日本でノキアといえば携帯電話のブランドというイメージが強いと思いますが、そんなノキアが健康市場へ新たな挑戦を仕掛け始めたそうです。通信インフラやソフトウェア開発が中心だった”テック”なノキアがヘルスガジェットメーカーの「Withings」を買収したその思惑に迫ります。
仏ヘルス&フィットネスガジェットメーカー「Withings」を約211億円で買収
Techcrunchの記事によると、今年の4月にノキアは、ヘルス&フィットネスのガジェットメーカーであるフランス「Withings」を1.7億ユーロ(約211億円)で買収すると発表したばかりでした。
実際には予定よりも早いスケジュールで買収が完了したとのこと。
買収に伴って、Withingsの創設者メンバーでありCEOでもあるCedric Hutchings氏は、ノキアの新規部署である「デジタルヘルスビジネス」にトップとして配属され、R&DとIPライセンスの担当部門 であるノキアテクノロジーズの社長、Ramzi Haidamus氏を上司に持つという組織体制で進めています。
この契約を議論するにあたり、ノキアはこのノキア・テクノロジーの専門分野「健康予防と患者のケア」に警鐘をならしました。
そのため、Withingsのヘルスガジェットとデジタルヘルスのプラットフォームビジネスの合併をしようという話の運びになったようです。
さてこのWithings、日本ではあまり馴染みがない会社ですが、どのようなビジネスをしているのか具体的に見てみましょう。
Withingsの画期的なフィットネスガジェット
Withingsと言えば、Wi-Fi体重計「Smart Body Analyzer」が有名です。
image by: Withings
体重を測るたびにWi-FiやBluetoothで専用のアプリへ同期されるという優れものです。
この体重計以外にも、続々と新しいヘルスガジェットが登場しています。
代表的なフィットネス製品のひとつに「Withings Go」があります。
これを身につけるだけで、歩数、睡眠状態、走行や水泳の活動量をトラックすることができるというもの。
image by: Withings
Kindleのような電子ペーパーを採用することでバッテリーの寿命は驚異の8ヶ月という話題の製品です。
こちら残念ながら日本ではまだ未発売とのこと。
また、「Activité」というフィットネス活動を記録するスイス製のアナログ腕時計のガジェットという一風変わった看板商品もウリのよう。
四六時中身につけ、アプリと同期させることで日々の睡眠のモニタリングをしたり、運動量を正確に記録をつけることができます。
またワイヤレスの血圧測定やWifiに接続しサーモメーターの利用もできるなど、フィットネス製品として、かなりハイテクで画期的な開発を進めてきたことがこれらの製品からもわかります。
ノキアに新風を!製品の幅を拡大するエキサイティングな健康ビジネスへの挑戦
このような画期的な製品を世に生み出してきたWithingsとの合併に対して、Haidamus氏は自信ありげに「またとない大きなチャンスだ」と述べます。
これまでノキアの主要なビジネスといえば、ネットワーキングとバックホールテクノロジーだったため、「デジタルな健康ビジネス」という新たな挑戦は同社にとって、そのブランド性、デジタルメディアの活用や特許ライセンスなどを含め、次の確固たるビジネスとなり得ると考えているのだとか。
「これはノキアテクノロジーズの歴史に残るエキサイティングなチャプターの始まりなんだよ。このようなとても強力なデジタルヘルスの製品のシリーズを含めて、我々の製品の幅を拡大することができるからね」(Haidamus氏)
つまり、携帯電話や通信会社としてだけのノキアのブランドだけではなく、需要が伸び将来性のある健康市場に舵を取り始めたということでしょうか。
この合併だけに加えて、ノキアブランドのスマートフォンやタブレットの開発にも着手し始めているとのことです。
ノキアがフィンランドの一流企業の枠に留まることなく、新規ビジネスに対するさらなる挑戦を仕掛けていることがわかりますね。
買収後初の製品はこれだ! 脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ?改革的な「スマート」体重計
さてWithings買収後、実際にノキアが開発した製品はどのようなものがあるのでしょうか。
PhoneArenaの記事によると、同社は合併後サンフランシスコに新しいオフィスを構え、「Body Cardio」という心臓血管の状態をもチェックすることのできる体重計を早速開発したと報じています。
前述したWithingsの既存製品であるフィットネス・トラッキング、ヘルスモニタリングといった種類に加えて、新たな「スケール」という製品開発をしたことにより、より「健康ガジェット」の範囲を網羅しているといったところでしょうか。
さて気になる「Body Cardio」の機能ですが、体重を計ることはもちろん、「スマート」な機能として、BMI、体内の水分量、骨の構造を計ることができます。
Body Cardioの一歩先行く機能は心拍数測定のほかに、Pulse Wave Velovity(PWV)という「脈波伝播速度」を足の裏から測定することができるとのこと。
脈波伝播速度とは心臓から出て動脈を伝わっていく脈のスピードを測定する検査であり、血管の硬さをチェックすることができるのです。
このことによって脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化の進展を計測し、防ぐことができます。
もちろん手持ちのスマートフォンのアプリと同期し、記録をとることが可能です。
深刻でメジャーな病気なだけに、日次で測定するということは地道で地味な作業かもしれませんが、「未病」に向けて自分の体内の様々な数値を知るのには一役買いそうな製品となりそうです。
現在日本での扱いはまだ未定とのことですが、お値段は$179.95(約17,995円)とのことで、割とお手頃価格。
ヘルシンキ大学との画期的なコラボにも意欲 脳卒中患者への貢献となるか
また、ノキアテクノロジーズはヘルシンキ大学病院、ヘルシンキ大学とも脳卒中の回復プログラムについて共同開発を進めていると、MedCityNewsの記事で報じられています。
同社の話によると、ヘルシンキ大学の医学部と共同で、外来患者のケアと臨床試験が目的のコラボレーションをするとのこと。
さらに、遠隔地から患者を監視することが可能なソリューションを発売する予定とのことです。
また、同社のCEOであるHutchings氏は、ヘルシンキ大学病院のパイロットプログラム(実験的な試験)はノキアテクノロジーズの有効性を評価するだろうと述べています。
同紙のメールでの質問にHutchings氏はこう答えています。
「ノキアの製品とサービスをHUS(ヘルシンキ大学病院)プロジェクトの期間に紹介したいと考えているんだ」
本コラボレーションの意図としては、HUSの臨床医と患者からの意見や情報を獲得し、遠隔地からの監視ソリューションの質と有効性を改善するためだそうです。
また、神経学の面においても本ソリューションの実現性を発展、または査定することに役立つと加えました。
脳卒中患者のケアに対する強い代表商品となりそうです。
また、国内だけに留まらず、今後はアメリカを含めグローバルにこの臨床試験を実施していく予定だそうです。
フィンランドの一流企業と一流大学のケミストリーによって、今後の医療テクノロジーに「デジタル」の側面を加え、さらなる進展を見せてくれることを期待したいですね。
image by: Joe Ravi / Shutterstock.com
source by: Techcrunch, PhoneArena, Withings Go, Activité, Youtube, MedCityNews
文 / 臼井史佳