「日米同盟」について、アメリカで「不平等だ!」という声があがっています。「日本はアメリカに守ってもらうが、日本はアメリカを守らない」というのは確かに公平さを欠くようにも思えますが、元はといえば大戦後、日本が二度と抵抗できないようにと「アメリカ主導」で決められたもの。戦後70年を超えた今、このルールは変えるべきなのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが独自の見解を述べています。
トランプだけではない、「日米同盟見直し論」
アメリカ共和党大統領候補のトランプさん。「日本がもっと金を払わなければ、米軍を撤退させる!」発言で知られています(日本の「核保有容認」発言も有名)。
日本と世界を仰天させたトランプさん。しかし、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久先生は、『SAPIO』8月号で、「実をいうと、日米同盟懐疑論は、昔から存在していた」という話をされています。古森先生によると、三つの種類があるそうです。
日米同盟破棄論
第1は、最も過激な日米同盟破棄論である。超少数意見ではあるが、アメリカの孤立主義の伝統の反映でもある。(『SAPIO』8月号 p11)
日米同盟破棄論者の例として、
- 1992年の大統領選に立候補して敗れた保守派論客パット・ブキャナンさん。曰く「アメリカは自国市場を略奪する日本の防衛を負担する必要はない!」
- 1995年、ワシントンの研究機関「ケイトー研究所」は、「東アジアの有事に日米同盟は機能しないから事前に解消したほうがよい」という結論の報告書を出した。
- 2013年3月、サンディエゴ州立大学のエリザベス・ホフマン教授は、ニューヨーク・タイムズで、「在日米軍撤退」を訴える。
日米同盟不平等論
第2は日米間の不平等、不公正を衝く同盟批判である。この批判は超党派で広範にわたり、水面下で流れてきた。
(同上 p12)
例として、
- 91年1月の湾岸戦争時、30か国がイラク攻撃に参加した。しかし、日本は金だけ出して動かなかったので、「小切手外交」と批判された。
- 97年6月、アメリカ最大手の外交研究機関「外交問題評議会」は、日米同盟には「危険な崩壊要因」がひそむと指摘した。そして、「同盟をより対等で正常な方向へ」と促した。
- 2001年1月、ベーカー駐日大使は、日米同盟の強化には「双務性が必要」と強調した。
- 2001年9月、日本は「9.11」後、「国際テロとの闘争に協力しない」と非難された。
2番目の「日米同盟は不平等論」は、そのとおりですね。日本には、「平和憲法は世界で尊敬されている」と思っている人がたくさんいます。確かに、一般庶民で勘違いして、「日本の平和憲法はえらい!」という人はいます。しかし、もっと詳細を知っているインテリの人たちは、「日本はずるいよね」という意見が多いです。
なぜ? 日米同盟は、「日本が攻撃されたら、アメリカは日本を守らなければならない」。しかし、「アメリカが攻撃されたら、日本はアメリカを絶対、決して守らない」。これ、常識的に考えたら、かなり「ずるい」でしょう??? もちろん、もともとアメリカが、「日本が二度と反抗できないように」という意図でそうしたのですが…。
しかし、戦後70年もたったのですから、日本も変わるべきです。安倍総理は、「片務的」な日米同盟を「双務的」にしようとしています。
日米同盟縮小論
第3は日米同盟の縮小論あるいは弱体化論である。
(同上 p12)
これは要するに、アメリカが弱体化するのに比例して、日米同盟も縮小していくということ。例として、
- オバマは2011年、10年で国防費を7,500億ドル削減する方針を打ち出した。
- アメリカ政府は06年、沖縄駐在海兵隊の9,000人を日本国外に移転させることを決めた。
古森先生は、アメリカが、エジプト、サウジアラビア、イスラエルなどに冷淡になっているので、不信が強まっているとしています。
以上「3種類の日米同盟見直し論」がアメリカにはあることから古森先生は、トランプ発言について、「当初の印象とは異なり、短絡的でも無知でもない発言」とコメントされています。さらに日米同盟の未来について、「中長期的に見て、米軍が日本から引き揚げる日が来てもおかしくない」と断言されています。
では、日本はどうする?
「では、日本はどうすればいいのか?」について古森先生は、「日本はやはり独自の防衛努力の強化しか選択の道はないだろう」としています。
私も、もちろん同感です。それに加えて私は、「外交力を使って、アメリカを味方にとどめよう」と提案したいです。なぜかというと、アメリカ軍なしで中国と対峙するのは、ほとんど不可能だからです。
「アメリカは悪の根源! 米軍が出ていけば、すべてうまくいく!」という人たちは、いつも「日本には沖縄の領有権もない!!!」と宣言している「中国ファクター」を完全無視します。それで、「空想的」「非現実的」ですね。
image by: Wikimedia Commons
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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