今月9日、厚生労働省が「所得の低い世帯は、所得の高い世帯と比較して米やパンなどの穀類の摂取量が多く、野菜や肉類の摂取量が少ない」という調査結果を発表しました。これは、厚労省が2014年11月に実施した「国民健康・栄養調査」のなかで、世帯の所得別(200万円未満、200万円以上~600万円未満、600万円以上)によって生活習慣の状況を分析したもの。それぞれどのような傾向があるのでしょうか。改善のための策としては、何が考えられるのでしょうか。
年種別の傾向とは
・所得が 600万円以上の世帯の人に比べて、男性では 200万円未満と 200~600万円未満の世帯の人、
女性では 200万円未満の世帯の人で穀類の摂取量が多くなっている
・所得が 600万円以上の世帯の人に比べて、200万円未満と200~600万円未満の世帯では野菜・肉類の摂取量が少ない
・所得が600 万円以上の世帯の人に比べて、200 万円未満の世帯では肥満者の割合が高く、1日の歩数の平均値が少ない
この調査結果からは、世帯所得が600万円未満の中・低所得者層においては、600万円以上の高所得者層よりも食事が米やパンなどの主食に偏りがちになり、栄養のバランスに欠けているという可能性が指摘されています。また、このように所得によって栄養にも格差が生まれる理由について、厚労省では「価格よりも、時間の余裕がないことや手間が煩わしいことが原因」とみているとのことです。
「お金」「時間」の両方に余裕がない
こうした調査の結果について抱く想いは、人によって異なり、また複雑でしょう。しかし、「長時間働いても生活がラクにならない」というワーキングプアが問題となる昨今においては、食事に「お金も手間もかけられない」人が増加しているのも事実です。お金がなくても時間に余裕があれば、自炊をすることなどによって、日常的に栄養バランスの取れた食事をすることも可能ですが、「お金」と「時間」の両方がない状況に置かれた場合には、「手っ取り早くお腹を満たせる」ジャンクフードやコンビニ弁当、菓子パンなどの加工食品に頼らざるを得ない状況になってしまうことも多いといえます。
たとえば、昔ながらのご飯・味噌汁・焼き魚・納豆・漬物といった朝食にはさまざまな栄養素が含まれていますが、菓子パンだけで済ませる毎日が続く場合は、確かに体への影響は心配です。
また、外食についても、牛丼・ハンバーガー・うどんなどの低価格帯の外食チェーンは、いまや日本中どこへ行っても見られますが、こうした食事では肉類はともかく、十分な野菜が摂取できないことが共通しています。
アメリカの低所得層においては、加工食品に偏った食事などによる「肥満なのに栄養失調」という人々の増加が問題となっていますが、今回の調査結果を見ると、日本においてもアメリカの状況が他人事ではなくなりつつあるのがわかります。
軽減税率の対象は「生鮮食品と加工食品」だが…
今月12日には、自民・公明の両党が、再来年4月に消費税を10%に引き上げた際に導入予定の、「軽減税率」の適用対象を、「生鮮食品と加工食品すべて」とすることで合意したと報じられました。
しかし現案による軽減税率が導入されても、対象となる食品の消費税が8%に据え置かれるだけなので、すでにいま食費による家計の圧迫に悩んでいる世帯にとっては、この軽減税率だけでは大きな効果がないともいえます。
そのため、国民が健康的で栄養バランスの取れた食事を日常的に摂れるようにするためには、食品にかかる消費税をさらに引き下げるか、還付や補助といった別な制度が必要なのかもしれません。
また同時に、私たち自身も「なんのために食事をするのか」ということをもう一度考えてみる必要がありそうです。私たちのカラダは食べたものによって作られ、食事との関係抜きでは心身の健康は保てない、ということを理解しておかないと、いくら食品購入に関して優遇策がとられたとしても、有効に働かないことでしょう。
<参考>
(所得低いほど栄養バランスよい食事取れず NHKニュース)
(軽減税率対象「外食除く生鮮・加工食品」で合意 NHKニュース)
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