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第三の黒幕。ロシアのシリア空爆の裏に「イランの影」

ロシアによるシリア空爆のシナリオを書いたのはイランらしい、と記すのは『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さん。さらにこの空爆で、ロシアが核兵器を使う可能性も示唆しています。

ロシアと米国、中東はどうなるのか?

徐々に、ロシアがシリアに介入した経緯がわかってきている。この戦争のシナリオライターは、イランであるようだ。ロシアはイランの要請でシリアに出てきたという。現在までの経緯と今後を検討しよう。

ロシアの介入理由=イランの要請

オールモニター紙の「Does Iran even want Russia in Syria?」でイランとビスボラは、シーア派のスンニ派に対する代理戦争で中東で手を広げて過ぎて、手がまわらなくなり、特に空軍がなく、シリア反政府軍との戦いに負け始めて、ロシアに応援を求めたようである。イラクにロシアは、このため、SU-25を緊急に援助した。米国は、戦闘機の情報がロシアに筒抜けになると戦闘機の援助をしていない。

しかし、シリアとイラクの人的、通信傍受の2つの情報網をイランが抑えているので、ロシアはイランから情報をもらって空爆をするしかない。このため、バクダッドで4ケ国の情報交換を行い、ロシアは、独自に無人機を飛ばして情報を得る努力をしている。その無人機がトルコに入り、撃ち落とされている。

ロシアはウクライナ紛争など周辺諸国との紛争を抱えているが、一番の問題は、デイリービート紙の「Putin’s War on Terror Backfires?」によると、チェチェン、ダゲスタン、イニグシェチアでテロ攻撃が頻発していて、その裏にイスラム国が関与しているという。

ロシア国民が4407人もイスラム国に参加していて、この人たちが帰ってロシアを混乱させる可能性を見ている。しかし、シリア介入前には、イスラム国からの直接的な攻撃はなかったはず。これに対して、プーチンはインタビューで、事前に防止をすることが必要と述べている。

シリア介入後、アルカイダが世界のイスラム教徒に対して、ロシア人の攻撃を指示した。心配したとおりである。

ロシアのシリア介入は、イランの強い要請と自国内のイスラム過激派対策という2つの理由で行ったことがわかる。そして、イスラム国への攻撃とすれば、世界的な信頼を得ることも重要なファクターであったようだ。プーチンは、偉大な指導者という名声を得て、揺るぎない地位を確立することに情熱を傾けている。

イランは、中国に対しても、中東介入を要請しているようである。中国国内のイスラム教地域、東トルキスタン、新疆自治区でのテロを抑えるためには、イスラム国との戦闘で潰す必要を訴えているようだ。

イランが世界(ロシア、中国、シーア派)対スンニ過激派の構図を作りたいのであろう。スンニ穏健派を除外するためには、これしかない。シーア派対スンニ派ではイランは負けることが分かっている。

イスラム国の動向

オールモニター紙の「IS, Jabhat al-Nusra trace Afghan battlelines in face-off against Russia」によると、ロシアに対する過激派勢力は、現在までイスラム国とヌスラ戦線の派閥間での戦闘をしていたが、共産主義者という不信心のロシアが出てきたことで、昔のソ連のアフガニスタンでの失敗と同じようにしてやると一致団結する方向である。

イスラム国を標的にした米空爆は、これまでに約2万人の戦闘員を殺害しているが、問題は2万人殺しても、イスラム国戦闘員の数が減っていない。イラクとシリアには絶えず新兵が流入しており、戦闘員2万~3万人の規模を保っている。

中東担当のAP通信記者のムハンマド・ダラグメ氏によると、ヨルダン、シリア、エジプトなどのスンニ派諸国の若い人たちは、多くが無職であり、何もないし遊びもない。街は整備されていずに、電気も水もない。このような失望から若い人は、イスラム国に参加するかギャングに参加するしかない状態である。

ここで、イスラム国は、貧しい人たちに燃料を配り、ラマダン期間中は食料を配っている。しかし、ヨルダンなどの政府の人たちは、自分だけ良い暮らしをして、庶民は貧乏のままである。

このため、イスラム国に若者は参加しているようだ。

よって、イスラム国が、ロシア、イラン、ヒスボラを窮地に追いやる可能性もある。しかし、ロシアは、今でもクラスター爆弾を使用しているので、それより強力な戦術核を使う可能性もある。

image by: Orlok / Shutterstock.com

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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