MAG2 NEWS MENU

大麻に命を救われた末期がん患者は有罪なのか。現役弁護士に聞く

先日のMAG2NEWSでも取り上げた、末期がんの男性が治療のため自ら栽培した大麻を使用し逮捕された事件。嗜好用ではなく、今回のように治療目的で大麻を使用することも「大麻取締法」という法律が廃止や改正されない限り、認められることはないのかもしれません。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、この大麻取締法について、そして今回の件を含む医療大麻について、法律のプロである現役弁護士が見解を述べています。

治療のための大麻は許されないか?

大麻を所持したとして、大麻取締法違反の罪で逮捕・起訴された男性の裁判が注目を集めています。大麻取締法は、免許を受けた大麻取扱者以外は、大麻を所持し、栽培し、研究のために使用すること等を禁止しています(大麻取締法3条、4条等)。

男性は、末期がんにかかっており、すべての医師から見放された中、大麻ががんに効果がある可能性を知って、治療のために自ら栽培して使用したところ症状が劇的に改善したそうです。

裁判の中で男性は、自身の末期がんの治療に使用する目的(医療目的)で所持しており、大麻は疾病に対して有効であり、モルヒネなどに比べてもその有害性は非常に小さいにもかかわらず、大麻取締法3条・4条は医療目的での所持及び使用を禁止する点において憲法の定める幸福追求権、生存権等に反し無効であり、無効な法律によって処罰されることは許されず、したがって無罪である、という主張をしています。

大麻には、鎮痛作用、催眠作用、食欲増進作用、抗癌作用などがあるとされていて、アメリカでは慢性痛患者の約9%が自己治療で大麻を使用しているという報告もあります。さらに、HIV、アルツハイマー、うつ病などにも効果があるとされているようです。

大麻が医療用として注目される理由は、副作用が少ないこと、法の規制の問題を除けば製造が容易で安価に入手できること、大麻には多くの品種が存在しているため患者の個人差や病状の差に適合した品種を見つけられる可能性があること、などが挙げられています。

もちろんよい面ばかりではなく、悪い面も見なければいけませんが、大麻の副作用としては、目の充血や、頻脈、喉の渇き、長期的な使用の場合は精子の濃度が低くなるといった点があるようですが、医療使用では深刻な副作用は起きないともいわれています。依存性もそれほど高くなく、耐性もカフェイン程度であるとのデータもあり、アルコールやタバコよりも中毒性がないともいわれています。

アメリカでは医療大麻を認めている州は2014年の時点で23州ありますが、合衆国連邦法では医療大麻は認められていません。カナダは対象を限定したうえで、医療大麻のライセンスを行っています。ドイツは対象を限定したうえで、使用を許可された患者を対象に販売を認めています。オーストラリアは、2016年2月に法改正を行い医療大麻を認めています。

一部医療大麻を認めるという国が増えている中で、日本では上述の大麻取締法4条により、大麻から製造された医薬品の施用を認めていません。しかし、このような世界の情勢を受けて、医療用については認めるべきではないかという意見も多くなってきています。

病気の症状の緩和のために所持および使用していた今回のケースにおいて、有罪というのは厳しすぎるように思われます。大麻取締法3条や4条が違憲であるという結論が出るのは難しいかもしれませんが、法令自体は合憲であっても、今回のケースにおいては、男性の非常に苦しい事情等を考慮したうえで大麻取締法4条が適用されるのは違憲、という結論が出されてもよいようにも思われます。今後の判決が大変気になるところです。

image by: Shutterstock

 

知らなきゃ損する面白法律講座
わかりやすくて役に立つ弁護士監修の法律講座を無料で配信中。誌上では無料で法律相談も受け付けられます。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け