一部の人が嗅ぎ分けられるという、アスパラを食べたときの尿の匂い。この匂いが子宮筋腫の手術をしたら分からなくなった、という質問が『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者である医学博士しんコロさんに届きました。この「人体の不思議」に対して、基礎から丁寧に回答してくれています。
5人に1人の「選ばれし人間」だったはずが…一体なぜ？
Question
「アスパラを食べると尿が独特の匂いになる」らしいですが、実際この匂いを嗅ぎ分けられる能力を持つのは5人に1人ぐらいと遺伝的に決まっているそうで、友人は昔からこの選ばれし人間だったそうです。匂いには人一倍敏感！ と自負していた私は、まったく感じた事がないので嗅ぎ分けられない星の下に生まれたようで、なんとなく悔しいです。しんコロさんはどうですか？
ところでこの友人が昨年、子宮筋腫の手術をしました。なんと手術をしたらアスパラを食べた後の尿の匂いを感じなくなったそうです。子宮を摘出したせいなのか、輸血をしたからなのか分からないが、とにかく子供の頃からずっと嗅ぎ分けてきた匂いを感じられなくなったと言っていました。人体って不思議だね～と話していたのですが、しんコロさんは何かこの不思議な話をご存知でしょうか。
しんコロさんの回答
アスパラを食べると尿が独特の匂いになるという話は、古くから言われていました。この匂いの原因は尿中に排泄されるメタンチオールという物質だと長い間信じられていました。ところが、その後の調べで匂いの正体はメタンチオールではなくてチオエステルだという説が出てきました。そして近年、23andMeというカリフォルニアのゲノムサイエンスの研究を行う企業が調べたところ、アスパラを食べた後にする尿の独特な匂いを嗅ぎ分けられるかが遺伝的にきまっているという発見をしました。OR2M7という嗅覚の受容体をコードする塩基配列がほんの少し違うだけで、この匂いが嗅ぎ分けられるかどうかに影響を及ぼすというのです。
質問者さんのおっしゃる通り、約20%の人がこの匂いを嗅ぎ分けられます。ちなみに、僕はそのうちの一人で、アスパラを食べるとものの数分後にでも尿の匂いの変化を感じます。食べるものと消化管と血管と腎臓とおしっこ、つながってるんだな～と改めて関心してしまう瞬間です。
さて、ご友人が子宮筋腫の手術をされてからアスパラ尿の匂いが感じられなくなったということですが、その原因は調べられていないのでわかりません。ただ、遺伝子が手術によって変化するということはないので、嗅覚受容体の形は昔のままだと思います。恐らく子宮を摘出したことや、ホルモン治療をした場合などに、ホルモンバランスの変化や副作用によって匂いの感じ方や感受性に変化があったのかもしれません。もしかしたら、アスパラ尿以外にも匂い方に変化が起きているかもしれません。人間の体は神秘に満ちていますね。
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『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』
著者：しんコロ
ねこブロガー／ダンスインストラクター／起業家／医学博士。免疫学の博士号（Ph.D.）をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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