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【社労士に質問】一度は出した「退職届」を撤回することはできますか?

会社に勢いよく「退職届」を出したものの、家族のこと、この先のお金のこと…、冷静に考えてみて、やっぱりもう少しこの会社で頑張ってみよう! こんな時、退職を「撤回」することはできるのでしょうか? また、会社側はそれを拒否することができるのでしょうか?今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、この難しい問題を取り上げています。

「退職します」を撤回することはできるのか

私は、基本的に優柔不断です。仕事では、時間的な制約や判断の基準や根拠が明確な場合も多いのでそのようなことはあまりありませんが、困るのは「ランチ」です。ランチは、選ぶ基準や正解がありません。

そして、さらに困ったことに(?)私の事務所のある御茶ノ水付近はランチのお店が非常に多い地域でもあります。それでも、なんとかしてお店を選ぶわけなのですが、さらにさらに困ることがあります。それは、オーダーしたあとに「あ、別のメニューにしておけば良かったかも」と他のメニューが気になってしまう場合です。この場合は、お店に伝えて変更してもらうこともあれば、そのまま食べることもあります。

ただ、この「変更」の場合に困るのは私よりむしろ、お店側でしょう。オーダーされたものを作る前であれば、変更されても問題はないのでしょうが、作り始めていたらそうもいきません。

これは、社員の退職にも同じことが言えます。

社員が退職ということになれば、通常はその補充のために別の社員を採用します。別の社員を採用してしまったあとに、「退職を撤回したい」と言われたら、会社としては困ってしまいますよね。

では、一度申し出た退職は撤回することができるのでしょうか?

それについて裁判があります。

ある鉄工業の会社で、社内のトラブルに関連して社員が退職届を提出してきました。それをその場で、人事部長が受け取ったのですがなんとその次の日にその社員が「退職を取り消したい」と言ってきたのです。それを会社が拒否したことで裁判になりました。

では、その結果どうなったか?

会社が勝ちました。ポイントは、その会社での人事の最高責任者である人事部長が、退職届を受け取っていることにあります。そこを裁判所は「会社が退職を承諾したことになり退職は有効である」と、認めたのです。

通常、退職の撤回は、会社にとって必ずしも問題になるわけではありません。むしろ、引継ぎや新規採用をしなくて済むので、会社にとってはありがたい場合もあります。

ただ、実務的には問題になるケースが2つあります。

まず、先ほどお話したように、すでに後任を採用してしまっている場合です。社員が退職しなくなったからといってその後任の人に辞めてもらうわけにもいきません。そのままでは、人員がダブってしまいます。

もう1つは、辞めてもらいたい社員が退職届を提出した場合です。会社としては、解雇は難しくても本人が自ら退職届を提出するのであれば何の問題もなく辞めてもらうことができます。この退職を撤回されたら、会社はまたその社員をどうするか考えなくてはなりません。

これらのケースのようなことが無いように退職を確実にしておく必要があります。では、どうしたら良いか?

まずは、きちんと書面を提出してもらうことです。ある別の裁判では、引継ぎ作業やその当の社員が転職活動までしていながら書類が提出されていなかったことから退職として認められませんでした。

そして、書類を提出してもらったら、それをしかるべき人経営者人事部長がしっかりと受け取るということです。人事の権限がない社員が受け取っても「会社が退職を承諾した」とは認められません(ということはつまり、退職を撤回できてしまうわけです)。

よくあるのが、現場の上長が受け取ってそれをそのまま机にいれっぱなしにしておいた、などのケースです。

退職届を受け取ったら速やかに経営者なり人事部なりに提出してもらうことを徹底しましょう。これらを徹底するだけで大きなトラブルを未然に防ぐことができるのです。

image by: Shutterstock

 

「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理
【経営者、人事担当者、労務担当者は必見!】
企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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