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中国の言論統制を笑えない、日本の政治圧力と報道自由度ランキング

今、世界中で国への不満に起因するデモが多発しており、これらの抗議に対して各国政府による情報統制、言論弾圧が問題視されています。この政府・与党による報道への介入は、決して対岸の火事などではなく、日本でも起こり始めている問題です。 無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、世界の言論弾圧の事例を紹介。これからの時代を生きる私たちにとっての「報道の自由」について考える必要性を記しています。 

政治と報道の自由 

このところの世界の動きとしてはブラジルや中国でデモがあり、それぞれ国に対する不満が爆発している。一方でトルコではデモが起こっている中で政府が情報を統制しようという動きが出てきた。政府が不安定なためデモを抑えつけるだけでなく、それに影響を与えるマスコミをとにかく抑えようという動きも出てきた。 

当局による言論弾圧の潮流

特にトルコは大統領に批判的な最大部数を誇る日刊紙「ザマン」と通信社(ジハン通信社)を当局の管理下に置いた。両社とも大統領と対立するイスラム指導者の影響下にあると言われ、「これは当局による言論弾圧だ」と批判が高まり、その批判はヨーロッパにおいても同様に高まっている。トルコの国民はこれに激怒し、抗議行動が起り、国はそれに対して催涙ガスや放水で弾圧している。この新聞の系列紙(トゥデイズ・ザマン紙)では「トルコの報道の自由にとって恥ずべき日」と報じた。 

一報、中国でも言論統制が浮上し、次の5か年計画の中でメディアの方針を決定。習近平氏の「党・政府が管轄するメディアは宣伝の陣地である。党の一族だと思え」という発言からも、中国も国民の不満が高まっていて抑えようという動きが出ているように感じる。このところ中国ではデモは相当の覚悟がないと実施できないにも関わらず、国への不満が大きいようでデモも起り始めているのだが、メディアを抑え込めばそれらも抑制できると思っているのだろうか。 

日本の報道自由度は過去最低

報道の自由ということにおいて日本にとってあまり嬉しくないニュースが昨年秋に発表された。国境なき記者団が発表している 「報道の自由度ランキング(World Press Freedom Index)」。これは2002年から開始された調査で、世界180ヵ国と地域のメディアの独立性、多様性、透明性、法規制などの面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキング。要するにメディアの独立性、透明性、自由度がどれだけ高いのかという指標だ。 

日本は民主党政権時代の2010年11位だったが、昨年のランキングは過去最低の61位に下落。2010年は震災前で震災後原発の状況などが正しく伝わっていないと報道を巡る問題が、さまざま言われたことも大きな影響があるのだと思われる。 

政治の報道介入

最近では政治家が報道に介入するケースが目立ってきているということも言える。総務省が放送法に基づく番組内容への行政指導は1985年から30年間で36件のうち第一次安倍政権で7件。現安倍政権下でもNHK、テレビ朝日に対する事情聴取や行政指導の実施、在京6局に「公平中立」を求める文書を出すといったことが目立っている。 

放送法第4条は憲法21条を支えるための倫理規範 

高市総務大臣は「テレビ局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、罰則規定を適用しないとも言い切れない。」と発言。罰則規定とは、何を意味しているかというと、「電波停止を命ずることが出来る」と取られ、非常に問題となり、議論になった。 

高市大臣は「私は電波停止とは言っていない。」というが、罰則規定発言はそのようにとられている。放送法第4条では「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」が規定されているが、それを高市大臣は捉えて発言している。放送法第4条というのは憲法第21条の「表現の自由」を支えるための倫理規範として言われているのだが、それにも関わらず電波停止ととられるように話したことが批判されているのだ。 

これはテレビ局が政治的公平性を欠くことを繰り返した場合というが、繰り返すということの意味と内容が非常にあいまいである上に、この「政治的公平性を欠く」という定義は議論の余地があるところだ。高市大臣は「電波停止とは言っていない」というが、何度も同じ趣旨をねっとりといい続けているのをみると放送というものに対して圧力をかけているのではないかという感じを与えている。 

現在のメディアのありかたに憂慮

また、昔からよく記者が総理大臣、官房長官、閣僚らに個別に呼ばれる食事会は行なわれている。私の記者時代もあり、政権が何を考えているのかを知るために会うが、全てオフレコで会ったことさえ外には漏れないようになっていた。しかしながら、今は政府自らそれを公表することにより、他社の記者も呼んでほしいと雰囲気となりメディア側から「すり寄っていく」という感じになっている。 

そこでは主として政局、政策、外交の話をするが、時にメディア側へ「先日のこの報道はきつかったな」ということを言われ、その場で反論すればよいがそのまま社に持ち帰ってご注進するということも多いようだ。今後、そこをきちんとしないと大変な状況に陥るようにも思う。 

個人が発信し、監視する時代に

記者たちは権力におもねらず、そのために「報道の自由とは何か」を常に考えていなくてはならない。最近はネットが政府に反論していくということが、非常に目立っている。事例としては「保育園落ちた日本死ね!!!」 「一億総活躍社会じゃねーのかよ。」 (はてな匿名ダイアリー)というブログが話題となっている。 

安倍総理がそのブログに対し「実際にどうなのかということは、匿名である以上ですね、実際にそれは本当であるかどうかを、私は確かめようがない」と発言したことで、ネット社会では「私も落ちたんだ」などさまざまな同調する意見が出た。今や情報社会となり、今やだれもがスマホや携帯一つで証拠をつかめる、隠ぺいできない時代となってきた。さまざまな監視や抵抗をするということが非常に大事であり、介入を許さないような土壌を作ることができる。 

当初匿名の書き込みだったが、大きなうねりとなって政権を動かし一つの力になるということを表わした。現代は一人一人が情報を発信する時代であり、「報道の自由とは何か」ということを我々も考える必要がある。

(TBSラジオ「日本全国8時です」3月18日音源の要約です)

image by:Shutter stock

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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