YouTubeで話題を集め、爆発的な人気となったお笑いコンビ・オリエンタルラジオの新ネタ「PERFECT HUMAN」。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、このネタの「最後まで放送しなければならない」という作りに着目。商品を宣伝する時の注目度を上げるテクニックに応用可能だと説いています。
露出の工夫
今、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの『PERFECT HUMAN』という曲がものすごく流行っているのをご存知でしょうか?
PSYの『江南スタイル』のような曲で、オリラジ中田敦彦の実弟であるダンサーなどを含むRADIO FISHというユニットが踊り歌うのですが、テレ朝のミュージックステーションにも出演し、YouTubeの公式動画は視聴数2000万回を超えています。
●【公式】PERFECT HUMAN 歌詞ありver.【オリラジ】
私はこれは、一種の発明ではないかと思います。
それは別に、武勇伝ネタで一世を風靡したオリラジが凋落後にそれに代わる新たなリズムネタを作り出したとか、お笑いとダンスを融合させたとか、そういう観点で言っているわけではありません。
今までで同じようなタイプの発明の妙を感じたのは、レイザーラモンRGの「あるある」ネタです。
レイザーラモンRGの「あるある」ネタとは、様々な歌謡曲のメロディを歌いながら、「◯◯のあるある、早く言いたい~」と替え唄を繰り返し、延々繰り返して最後まで全くあるあるを言わない挙句、最後だけ一言だけで結構つまらないあるあるを言うネタで、大抵「早く言えや!」と周囲に突っ込まれています。
一見、すごくくだらないネタに見えるのですが、『サラダ記念日』で有名な歌人の俵万智も、「言葉の使い方がうまい共感するアーティスト」として、第3位に桑田佳祐、第2位に中島みゆきを挙げた上で第1位にレイザーラモンRGを挙げているほどです。
このネタは2010年頃からテレビに出始めましたが、かつて相方のレイザーラモンHGが「フォーーーッ!」というハードゲイキャラで人気を博していた時に全く露出のなかったRGのほうが、テレビに出ることが多くなり、完全に立場が逆転しています。
※お笑いはそんなに見ないという方は、今回の本文は何を言っているのか全く分からない、と思われるかもしれませんが、すみません。(でも流行にすごく疎い私が知っているぐらいなので、全国的には誰でも知っているほど有名だと思って下さい)
で、このレイザーラモンRGの「あるある」ネタや、オリラジの「PERFECT HUMAN」などに対して個人的に感じている、発明的な工夫とは何かというと、
「一秒でも長く露出するための工夫」
です。
タレントにとって、主戦場とも言えるテレビ画面は、少しでも長く映ることが仕事の結果と言えます。無名のうちは、テレビに出ること自体が目標ですが、そこからはいかに長く映るかです。
お笑い芸人の場合、すぐにテレビに出るためには、インパクトのある一発芸が一番早い。
HGの「フォーーッ!」やオリラジの「武勇伝」なども、テレビにとってそんな扱いやすさがあったのでしょう。
でも、そういう一発芸は人気の陰りもすごく早くて、これまで一発屋と呼ばれて消えていったタレントは、大半がそんな一発芸や短いリズムネタに頼っていたような場合が多かったのです。
レイザーラモンRGの「あるあるネタ」は、肝心の「あるある」自体は、最後のたった1秒ですが、そこの部分だけ切り取ってもさほど面白くなくて、やっぱりそこにたどり着くまでの無意味そうな「早く言えや!」という繰り返しの振りが面白いわけで、全体がパッケージ化されてあると言えます。
オリラジの「PERFECT HUMAN」も、テレビサイズにどこかを切り取っても意味が分からず、やっぱり全部の流れを放送しなければならないから、じっくりネタ見せができるような番組や、「Mステ」のような音楽番組で使われることになる。
どんどん短い情報のつぎはぎになっているテレビ界で一秒でも長く映って生き抜くための知恵の工夫である、と個人的にすごく感じるのです。
普通のビジネスにおいても、PRを考える際には「露出する」ということを強く考えますが、露出する戦略を考えるためには、そのように、どうパッケージ化をするかという観点が必要です。
例えば、写真1枚でPR素材を提供すると、確かにマスコミの記事やSNSのリツイートなどには簡単に使われますが、あまりに容易すぎて、「おすすめの5つのうちの1つ」などといったすごく局部的な使われ方になったりします。
だから、もっと長く大きく扱ってもらうためには、「一部だけ利用しても無意味」というような流れを持ったPR素材を作るのです。
例えば、奇抜なデザインを取り入れると、そのデザインだけしか取り上げらないことが多く、他社の奇抜なデザインの商品とセットになってしまいます。
しかし、他にも売り方も奇抜、商品名も奇抜、開発者も奇抜、といったようなストーリーを織り交ぜて、「それらの奇抜さを全部紹介したほうが圧倒的に面白い」という流れを作るのです。
そうすれば、その商品が単独で紹介されるようになる。
そういう、露出を少しでも広げるための工夫は、PRマーケティングの現場では基本的なことなのです。
このようなPR戦略の考え方があれば、「とにかく1誌でも多くマスコミにリリースを送ろう」とか「とにかく一人でも多くの人にチラシを配ろう」といった、非効率なアピールは必要がなくなります。
どうすれば、1分でも長く映したくなるのか、どうすれば、1文字でも多く紹介したくなるのか。
そういう、露出の幅を広げていくためのPR素材のパッケージ化を考えられるようになれば、会社や商品は大きなPR力を大きく持っていくようになります。
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
- 自分がテレビや動画を見ていて「1秒でも長く見ていたい」と思える時は、どんな時か。ノートに書いてみる。
- 自分が好きなものを人に紹介する時に、「1秒でも多く語りたくなる」と思える時はどんな時か。ノートに書く。
image by: Shutter stock
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