定時で帰りたい気持ちをグッとおさえて頑張った残業、せめてそのお代はしっかり払ってもらいたいものですよね。しかし、「タイムカードが無ければ残業代は払わなくていいのでは?」と考える経営者もいるようで…。無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、そんな会社vs.社員の裁判が紹介されています。
タイムカードが無ければ、残業代は払わなくても良いのか
私が子供の頃、不思議に思っていたことがあります。それは、何か不祥事を起こした政治家の「記憶にありません」というセリフです。たとえ何か悪いことをしてもこう言えば許されてしまうのかと子供心に疑問に思っていました。
「記憶にありません」
この考え方は、今も仕事の中で聞くことがあります。それは、「残業代」についてのご相談をいただくときです。
一般的には、タイムカードで勤怠を管理している会社の場合、その打刻の時間で、残業代を計算する必要があります。そこで、「タイムカードを無くしてしまい、時間をわからないようにしてしまえば、残業代を払わなくて済むのではないか」と考える経営者の人がいるのです。確かに、出勤退勤の時間がわからなければ、もし後日に残業代を請求されたとしてもその額を計算しようがありません。
では、実際にタイムカードを無くしてしまえば、それは可能なのか?
それに対する裁判があります。
ある冷暖房設備工事の会社で、社員が「残業代を払え!」と会社を訴えました。ところが、この会社ではタイムカードがありませんでした。そこで、この社員が残業の証拠として用意したのが「日記」でした(この社員自身が書いた日記です)。
この日記には、残業の時間数や仕事を含めた1日の行動が書いてあり、それを元に残業代を計算して会社に請求してきたのです。
「え? そんな自分で書いた日記なんてどうとでも書けるのでは」と感じた人もいるかも知れません。これは、この会社も同じことを考え「その時間は信憑性に欠ける」としてその社員に反論をしました。
では、裁判の結果はどうなったか?
会社が負けました。裁判所はその日記の時間を「信用し得る」として、認めたのです。
具体的には、
- 内容からみて原告の日記であることが明らか
- 1日の行動が仕事を含めて書いてある
- 各日の冒頭に時間外労働時間が記載されており、その時間は、日記本文の記載内容とおおむね整合する
というのが、その根拠です。
いかがでしょうか?
実は、この裁判の他にもタイムカード以外のもので残業代を認めた事例があります。その際に証拠とされたのが
- パソコンのログ記録
- IDカード等の記録
などです。このように、「タイムカードが無い」ことで時間数がわからなくても、それ以外の方法で時間の計算はされてしまうのです。
残業代を減らすには「時間数をわからないようにしてしまう」という裏ワザ(?)ではなく、真に労働時間を減らすしかありません。
また、長時間労働に対するまわりの見方は厳しくなる一方です(これは、今後も続くでしょう)。今こそ、本気で残業削減に取り組むときではないでしょうか。
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『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』
【経営者、人事担当者、労務担当者は必見!】
企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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