、そのオスは、他のメスを探しています。ケンカの強いオスは他のオスたちを追い払い、自分の縄張りを広げ、何頭ものメスを引き連れてハーレム状態で冬を迎えます。現実的にも「夫婦仲むつまじい鹿」など存在しないのです。
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「自分で自分の首を絞め最後には開き直る」という持ち芸
さて、「安倍首相の国葬に反対するSNS上の書き込みの8割は隣りの大陸からのもの」など、以前から大嫌いな中国を貶めるためには息を吐くように嘘を垂れ流して来た高市氏ですが、この総裁選時の「奈良の鹿を蹴る外国人観光客」という発言も、県の担当者に問い合わせると「そのような報告は1件もないし、目撃情報もない」とのこと。そこで高市氏本人に発言の根拠を聞くと「自分なりに確認した」と繰り返すのみで、どのように確認したかについては明確に答えず、質問をはぐらかしたのです。
こうした報道が続き、SNS上でも高市氏の発言の信ぴょう性を疑う声が多くなると、高市氏は突然「自分が見た」と言い出したのです。自分が見たのなら最初からそう言えばいいのに、最初は人から聞いた話、SNS上で見た投稿のように言っていて、その根拠は答えない。そして説明に窮すると「自分が見た」、もはや子どもの開き直りです。
後先のことなど考えずに嘘をつき、根拠が示せなかったり辻褄が合わなくなると別の嘘を塗り重ね、自分で自分の首を絞めて行き、最後には開き直り。こんな人物が国会議員であるだけでも大問題なのに、日本の首相だと言うのですから絶望的です。今回、高市首相が嘘をついてG7の会議を欠席したことで、議長国のフランスとドイツは、EUによるEVとハイブリッド車への優遇策から、日本車メーカーを除外する案で合意してしまったのです。
これはEU内での自動車販売で、EVやハイブリッド車への補助金や税優遇を受ける条件の取り決めですが、除外されてしまったらハイブリッド車に力を入れて来た日本車メーカーは大打撃を受けてしまいます。就任早々、中国にケンカを売って今もなお国益を損ねつつある支持率女王が、今度はEUまで敵に回してしまったのです。一体、これのどこが「世界の真ん中で咲き誇る高市外交」だと言うのでしょうか?あたしには「嘘で国益を損なう高市外交」にしか見えません。
(『きっこのメルマガ』2026年10月28日号より一部抜粋・文中敬称略)
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