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とにかく叩け。スズキ「燃費偽装」報道にある違和感の正体

連日マスコミを賑わしている自動車メーカーによる燃費不正問題。三菱に続き、スズキにもその疑惑が及んでいます。しかし、無料メルマガ『週刊くるまーと ~賢く選んで、楽しく運転~』で、著者のすぎもとたかよしさんは、加熱する燃費不正への報道のスタンスと、それを受けてのユーザーの反応に疑問を呈しています。白黒をつけることに終止した「短絡的な発想」と一刀両断、もっと賢くなるべきと述べています。

スズキ燃費不正問題の報道とユーザーの反応で思うこと

これは多分、メディアとユーザーの見識が試されているんだろうなと思うんである。

三菱の社長辞任に合わせるように出てきたスズキの偽装話は、TVやら新聞にとっては恰好のニュースネタとなっているみたいだ。まあ、会長自らの登場で絵図等もいいんだろうし。

けれども、たとえばTVのニュース番組を観ていて一様に感じられるのは、ほとんど中身のない報道なんである。とりわけスズキについては「三菱に次いでこっちも偽装」の連呼で、何がどういけないのかがほとんど伝わってこない。

●(参考)三菱自ほど騒がないスズキの燃費不正 2社のどこが違うのか?

記者クラブの横並び情報に加え、最近の「何でも白黒で語るネット特有の風潮が相まって、まずまず単純な不正合唱に拍車が掛かっている。TV画面下に流れるツイッターの「スズキを信じていたのに」なんてコメントなど、結構な違和感があるし。

いや、白黒を付けること自体がいけないわけじゃない。その前に、白黒の間にある濃淡のグレーもしっかり見てから決めましょうよ、と。

たとえば、スズキのテストコースに海風の影響があるとして、まずそれは何の数値を得るためで、そこにどんなバラつきがあったのか。それに対し、スズキはどういう机上計算で対応し、それは実走行とかけ離れているのかいないのか

そして、データは試験プログラムにどう組み込まれ、それによる国のJC08モードとはどんな走行試験なのか。さらに、そのデータはそもそもなぜメーカーが用意しなくてはいけないのか。不正はないという他のメーカーはどうやって計測しているのか、などなど。

スズキは「実際の数値に差違はない」とするけれど、それはこうした客観事実を重ねれば自ずと真偽が見えて来るだろう。もちろん、同時に実燃費とかけ離れたカタログ燃費の仕組みが分かれば、エコカー減税の是非にも話が及ぶかもしれないし、さらには新しい国際共通基準の話題だって待っている。

不正は不正なんだからとにかくダメというのは、いまどきの正論に思えて、実は単なる思考停止とも言える。白黒は、結構な幅のグレー部分を見聞きしてから決めたって何ら遅くはないじゃないか。

逆に、ここで三菱同様にスズキを斬って捨てるのは簡単だけど、それで話が終わってしまえば次に続かないんじゃないのか。このニュース自体を忘れてしまえばまた次の偽装が待っているわけで、その点でもメディアの責務は小さくない。

もちろん自動車メディアは、本来であれば先頭を切って取り組むべき事項の筈。せっかく自動車ジャーナリスト協会なんて団体があるんだから、評論家諸氏は組織として影響力のあるコメントだって可能なんである。少なくとも、この期に及んで「頑張れ三菱!」などと言ってる場合じゃないし。

で、同時にユーザーもまた賢くならなくちゃいけないと思う。メディアからのソースが絶対的に足りない状況ではあるけれど、その触りだけを見て「スズキ終わった」「裏切られた」ではあまりに短絡的だ。ディーゼルは売ってないのにVWの販売が激減するような、事実より雰囲気に流される風潮は相変わらず残念なんである。

クルマを少しでも知っている人は「カタログ燃費なんか最初から信じてないよ」と言う。じゃあ、なぜメーカーはこうした偽装をしてまでコンマ単位の数字にこだわるのか

「新しいプリウスはリッター40キロに届くのか!?」などと燃費競争を煽るメディア、リッター30キロより30.5キロの方が「いいクルマ」とするユーザー。実は世間の大半を占めるのはこっち側であって、メーカーはそれをすっかり見抜いているからなのかもしれない。

image by:  Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com

 

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