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それでもフミオはあきらめない。岸田「6月衆院解散」に麻生太郎と菅義偉が悶絶する訳…自民崩壊 政権交代 国民苦笑いも?

自民党が衆院3補選で完敗し、「6月衆院解散はなくなった」と多くのメディアが断定的に報じている。だが総理・総裁の椅子にしがみつく岸田総理にとって、6月解散は唯一の延命策。常識で考えれば解散はあり得なくても、その常識が岸田首相に通用するとは限らないと指摘するのは元全国紙社会部記者の新 恭氏だ。野党の内閣不信任案を口実に、国民の信を問うとの大義名分で一か八かの解散を断行する――「岸田首相の中で、まだ生きているにちがいないシナリオ」のワガママな中身を見てみよう。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:岸田延命の唯一の道「6月衆院解散」は補選全敗で封じられたのか

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岸田延命の唯一の道、6月衆院解散は「本当に」封じられたのか

4月28日はこの国の政治の転換点になるのだろうか。

長崎3区、東京15区、島根1区の衆議院補選。立憲民主党が総ナメし、不戦敗の2選挙区を含め自民党が全敗した。番狂わせでもなんでもない、むしろ予想通りだったというところに、自民党が置かれた状況の深刻さがある。

その前日の27日午前中、岸田首相は東京・代々木公園の連合第95回メーデー中央大会に出席したあと、いったん官邸に戻り、そこからGWの旅行客でにぎわう羽田空港に向かった。

岸田首相の頭の中を占めていたのは、細田博之氏(前衆院議長)の死去にともない、島根県で繰り広げられている衆議院島根1区補選のことだ。

自民党が擁立する錦織功政氏(元中国財務局長)と立憲民主党の元衆議院議員、亀井亜紀子氏との一騎打ちとなったが、裏金問題による逆風が吹き荒れ、錦織氏は当初から劣勢を伝えられてきた。ここで、堕落した自民党を勝たせては島根県民の名誉にかかわるという有権者の思いも想像以上に強かった。

4月21日に最初の島根入りをしたとき、岸田首相は有権者のこれまでにない冷ややかな眼差しを感じたことだろう。錦織陣営からも、「首相が裏金問題の責任をとらないからこうなるんだ」と言う声が漏れ出した。

フミオの真のヤバさを自民党はまだ知らない

鈍感力”が異常に長けた岸田首相は、自分のせいだとはつゆほども思わない。党本部に指示して閣僚経験者を連日投入しているし、これまで「自民党王国・島根」を支えてきた業界団体を議員たちがこまめにまわり、ネジを巻いているはずだ。首相自ら要所となる団体幹部に電話攻勢をかけもした。

むしろ、岸田首相の胸中にわだかまっているのは、茂木幹事長ら党執行部への疑心だ。補選は負けてもいいと彼らは思っているのではないか。首相の解散権を封じるために。

だが、岸田首相に覚悟があれば、茂木幹事長らがサボタージュしていようと、自ら主導して改革を断行し、国民を味方にすることだって可能なはずだ。たとえば、この間、岸田首相は「政治とカネ」の問題に真剣に取り組んできたといえるだろうか。

党のワーキンググループが検討してきた政治資金規正法改正案は、「政治家の責任の強化」を掲げながらも、実効性のある真の改革とはいえず、むしろ、ひそかな議員の逃げ道づくりに工夫の重点を置いた内容になっている。政策活動費の使途公開についても検討項目とされ、前向きな姿勢はうかがえない。

これではいくら岸田首相が「政治の信頼回復につなげる先頭に立つ」と声を張り上げても、有権者の心に届くはずがない。あらゆる選挙活動が“上滑り”になっていることを陣営スタッフがいちばん身に染みて感じていただろう。

それでも終盤にさしかかり、どこから出たのか、錦織候補が「追い上げている」との情報がメディアに散見されるようになると、岸田首相は矢も盾もたまらなくなったのか、急きょ予定を変更し、27日に島根入りするスケジュールを組んだ。


島根でもズレまくりだった岸田首相

なにしろこの選挙に政権の浮沈がかかっているのだ。自民党は、今回の3つの補選のうち、東京15区と長崎3区で候補者を出さず、不戦敗を選んだ。長崎県の場合、次期衆院選で議席が一つ減るということもある。東京15区は、小池都知事が擁立した候補者に相乗りしようとして候補者自身に拒否された。が、いずれにせよ基本的には同じ自民党の前職議員が不祥事で議員辞職し、勝てる見込みがないからだ。

