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医学博士が教える、TVの「当社比較」を鵜呑みにしない方がいい理由

テレビのCMなどで「当社比較」や「自社による調査」なんて言葉をよく見かけますよね? なんとなく「今までより良いんだろうな」と思ってしまう方も多いのではないでしょうか?  しかし、医学博士・しんコロさんは自身のメルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の中で、こうした一見「科学」に見えるものの中には「かなり曖昧」なものがあると警鐘を鳴らしています。

本当の科学とは、第三者の審査なくして成り立たない

僕は最近どうしているかというと、近々国際誌に投稿する論文の仕上げをしています。原稿を書き上げて、トビちゃんにも目を通してもらって、他大学の共同研究者にも目を通してもらったら、ジャーナルに投稿します。

そこからその原稿は査読(その道の専門家による審査)に回され、数週間したら批評が返ってきます。科学論文もピンキリですが、よっぽど「キリ」なジャーナルでもない限りは一発OK というのはまずありません。査読をしているのも同業者の科学者達ですから、あーでもない、こーでもない、と必ず批評をしてくるのです。そしてその批評に対して根拠を持って論破をするか、もしくは追加実験をして審査員達の疑問に答えて、やっと論文は掲載許可になります。

本当の科学」というのはこうして学説やデータが生まれた時に、必ず第三者の審査が入ります。こうして査読や審査が入ることで、実験が正しく行われているか、学説をサポートするだけのデータが揃っているか、そして場合によってはインチキはないかなどが厳しく評価されます。

どの世界も同じですが、科学者の中にも悪い人たちはいて、データや論文を捏造したり剽窃したりする人たちもいます。その捏造が巧みな場合、査読の時点ではそれが100%捏造だということが明るみに出ず、他の科学者がその学説に基いて追加実験をしたけれども再現性がなかったという形で明るみに出ることがあります。いずれにしても、インチキをしたらいつか必ずバレるものだし、命を助けるための科学をやっていてインチキをするのはとってもタチが悪いです。

話はそれましたが、つまり「本当の科学」はこうして第三者の審査というプロセスをまず通り、それから科学界から追加実験をされることで検証されてゆきます。どんなに有名な科学者先生が出した論文でも、「~先生の論文なら間違いないだろう」ということは科学の世界ではあり得ず、かならず審査が入ります。

日本のテレビなどで健康問題などを取り上げるときに、学説を唱える医者や学者が登場することがありますが、それらの実験やデータが審査を受けておらず、その医者や学者の「想定」や「仮説」や「思い込み」であることが多く見受けられます。企業が行う研究にしても「当社比較」や「自社による調査」などが多く、製品の宣伝のために「科学的にプレゼンする」というマネフ色が強いのも事実です。

例えば身近な例でいうと、ねこの「療法食」というものが本当に効果があるかどうか、査読をされるようなしっかりした研究データとして発表されているものはほとんどありません。効果があるかどうかも分からないけれども、大手企業が「自社調査」といってしまうと、多くの獣医がそれを鵜呑みにしてしまうというのが実情なのです。そして、ペットオーナーは獣医が言うのならば、それを信じるしかありません。そこに何の疑いも生じないわけです。

しおちゃんの膀胱炎の時も、「療法食にした方が良い」と一人の獣医が言いましたが、それに対して僕が「その根拠は?」と質問してみました。すると「そういう研究がある」と言うので、「どの研究?」と聞くと、獣医は答えられませんでした。その獣医はそんな研究が実際にあるかどうかも知らず、ましてや論文を読んだことさえないのです。事実、そんな研究は実際に査読された論文としてはほとんど出ていなくて、その獣医は企業の受け売りで「そんな研究がある」と曖昧なことを言っていたのでしょう。

腎疾患の末期時など、療法食が効果を出す可能性のある特定の場面というのは実際にあるにはあるのですが、泌尿器系の問題が出たからといって即療法食というのは間違いです。なぜなら、そうすることで、また別の健康リスクを生じさせる可能性があるからです。現段階のしおちゃんの状態では、療法食にすべき理由がないのにもかかわらず、その獣医はそこまでは考えずに曖昧なアドバイスをしていたのです。すなわち、科学的なアプローチではなかったのです。

このように、一見「科学」と見えるものの中には「実はかなり曖昧」なものがたくさんあります。ですから、テレビでやっているからといってその情報を鵜呑みにせず、自分で調べたり、セコンドオピニオンを求めることは大切なことです。その一方で、「本当の科学」ももちろん存在するし、真面目に正直に研究をしている人たちも沢山います。

 image by: Shutterstock

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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