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松下幸之助と本田宗一郎は、なぜ「従業員のトイレ」にこだわったのか

一時期世間でも「そうじ術」や「断捨離」がブームになりましたが、誰もが知るカリスマ経営者たちははるか昔に「3S(整理・整頓・清掃)」の重要性に気付き、それを実践していたようです。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』に、一見経営とは関係なさそうな「3S」がいかに重要かについて記されています。

「戦略」に先立つもの

「戦略」と言う前に「経営」が整っていなければ、基礎体力がないのにフルマラソンに参加しようとするようなものです。強い経営を行うためには、まず「を整えることが出発点になります。松下幸之助さんが、創業して10年ほど経った頃から「松下電器は物をつくる前に人をつくる会社である」と言い続けたのがこれにあたります。

同社の大正12年の暮れ。工場では従業員一同が大掃除を行っていました。ところが、従業員の便所だけがなぜか汚れたままだったのです。幸之助さんは、ほうきを手に取りバケツで水を流しながら踏み板をゴシゴシこすり「これではいかん。常識的なことや礼儀作法がわからないままでは。精神の持ち方を教えるのも私の責任だ」と思ったのです。

トイレの話ついでに、ホンダが昭和27年に東京に進出し白子工場の修復をしたとき最初に本田さんが言い出したのが「水洗トイレの設置でした。「トイレというものは、生活の中で、すこぶる重要な部分を占めている。必要欠くべからざるものと思う」との考えによるものです。会社の善し悪しを計るには、トイレを見れば分かると言われています。

たかがトイレと言うことになりますが、従業員の「心づくり」にとってトイレは象徴的な意味合いを持ちます。汚いトイレは、経営者の考え方」「指導力そのものを露呈させます。それと関連して3S整理・整頓・清掃経営者の経営姿勢が表に現れ出されるチェック・ポイントです。

よくある間違った言い分に「3Sなんて関係ない、要は良い仕事さえしたらいいんだ」というものがあります。効率の悪い職場に行くと、書類を山のように積み上げている机があります。そこでは必要な書類を見つけるのが一苦労で、その無意味な作業に多くの時間を費やして1日が過ぎて行きます。

工場でも全く同じような現場があり、機械は錆びつき故障も多くその修理で半日を浪費するということも起こります。倉庫を見ると安い時に大量に購入した原材料がうず高く積まれていて、おまけにもはや陳腐化してしまいゴミになっています。このゴミはもとは「お金」で、今や「有料の倉庫スペースをも占拠します。

3Sの実践は、ただちに利益のアップを実現させかつ社員の心を整え成長させる大切な経営の基本です。あの「カイゼン」の権化であるトヨタの立役者である大野耐一郎さんが、最初に堅固な意思で取り組んだのがこの「3S」です。3Sが出来ないのに「戦略計画」なんて「たわ言」でしかありません。

また松下幸之助さんにもどりますが、松下さんが「人をいかにつくるか」に日々思索を凝らしていたある日、思わぬ機会に巡り合いました。それは昭和7年3月のことで、天理教を訪れ教祖殿の建築や製材所で働く信者たちの喜びに満ちた奉仕の姿に胸を打たれたことが切っ掛けです。感銘を受け見たことを思い起こして、ついに経営のあり方に思い至りました。

「宗教は悩んでいる人々を救い、安心を与え、人生に幸福をもたらす聖なる事業である。事業経営も人間生活に必要な物資を生産する聖なる事業ではないか」と悟ったとき、真の使命による経営の確信が生れました。

昭和7年5月5日、大阪の中央電気倶楽部に全店員168名を招集して「真使命」の250年計画を提示されました。

松下幸之助さんは「経営者としての大きな任務の1つは、社員に夢を持たせるというか目標を示すことであり、それができないのであれば経営者として失格である」と言われています。本田宗一郎さんは、新入社員研修会で「君たちは、企業の犠牲になるな。自分の生活をエンジョイするために働きに来るべきだ」と言っています。

image by: Shutterstock

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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