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ドローンによるテロを防げ。軍事アナリストが対策と課題を詳しく解説

2015年に大きな話題を呼んだ「首相官邸ドローン落下事件」。国家の中枢に対するテロ行為にもなりかねないこの事件後、日本政府はドローンを規制する方針を打ち出しました。軍事アナリストの小川和久さんは、メルマガ『NEWSを疑え!』の中で、現在のドローン対策とこれからの課題について詳しく説明、そして小川さん自身が提案した新たな対策方法も紹介しています。

ドローン対策、次なる課題

首相官邸ドローン落下事件(4月22日発見)から8か月、法律が制定されたのを受けて、ようやく警察のドローン対策が具体的な動きを見せ、まずは一歩前進と評価しているところです。

小型無人飛行機(ドローンを悪用したテロへの対策として、警視庁は全国で初めて捕獲用のドローンを導入し、12月中旬から運用を始めた。2016年3月までに機動隊の全10隊に1台ずつ配備する予定。

警備部によると、六つの回転翼を持つ捕獲用ドローンは、取り付けた縦3メートル、横2メートルの網で不審なドローンを空中で絡め取る。官邸や国会議事堂、皇居などの重要施設を警備する部隊にまず1台を配備する。12月10日に施行された改正航空法で定めた飛行禁止区域で、操縦者が警告に応じない場合に飛ばす

首相官邸の屋上でドローンが見つかった2015年4月の事件を受け、警視庁はドローンでドローンを捕獲する方法を検討。様々な実験を繰り返し、網で絡め取れば落下して通行人らに直撃する危険性も低いと判断した。機動隊員数十人が10月から操縦訓練を積んでいる。警備部幹部は「爆発物を積んだドローンによるテロの可能性もある。最悪の状態を想定しつつ国の機能を守りたい」と話す。

同月10日施行の改正航空法で、ドローンの飛行ルールが定められた。人口密度が1平方キロメートルあたり4千人以上などとする「人口集中地区」(東京23区や地方の主な都市が該当)の上空や、高さ150メートル以上の空域は、国土交通省の許可がなければ飛行できない。(小林太一)」(12月10日付け朝日新聞)

実を言えば、ドローン落下事件直後の5月1日、問題を所掌する省庁の担当課長さんに対してドローン対策をレクチャーするように求められ、いくつかの話をしました。他にも同じような提案をした人がいたのかもしれませんが、そのレクチャーの一部が実現しており、日本の政府機関にしては速い動きだと喜んでいるわけです。

このときは、おなじみ西恭之氏(静岡県立大学特任助教)のコラム2点(2月2日号「ホワイトハウス侵入の無人ヘリは中国製だったが…」と4月14日号「これが、韓国が進める小型無人機対策だ」)を提示し、2月2日号にある3つの対策を踏まえた取り組みを促しました。

3つの対策とは以下のもので、私たちのメルマガを読んだのかどうか知りませんが、日本の警備会社でも導入しているところがあるようです。

1)ドローンに使われる電波発信機を探知し、未承認の発信器であれば警報を出す、
2)未登録の機器による接続をブロックすることによって、無人機による無線ネットワークへの侵入・盗聴を防
3)電波を発信しないで、プログラムされた経路を飛んでいる無人機は、ローターやエンジンの音で探知する。

また、2002年3月26日、現在の首相官邸が完成する直前のセキュリティチェックのおりに指摘し、提案した対策の基本についても講じるよう求めました。

これは、監視カメラ、小型飛翔体用レーダー、センサー(振動、音響、熱)の設置と見張りです。

レクチャーを通じて、大きな課題として取り組むことが求められると私が強調したのは、発見したドローンを安全に捕獲する方法です。

いかに早く発見しても、生物化学兵器や核物質、爆発物を積んでいるかもしれません。

それを捕獲し、安全な状態にできなければ意味がありません。

私は、警察や自衛隊の小型ヘリを直ちに発進できるように国会周辺に配置し、漁網を広げた状態でぶら下げ、それでからめ取る提案をしました。

今回の大型ドローンに網をぶら下げるのと同じ発想です。

しかし課題は残っています。

私は、網で不審なドローンを捕獲すると同時に、ヘリから爆発物を瞬間的に冷凍する液体窒素、それに米国の核テロ部隊NESTが備えている瞬間凝固剤を吹きかけて無害化することを提案しましたが、今回の大型ドローンによる捕獲法では搭載能力から見て不可能なようです。

このような無害化が次なる段階であることはいうまでもありません。

政府の迅速な取り組みを期待しています。

image by: Photosebia / Shutterstock.com

 

NEWSを疑え!』より一部抜粋

著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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