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日本の隠れた家族問題。親が死んだら「兄弟の扶養」を断れますか?

リストラ、非正規雇用、引きこもり…。これらが「他人事」では済まされない時代になり、新たな問題の一つとなっているのが「自立出来ない兄弟への援助」です。大切な兄弟だから救いの手を差し伸べてあげたいけれど、共倒れしては元も子もありません。無料メルマガ『システマティックな「ま、いっか」家事術』では、援助する側・される側、それぞれの立場から「共倒れしないための対策」を考えます。

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さて、本日は水より濃いもののお話。昔から「血は水より濃い」と言いますね。血のつながっている身内のほうが、イザというときには赤の他人より頼りになるという意味です。

ところが、昨今その「血」がタイヘンなことになってきているようなんです。どういうことかと言えば親が老齢になり死んでいく中で社会的に自立できない兄弟をどうするのか、という話です。こう言うとすごく例外的な人が兄弟にいる場面を想像しがちですが、それほど例外でもないんですよ。たとえば

などなど。いかにもありそうなオハナシでしょ? 例を見れば分かる通り、要するに「経済的に困窮して兄弟を頼る」ということです。赤の他人ならともかく血を分けた兄弟が苦しんでいれば、人情としてそりゃ助けますよね。

きっと以前には、大家族で暮らしていたし、会社に勤めてお金を稼ぐ以外の働き方ももっともっとたくさんあったのでなんとかなったんでしょう。そういう意味で、家庭はセーフティネットだったわけなんですが、核家族に分解され、会社に勤める以外の選択肢が極端に狭くなったせいで、家庭のそのキャパシティが低下してしまいいまやセーフティネットとして機能しなくなったのです。

こういうモンダイを社会化するのが、日本人は下手ですよね。あ、間違えた。ヘタじゃなくてド下手 ( ̄■ ̄;; ですね。想像ですが、こういう場合の解決策として一番行われやすいのが兄弟のうちの誰かがギリギリまで頑張って他の兄弟をケアしてしまう、というやり方です。それで上手く行くケースはそれでもいいでしょう。ですが、おそらく大多数は上手くいきません。どこかで頼られる側が限界を超えてしまい、共倒れになる危険性が高いと思います。

だって構造的にムリがあるもんね。自分の家族もちゃんと養って運営してそれ以外に自分と同じくらいの兄弟の世話って出来るわけないじゃん。お金も居住空間も精神的余裕も足りないよね。

情に篤い方からすれば、とても冷たい態度に聞こえるかもしれません。「兄弟なら絶対助け合うべき」「共倒れになるとは限らない」「出来るだけ援助すべきだ」などなど。でも、感情以外で状況を冷静に見つめれば、論理的な結論だということは分かってもらえるでしょう。現在の家庭を運営するためにお金が潤沢すぎて困っちゃうだなんて人はそんなにいないハズですから。

難しい問題の続きは次ページ。

さて、前ページの続き。水よりも濃い血のつながりが人生で重すぎる負荷になることがあるというオハナシでしたね。

で、こういうとき、やりがちなのが「抱え込みすぎによる共倒れ」です。自分の家庭以外に別の家庭やオトナを支えるのは、並大抵の労力では済みませんからね。

その意味で、この問題は根本的には、個人の努力でナントカできるようなモンダイではなく、行政的な支援が必要なものだと思っています。別の言葉でいえば、問題を社会化させるということです。たとえば、問題となりそうなところをちょっと考えてみると

などなど。考えつかないほどの多様でキメの細かい息の長い支援が必要です。まあ、ハッキリ言えば、肉親の代わりに育て直しをするようなものなのですからね(ため息)。

さて、とはいえ行政がなんとかしてくれるのを待っている時間はナイんですよね。自分で出来ることをなんとかしないと。こういう社会的に見て難しい兄弟を抱えている場合、おそらくもっとも重要なのは、自分の自立を確保しておくことでしょう。どれほどかわいそうでも、共倒れになっては元も子もありません。相手だけじゃなく自分まで自滅してしまっては、助かった人は誰もおらず、不幸が拡大しただけになってしまいますから。こういうとすごく冷たく聞こえるかもしれませんが、情よりも理屈と数字で事実を押さえておく必要は絶対にあるんです。

なので、少々ロコツなことを言わせてもらえば、特に金銭面で「これ以上のお金は出せない」という上限を死守することです。お金の問題だけに援助できる金額をハッキリさせておくことです。そしてそれを自分でも守るんです。そして、この「お金」には「時間」や「労力」もある程度加味して考えることです。たとえば、遠方から新幹線に乗る必要があるなら

など最低でもこのくらいは加味すべきです。月に5万くらいを援助すると仮定します。東京新大阪間の往復新幹線代は2万7,240円なので、月に二回は行けないことになりますね。こういうのをマジでちゃんと計算するんですよ。そして、その範囲ではできるだけのことをしてあげるんです。イヤイヤではなく進んでやってしまうんです。一応水より濃い仲なんですから。

次ページはいよいよ本人その人のお話。

雇用と結婚が不安定になった社会でありながら、兄弟親子はどこまでも助け合うべきという儒教的な思想がある日本。このため、親が生きている間には顕在化しない兄弟間の扶助問題が起こっているというオハナシでした。

この問題の社会的背景である雇用と結婚は個人ではどうにもなりません。また無自覚なほどに深く根ざした儒教的な思想もまた、一朝一夕には抜けないのです。なので、この兄弟間扶助においては「援助の上限を決めて自立をキープする」ことが大切になっていくのです。

で、ここまでか頼られる側の人のお話でした。今回は、もう一人の主人公、頼る側の人のお話です。本人こそが大問題なんです。遠い知り合い(50代女性・未婚)に家事が全く出来ない人がいるんです。親御さんもそろそろイイ年なのにその後どうするつもりなんだろうとヒトゴトながら心配です。

こうしたリスクとなるような兄弟本人サンは、おそらく自分が他者とつながって生きている事実を知らないんです。人間は両親から生まれた時点で、誰ともかかわっていない人などいないのです。その同じ両親から生まれた兄弟とも、もちろんつながっており、さらにはその子供たちとさえちゃんとつながりを持っているのです。お年玉をあげたりしているでしょ? そして、いずれは誰もが老いて動けなくなるのです。

そういう当たり前の事実をボンヤリとしか認識していないんでしょう。いや、もっと厳しく言えば、分かりたくないので先送りしているだけなのかもしれません。問題ってのはどれも、先送りすればするほど利子がついて面倒になるものなのに。

このような、幅の狭い思考がどのくらい家族を追い詰める結果になるのか、まずは認識してください。その上で、リアルに危機を感じて、何らか対策を立てておくべきです。あなたがメイワクな存在とならないために。

血は水よりも濃い。その血が足かせにならないよう、お互いにやるべきことを考えておきましょう。

image by: Shutterstock

 

システマティックな「ま、いっか」家事術
食べるのは大好きだけど、作るのは超苦手。棚拭きとアイロンがけが何より嫌い。そんな家事オンチだった私がソレナリに家事をこなせるようになったワケ。家事全体を見渡して、最小の手間で最大のリターンを得る、具体的なシステムをお知らせするメールマガジンです。
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