中国主導のAIIB事件によって米国覇権の衰退が浮き彫りになりました。人気メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』でも、「アメリカは今、ベトナム戦争で敗れた直後のように、自信喪失状態」と伝えています。ではそんなアメリカに対して日本はどのように接すればいいのでしょうか?
第一歩は、アメリカのニーズを理解すること
なんか「キレイゴト」みたいですが。これ「キレイゴト」じゃないです。
ある宗教家が、道でであった男を入信させようとした。ところが、男は全然話を聞いてくれない。
なぜか?
男は、「腹がへっていた」のです(笑)。でも、食べ物を買う金がない。宗教家は、「そうですか、お腹がすいているのにお金がないのですね。ちょっと待っていてください」。こういって、ハンバーガーをマックで買い、男に与えました。お腹が膨れた男は感激し、「話を聞かせてください」となるかもしれない。
このたとえ話はなんでしょうか?
「利害を一致させたい」と思ったら、まず相手(アメリカ)がどんな状況にあって、何をのぞんでいるのか、しっかり理解しなければならない。
アメリカは自信を失っている
では、アメリカの現状はどうなのでしょうか? アメリカは今、ベトナム戦争で敗れた直後のように、「自信喪失状態」にあります。
なぜ?
誰も、覇権国家であるはずのアメリカのいうことを聞いてくれないから。
最近の例を。
- 2013年6月、G8サミットでオバマは、「シリア攻撃」のコンセンサスを得ようとした。するとプーチンが、「化学兵器を使ったのはアサドではなく、反アサドの方だ!」といって、「シリア攻撃」に反対した。
- 2013年8月27日、バイデン副大統領は、「シリアを攻撃する!」と宣言した。
2日後、イギリスは、「シリア攻撃には加わらない!」と決定し、世界を仰天させた。
- 2015年2月、アメリカは、ウクライナ軍に最新の武器をどんどん提供しようとした。
ドイツのメルケルさんとフランスのオランドさんは、これに反対。アメリカの意向を無視して、ロシアと「ウクライナ停戦合意」をしてしまった。
2015年3月。
アメリカは、「(中国が主導する)アジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するな!」欧州を脅迫した。イギリスは、アメリカの警告を無視して、AIIB参加を決定。これに、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルグ、韓国、オーストラリアなどがつづいた。
特に、最後の「AIIB事件」は決定的でしたね。オバマさんは今、「誰も俺のいうことを聞いてくれない……」としょんぼりしていることでしょう。
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日本は、「自信のない」アメリカのために何ができるか?
これ、とても簡単で、アメリカを励ませばいいんですね。
たとえば、
- アメリカは、「自由」「平等」「人権」「民主主義」などなど「普遍的価値」をひろげる、「歴史的使命」を担った国である
- 日本は、「世界一の親米国家である」
- 全日本国民は、「トモダチ作戦」に感謝している。あの恩を日本人が忘れることは決してない
- 日本は、「善なる国」アメリカの「永遠の覇権」をのぞむ
そして、「口ばかりでなく、日本は【事実】アメリカの役にたってますよ」と示すことも大事。
- 日本は、数十年間米国債を買いつづけることで、「普遍的価値」を世界にひろげるというアメリカの崇高な使命を後押ししてきた
- 日本が、「集団的自衛権の行使容認」「安保関連法案作成」に動いているのは、アメリカを安保面から強力にサポートするためである
まあ、単純にいえば、
- 日本は、アメリカのことが大好きである
- 日本は、アメリカの覇権が永続することをのぞむ
- 日本は、資金面(国債)と安保面(集団的自衛権など)で、実際にアメリカの覇権維持をサポートできる
- 日本は、「いつもアメリカの味方」である
ああ、読者の皆さんの「怒りの声」が聞こえてきます。「なんじゃこりゃ!!!???」と。
それは、「日本の国益」に合致するのか?
ここまでの話。誰もいうことを聞かず、衰退が明らかなアメリカにとっては、明らかなメリットでしょう。では、日本にとって、世界から見放されつつあるアメリカとひっつくことはメリットなのでしょうか? アメリカを味方につけることは、日本にとって以下のような利益があります。
- 中国は、明らかに尖閣・沖縄を狙っていますが、日米が一体化することで、「強奪」は困難になります。
- 中国、韓国は、世界的に「反日プロパガンダ」を行っていますが、日米が一体化することで、「中韓の主張はウソである」となる可能性が強まります。
- 日本は、アメリカのお墨つきをえて軍事力を増強。「軍事的自立」に抵抗なくむかう道が開けてきます。
というわけで、今日米関係を強化することは、日本にもメリットがある。そして、中国の対日戦略(=日米を分断し、日本を孤立させ、尖閣沖縄を奪え!)を崩壊させることもできます。
「・・・話はわかりましたが、実際どうやってアメリカに伝えればいいのでしょうか?」
日本の主張を伝える絶好の機会が訪れようとしています。安倍総理は4月末、アメリカ議会で演説されるのですね。そこで、ここまで書いた内容を伝えればいいのです。
どんな風に演説したらいいか、またの機会に考えてみましょう。
著者/北野幸伯
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