せめて保守王国といわれてきた島根だけでもと担ぎ出したのが地元出身の財務官僚、錦織氏だった。

全日空1087便で米子空港に降り立った岸田首相は松江市内でさっそく街頭演説にのぞんだ。

自民党改革ののろしを、ここ島根から上げていただきたい

やはり、ズレている。党改革は総裁である岸田首相が本気にならないとできない。自分自身の中にのろしを上げるのが先決だ。それがないから、ろくな改革案が出てこないのだ。中身のない演説にがっかりした有権者は多かっただろう。

案の定、投票結果は、岸田首相にとって無残なものになった。亀井候補が8万2691票、錦織候補が5万7897票。立憲の候補に実に2万5000票近くもの差をつけられたのだ。

小選挙区制導入以来、細田博之氏が議席を独占してきた自民王国の牙城があっけなく崩れ落ちた瞬間だった。

「何をしでかすかわからない」岸田総理に党内で警戒感

国民が物価高騰と重税感にあえぐなか、裏金をフトコロに入れて税を逃れてきた自民党にしょせん勝ち目はないということか。

普通なら、首相自ら身を引くところである。岸田首相では選挙に勝てないという声が党内に満ち、総裁の座から引きずり下ろす動きが出ても一向に不思議ではない状況だ。しかし今のところ、政情は奇妙な安定を保っている。

裏金問題を背景に岸田首相自身が主導した「派閥解消」や「安倍派潰し」が想像以上に功を奏し、二階俊博元幹事長世耕弘成前参院幹事長が党内の権力争いから姿を消した。安倍派の有力議員たちは根こそぎ政治力を奪われた。

「何をしでかすかわからない」。岸田首相への警戒心がくすぶるなか、誰もが様子見を決め込んでいる。


麻生太郎の思惑、菅義偉の怨念と「岸田の未練」が激突する

岸田首相は、島根で1勝して、6月の国会会期末に衆議院解散・総選挙に持ち込もうと目論んでいた。

自分の手で解散をして、総選挙で自公過半数を得れば、9月の党総裁選で再選される道が開けるかもしれない。逆に、解散しないまま、いたずらに時が過ぎれば、総裁選への出馬すらできない可能性が高まる。

その補選1勝さえ叶わなかったにもかかわらず、岸田首相はまだ6月解散を諦めていない。だが、党内の大勢は、9月の総裁選で新しいトップにすげ替える方向に傾いている。

立憲民主党が衆院補選で3戦全勝したといっても、共産党が独自候補を立てなかったおかげが大きい。次期衆院選で野党が足並みをそろえる兆しはいまだ見られず、自民党の議員たちは、総裁の顔さえ替われば状況は一変すると高をくくっている。

だから、今のところは静かでも、岸田首相が総裁選の前に解散する素振りを見せれば、ただちにそれを阻止する動きが出てくるだろう。

たとえば、キングメーカー・麻生太郎副総裁

すでに岸田首相を見限っている。だが、従来方針通り茂木幹事長をポスト岸田に担ぎあげるのも、古臭い自民党のイメージがついてまわるだけに難しい。そこで、上川陽子外相に目をつけ、自分で引き際を決めて上川氏を後継者に選ぶよう首相にアドバイスしていると伝えられている。

非主流派、菅義偉前首相も黙ってはいないだろう。菅氏は2021年4月の衆参三つの補選・再選挙で全敗、地元・横浜市長選でも支援候補が敗れたことから、衆院解散を阻まれ、同年9月の総裁選への出馬を断念した。

無投票での総裁再選を狙っていた菅氏に対抗し、当時の二階幹事長を意識した党役員人事改革案をぶち上げて総裁選に名乗りを上げた岸田氏への怨念は菅氏の中で今もくすぶっているに違いない。


岸田首相に「自民党の常識」は通用するのか

野党が6月の会期末に内閣不信任案を提出するのは間違いない。岸田自民党との選挙戦を望む野党はさまざまな手を使って解散に追い込もうとするだろう。

内閣不信任案を口実に、国民に信を問うという大義名分を立てて、一か八かの解散を断行する。岸田首相の中で、まだ生きているにちがいないシナリオだ。

むろん、衆院補選の全敗で6月解散の目は無くなったと断言する識者が多い。常識的にはそうだろう。が、その常識は岸田首相にも通用するものかどうか。総理の座に居座り続けようとする執念は、これまでのどの宰相よりも上まわっているように感じられる。

岸田首相は4月30日、衆院3補欠選挙で全敗した責任について「党総裁として課せられた課題に取り組み、結果を出すことで果たしていかなければならない」と述べ、退陣論を牽制した。

責任を問われるたびに持ち出される虚しいセリフ。いつまでこのような“まやかし”の姿勢を取り続ける気なのだろうか。

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