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温泉気分が味わえる「ぬるぬる湯」が身体を汚してしまう落し穴

「温泉を最大限楽しむなら五感をすべて使え」とメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者・飯塚玲児さんは言います。五感を使い、温泉の個性を知ることによってさらに楽しい温泉ライフを送りましょう。今回は「湯の肌触り」について解説しています。

「ぬるぬる温泉」の正体とは?

温泉を最大限楽しむには、やはり五感のすべてを使って楽しんだほうがいい。

源泉の味、におい、色、湯の肌触り、湯上がり感など、意識して感じるようにすると、温泉の個性がわかって、いっそう入浴が楽しくなる。

その中でも、今回は「湯の肌触り」で、特にわかりやすい「ぬるぬる感」について解説しよう。

湯の肌触りには、この「ぬるぬる感」のほかに、「すべすべ感」「つるつる感」「キシキシ感」「ザラザラ感」「まったり感」「濃厚感」などがある。

かなり微妙な違いではあるが、意識している何となく違いがわかるものだ。

中でもぬるぬる感は、比較的初級者でもすぐにわかるものだと思う。

湯のぬるっとした肌触りは、いかにも水道水と違う「温泉」だと感じられてうれしいものである。

このぬるぬる感につながっているものには、いろいろな要素がある。

まず、泡つきのある温泉ぬるぬる感。 これは体にびっしりとついた泡を手でぬぐい去るときの、ビロードをなでているような官能的な感触である。

細かく言えば、ぬるぬるとは少し違う感じでもある。

この泡は、炭酸泉二酸化炭素泉)の炭酸ガスが泡になっているものと、温泉が非常にフレッシュなために、温泉水に含まれていたガス成分体につく場合がある。 後者の場合で泉質が「炭酸水素塩泉」の場合、施設などで「炭酸泉」を謳っていることがかなり多いのだが、これは間違いである。

二酸化炭素泉の場合は炭酸ガスであり、炭酸水素イオンである。間違えている温泉施設が非常に多いので、覚えておいて損はない。

ただ、炭酸水素塩泉でも、泡が付くということはそれだけ温泉新鮮であることのでもあるから、すばらしい湯であることには変わりがない。

ぬぐってもぬぐっても肌に微細な泡が付く温泉の心地よさは格別である。

上記のような場合とは別に、温泉成分や液性pH)によってぬるぬる感が楽しめるものがある。

まず、泉質的に言うと、ナトリウム炭酸水素塩泉皮膚不要角質溶かして流す効果があり、その角質が溶ける感覚がぬるぬる感につながる。

旧泉質名で言うと「重曹泉」で、重曹は掃除に使うくらいだから、美肌に効果があることはいうまでもない。

もう一つは液性アルカリ性の湯の場合である。
鉱泉分析法指針では、液性の分類でpH7.5~8.5未満弱アルカリ性、同じくpH8.5以上アルカリ性としている。

pH10前後の強アルカリ性の湯も各地にあって、こうしたアルカリ性の湯ぬるぬる感感じられる温泉が多い。

アルカリ性の湯も肌の脂角質乳化して流す作用があるので、美肌の湯といわれることが多い。 アルカリ性単純温泉などは代表的なものである。

ちなみに、炭酸水素塩泉も(アルカリ性であることが多い。

ほかに、泉質名には現れないが、温泉成分として「メタけい酸」が多く入っていると、ぬるっとした肌触りになることが少なくない。これは成分分析書の数値を見ればわかる。

このぬるぬる温泉で、注意したいことがある。

上記のような要素をどれ一つクリアしていないにも関わらず、めったやたらにぬるぬるするお湯の場合、ちょっと疑ってほしい。そのお風呂が循環式の場合は、特に注意が必要だ。

というのも、循環式で湯を何度も使い回しをしていると、湯に有機物簡単にいってしまえば汚れ)がどんどん蓄積されていき、それがもとでぬるぬるしている場合もなくはないからである。

また、源泉かけ流しでも、いわゆる「チョロ流し」で、浴槽内の湯があまり入れ替わらない状態になっていると、こうしたことが起こることもある。

もっとも、アルカリ性や炭酸水素イオン、メタけい酸などの多寡だけでぬるぬる感が決まるわけではなく、温泉水にはさまざまな物質がとけ込んでいるから、一概にこうだ、と断定はできない。

ただし、上記のようなこともある、ということは知っておくといいと思う。

温泉の個性に関しては、ひとまずは成分分析書を解読できるとおおよその目安にはなる。
もっとも、分析書はあくまで源泉のもので、浴槽の湯のものではないから、加温や加水、消毒、循環などで、個性がすっかり失われている場合もある。

ただ、分析書の読み方を知ると、その「失われているなあ」ということがわかるわけで、それだけでも入浴がもっと楽しくなる。分析書の読み方については、次号以降、少しずつ解説していこうと思う。お楽しみに。

image by: Shutterstock

 

『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋

著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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