MAG2 NEWS MENU

プロ野球は「2軍選手」をどう扱ってるのか?知られざる「昇格」事情

交流戦も終わり、パ・リーグはホークスの独走状態、セ・リーグは近年稀に見る混戦具合のプロ野球ですが、熱い戦いが続いているのは1軍の球場だけではないようです。メルマガ『プロ野球イースタンリーグ情報メールマガジン』では、12球団の知られざる2軍事情を解説。かつては、「育成」と「調整」の場だった2軍ですが、近年その役割が変わってきているそうです。これを読むと、一軍の試合に出ている選手たちが、いかに選ばれし選手なのかを改めて感じさせてくれます。

複雑化する「2軍」の位置づけ…育成と調整だけでない様々な人間ドラマ

「育成」と「調整」の2つのベクトルがテーマとなるプロ野球の2軍だが、現在では、それだけでは語り尽くせない「2軍と2軍選手のあり方」が存在している。

「育成」ベイスターズ・柿田裕太…ドラフト1位選手の3年目の決意

10日付けの日刊スポーツに、ベイスターズ3年目の柿田裕太投手を特集する記事が出ていた。

柿田は、松本工業高校から日本生命を経て、ドラフト1位で2014年シーズンからベイスターズでプレーしている右腕。

14年度は13試合に登板し7勝5敗、防御率3.93。15年度は18試合で5勝3敗1セーブ、防御率3.88。この年は99.2回を投げて、ベイスターズでは唯一、イースタンリーグの規定投球回数をクリアしている。

今季は10日までに5試合に登板して3勝1敗、防御率は4.76。

10日に平塚球場のファイターズ戦で先発した柿田は、6回を投げて1失点で勝利投手となった。ただし内容は「良い」とも「悪い」とも判断のつかないものとなった。

まず1回表、先頭打者の近藤健介にストレートの四球を出すと、次の松本剛にもボール2。3球目に松本剛が振ってきたところからストライクが入り、この回は得点圏に走者を進められながらも無失点で切り抜けた。

続く2回には、チームメイトのエラーから広がった満塁のピンチで、押し出し四球を出した。そうかと思えば、3回以降はスイスイ投げる。

昨年に見た時も、立ち上がりに苦しんでいる印象があった。それでも長い回を投げれば、それなりの失点でゲームを作る。

3シーズンで防御率が3点台後半から4点台にあるのは、立ち上がりの不安からだろうか。

さきほどのスポーツ紙によると柿田は「今年1軍に呼ばれなかったら最後と思って投げている。結果を出し続ければ1軍に呼ばれると信じている」というようなコメントを残している。

8月で24歳になる3年目のドラフト1位右腕は、育成と調整の間で1軍昇格を見据えて登板を続ける。

「調整」ライオンズ・岸孝之…故障から復帰してまずはイースタン公式戦

ライオンズのエースである岸孝之は、今季の年俸が2億5000万円プラス出来高払いと推定されている。

10年目の今季も開幕当初から先発ローテーションを任されていたが、故障があり、登録を抹消されていた。その岸が1軍復帰を期して選んだマウンドは、イースタンリーグの公式戦。

6月1日の西武ドームでのベイスターズ戦で先発すると、まずは3イニングを投げパーフェクト投球、6奪三振。中6日で先発した西武第二球場でのイーグルス戦では5.2回を投げて1失点で、勝利投手になっている。

イースタンリーグの、300人にも満たない観衆の中で、実戦でのコンディションをととのえている岸孝之。「調整」の最たる例だろう。

「復活」スワローズ・由規…5年ぶりの1軍登板を目指して

仙台育英高校からドラフト1位でスワローズに入団し、08年からプレーしている由規。2010年には12勝を挙げ、1軍通算では26勝している右腕。1軍での最後の登板は、11年の9月。

右肩の違和感がとれず、ファームでも出場できないまま時は過ぎ、ようやくマウンドに復帰したのは14年6月11日、ヤクルト戸田球場でのイースタンリーグ・チャレンジマッチ、フューチャーズ戦。じつに792日ぶりの登板となった。

その後も違和感を拭えずに定期的な登板ができず、ついに今季は育成選手契約となり、背番号121をつけて、復活にかける日々を送る。

今季はここまで8試合、33イニングを投げて2勝2敗、防御率4.36。例年よりも順調に登板数を重ねているが、支配下選手登録期限は7月末。

「育成」や「調整」というよりは、育成契約になったドラ1投手の「復活」をかけた戦いが、そこにはある。

「2軍に浮上」ジャイアンツ・増田大輝 3軍から2軍に昇格し初ヒット

近年のファームのあり方で大きく変わったのが、3軍の創設だ。

兼ねてから、故障者選手の調整の場として3軍を設置しているチームもあるが、育成選手中心に3軍チームを結成して、独立リーグのチームや社会人チームなどと積極的に試合を組んでいるのが、ホークスである。

ホークスは1軍が2年連続日本一、2軍が4年連続ウエスタンリーグ優勝と、これだけでも選手が成長しているのがわかるが、さらに3軍を設置して選手に実戦での経験を積ませることで、上を目指せる環境を作った。

数年前に「第二の2軍」を創設しながらも中途半端なとりくみに終わったジャイアンツは、今季から育成選手を大量に獲得し、正式に3軍制度を発足した。3軍は独立リーグや社会人チームと積極的に試合を組んでいるだけでなく、6月後半には台湾遠征もおこなう。

3軍の試合で結果を出し続け「2軍に昇格」したのが、ジャイアンツの今季の育成ドラフト1位である増田大輝だ。徳島出身で、四国の独立リーグで徳島のチームに所属していた、俊足と堅実な守備が売りの22歳。背番号015、右投げ右打ち。

増田は、6月2日におこなわれた熊谷球場での独立リーグ・武蔵ヒートベアーズとのナイター戦で3軍選手としてスタメン出場した。

翌3日、ジャイアンツ球場で開催されたデーゲームの2軍イースタンリーグ公式戦・vsイーグルス戦でベンチ入りのチャンスをつかんだ。増田は試合途中に代走として起用され、そのままショートの守備についた。そして回ってきた打撃機会で、2軍初ヒットを記録したのだ。

増田にとって、最大の目標は1軍の舞台で活躍することである。

しかし、育成枠の3軍選手として、1軍には、はるか遠い場所での戦いを続けていた。それでも、地道に結果を出し続けていれば、チャンスは訪れる。

まずは、2軍に昇格した試合でヒットを放ち、アピールした。次は2軍の厳しいレギュラー争いに割って入れるかどうか。その先に、1軍への道が見えてくる。結果を出さなければ、また3軍が待っている。

ジャイアンツ2軍は、1軍と3軍の間にあるサバイバルの場所に変貌しつつある。

プロ野球2軍の基本は「育成」と「調整」の機関であるが、選手によっては「復活」を期す場であったり、まず「昇格」を目指される場であったりもする。

今季から1チーム最大144試合の公式戦が組まれたイースタンリーグ。さらにイースタンリーグ・チャレンジマッチや独立リーグ・社会人・大学チームとの試合がおこなわれる。ファームの選手には、こなすだけでも大変な試合数かもしれない。

過酷な戦いを勝ち抜いた者だけが、1軍の晴れ舞台をつかむことができるのだ。

image by: Shutterstock

 

『プロ野球イースタンリーグ情報メールマガジン』
プロ野球7球団(北海道日本ハム、湘南、読売、東京ヤクルト、千葉ロッテ、埼玉西武、東北楽天)の2軍チームで争われるペナントレース【イースタンリーグ】の情報やコラムなどを送信します。
≪登録はこちら≫

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け