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遂に海軍も参戦。ロシア在住25年の識者が予見する「プーチンの野望」

空軍に続き、海軍もシリア領内のイスラム国の攻撃に加わったロシア。プーチンの狙いはどこにあるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係アナリストの北野幸伯さんは、「プーチンはアメリカの覇権を終わらせたがっている」とし、これからロシアが取るであろう戦略を大胆予想しています。

プーチンがアメリカにとどめを刺す方法

今日は、「プーチンがアメリカにとどめを刺す方法」についです。

ロシアによるシリア・イスラム国攻撃、真剣度が増してきました。空爆だけでなく、海軍も攻撃を開始しています。

カスピ海からミサイル発射=シリア攻撃、一気に拡大―ロシア
時事通信 10月7日(水)21時0分配信

 

【モスクワ時事】ロシアのショイグ国防相は7日、ロシア海軍の4隻が同日朝にカスピ海から巡航ミサイル26発を発射し、シリア領内の過激派組織「イスラム国」の11拠点を攻撃したと明らかにした。

 

南部ソチで、プーチン大統領に報告する様子を国営テレビが伝えた。

 

これまでの空爆作戦から軍事行動を一気に拡大させた。

 

ロシアは9月30日、同組織と戦うアサド政権を支援する名目で、シリア西部ラタキアの空港を拠点に空爆を開始。

 

プーチン大統領は「地上作戦は行わない」と説明しているが、海軍も参戦させたことで、ロシアの「対テロ」作戦は新たな段階に入った。

プーチンらしいやり方です。

米軍は、1年以上もイスラム国を空爆しつづけ、まったく何の効果もありませんでした。むしろイスラム国の支配地域は拡大し、シリアのアサド政権をおびやかすようになってきた。それでロシアは、「アメリカは、イスラム国をアサド打倒のために利用している」と見ているのです。

一方ロシアは、「中東の事実上の同盟者アサドを守る」という目的がはっきりしているので、ガンガンやっています。

さて、今回は、「こうすればプーチン、アメリカにとどめを刺せるよね」という方法について。もちろん、私の空想です。空想ですが、「ありえるシナリオ」でもあります(私自身は、アメリカの完全没落を願っていません。対中国で日本が困ることになるからです。世界経済もメチャクチャになるでしょうし)。

第1段階:プーチンは短期間で「イスラム国」を掃討する

圧倒的残酷さで、「世界共通の脅威」になった「イスラム国」。米軍は「ダラダラ」空爆を1年もつづけ、何の結果も出ていない。「本気で勝つ気あるの?」と疑いたくなるのは、ロシア人だけではないでしょう。

プーチンは、世界共通の敵「イスラム国」を3~4か月で壊滅させ、世界の英雄になります(「なります」というのは、予測ではなく、「なりたいです」という意味です。今お話ししていることは、私が「プーチンの脳内で起こっている」ことを想像しているのです)。

第2段階:プーチンは、アサド政権を守る

ロシアはイスラム国と同時に、シリアの「反アサド派」を攻撃している。それで、シリア国内から「反アサド勢力」は一掃され、アサド政権が盤石になります(ならせたい。―プーチン)。

第3段階:プーチンは、シリア、イランとサウジアラビアを和解させる

「中東」というと、「みんなイスラム教徒」というイメージですが。シーア派とスンニ派が争っています。もっというとシーア派のイランと、スンニ派のサウジアラビアを中心とする争い。

プーチンは、イランとサウジアラビアを和解させます。

「不可能だ!」と思いますね。しかし、最近事情が変わってきているのです。というのは、今年7月、アメリカはイランと和解した。

<イラン核交渉>最終合意 ウラン濃縮制限、経済制裁を解除
毎日新聞 7月14日(火)22時1分配信

 

【ウィーン和田浩明、田中龍士、坂口裕彦】イラン核問題の包括的解決を目指し、ウィーンで交渉を続けてきた6カ国(米英仏露中独)とイランは14日、「包括的共同行動計画」で最終合意した。

 

イランのウラン濃縮能力を大幅に制限し、厳しい監視下に置くことで核武装への道を閉ざす一方、対イラン制裁を解除する。

 

2002年にイランの秘密核開発計画が発覚してから13年。粘り強い国際的な外交努力によって、核拡散の可能性を減じる歴史的な合意となった。

これに衝撃を受けたのがサウジとイスラエルです。「アメリカに見捨てられた!!!」と感じている。それで彼らは、ロシアに接近しはじめている。

なぜアメリカは、イランと和解したのでしょうか?「シェール革命」で、天然ガス生産でも原油生産でも世界一に浮上したアメリカ。「自国にたっぷり資源がある」ことを理解したアメリカにとって、「資源たっぷりの」中東の重要性が薄れたのです。それで、ロシアが中東で影響力を拡大できる条件が整っている。

「でも、ロシアは中東で影響力を拡大してどうしたいの?」

それは、少し後で。

第4段階:プーチンは中東の覇権を握る

アメリカに捨てられて困っているサウジアラビアとイスラエル(=ユダヤ教)。

もとから親ロシアのイラン、シリア(アサド政権)。

プーチンは、イスラム教シーア派、スンニ派、ユダヤ教を和解させ、「中東の覇権」を握ります(握りたいです)。

第5段階:「ペトロダラーシステム」と「ドル崩壊」

アメリカは、世界一の財政赤字国、貿易赤字国、対外債務国。それでも、いままで破産していない。その理由は、「ドルが基軸通貨」(=世界通貨、国際通貨)だからです。

2次大戦以降、ドルと金(ゴールド)はリンクしていた。ところが、それでドルがどんどんアメリカから流出して困った。そこでニクソンは1971年、「ドルと金(ゴールド)の交換をやめる!」と宣言します(=ニクソンショック)。これで、ドルは「ただの紙切れ」になった。

しかし、今にいたるまで「ドル=基軸通貨」の地位を維持しています。なぜでしょうか?

その大きな理由が「ペトロダラーシステム」。つまり、「原油は、ドルでしか売らない」

ニクソンは、

  1. アメリカはサウジアラビアを守る
  2. サウジ王家を守る

ことを条件に、「石油販売はすべてドルで行う」ことを約束させました(1974年)。

OPEC諸国もサウジに従い、「石油の売買はすべてドルで」が世界のスタンダードになった。この体制は1975年から2000年までつづきました。

ところが2000年9月、イラクのフセインが「イラク原油の決済通貨をドルからユーロにかえる!」と宣言。同年11月、実際にかえてしまった。

彼はそれでどうなったか?

皆さんご存知ですね。(イラク戦争の公式理由=「大量破壊兵器」「アルカイダつながり」はどちらもウソだったことが明らかになっている)。

これをきっかけに「ドル離れ」のトレンドが形成されていきました。

その後起こったこと。

これらが、「100年に1度の大不況」の大きな「裏」要因だったのです。

この話、新しい読者さんには、「トンデモ系」と思えるかもしれません。しかし、証拠は山ほどあります。もっと詳しく知りたい方は、「完全無料」のこの情報をゲットしてください。

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そして、アメリカの息の根が止まる

というわけで、

そして、

その後はどうするか?

アメリカに捨てられたサウジアラビアを説得し、「原油の決済通貨をドル以外にさせる」

これで、アメリカの覇権は終わりです。

もちろん、既述のように、これは私の想像にすぎません。しかし、「ロシアに25年住み、プーチンを観察してきた男(=私)の想像」なので、全然「ありえない」というわけでもありません。

さらに、仮にプーチンがそう考えていても、「相手がいる」話ですから、うまくいくかもわからない。ロシアも、「制裁」「原油安」「ルーブル安」で相当苦しいですから。

いずれにしても、「シリア」「ウクライナ」「東、東南アジア」、どこを見ても、「戦国時代」です。

image by: ID1974 / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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