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苦情殺到なのに。なぜ「ごみ屋敷」は今まで放置されてきたのか?

敷地内に大量にごみを貯めこむ、いわゆる「ごみ屋敷」が全国で問題となっています。周囲の住民からの苦情が自治体に寄せられるものの、今までは行政がごみを処分できる手立てがないとして、どうにもならない状態が続いてきました。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、そんなごみ屋敷対策に動き出した自治体の取り組みについて紹介しています。

「ごみ屋敷」対策ってどうなっているの?

2016年10月11日、福島県郡山市で火災が発生し、住宅が全焼しました。焼け跡からは、この家に住む男性の遺体が見つかっています。この家は敷地内に大量にごみをためた家で知られ、郡山市には沢山の苦情が寄せられていたそうです。

この男性については、ごみ屋敷問題で2016年3月に全国で初めて条例に基づいて氏名が公表されました。その後改善がなかったため、敷地内のごみを撤去する行政代執行が行われていました。2015年8月には、愛知県豊田市でごみ屋敷が全焼し、両隣の住宅にも延焼するという事件が起こっています。

「ごみ屋敷」問題は、全国で問題となっています。近隣の住民の方にしてみたら、見た目に悪いだけでなく、悪臭や害虫の発生このような火災の危険もある「ごみ屋敷」問題。どのような対応が取られているのでしょうか?

「ごみ屋敷」問題については、これまで行政は対応に苦慮してきました。「ごみ屋敷」を創り出してしまう人の多くは、その土地や家屋の持ち主であり、ごみはその人の管理下にあることが多いという状況です。一般的にごみと見えるものでも、その人がごみではないと主張していれば、行政や近隣の住民が勝手に処分することは極めて困難です。道路にはみ出して通行が困難となっているような場合に、道路交通法を根拠に処罰するという対処しかとれないという状況が続いていました。

しかし、最近、条例を制定して対処する自治体が増えてきています。例えば、世田谷区では、2016年4月1日から、「ごみ屋敷」問題に対応するために、「世田谷区住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例」を施行して、地域における良好な生活環境の保全につとめるとしています。条例は、「ごみ屋敷」の定義について、

  1. 現に人が居住していること
  2. 住居及びその敷地に物が堆積又は散乱した状態にあること
  3. 居住者及び周辺住民の生活環境が著しく損なわれている状態にあること

としています。3.については具体的に、物が道路等に流出していたり、悪臭が発生、ゴキブリやハエ等の動物が群生していること、などが挙げられています。京都市や大坂市など条例を制定している自治体では同様の定義となっているようです。

世田谷区では、「ごみ屋敷」に対して、調査等を行い、設置された審査会に諮問して、その住居が管理不全な状態にあるかどうかを判断します。管理不全な状態と判断された住居等については、まず整理整頓など必要な措置をするように指導を行い、住居者が指導に従わない場合は、勧告を行います(世田谷区条例9条)。

それでも状況が改善されない場合は、区が代わって必要な片付けを行ったり、危険が生じるおそれがある場合には、区が緊急対応を行います。代行でかかった費用については原則として居住者が負担することになっています。多くの自治体でも、同じような流れとなっています。

このように、全国でも自治体が条例に基づいて対処するというケースが増えてきました。しかし、今回のケースでは、火災は自治体が介入した後に発生しています。

自治体が介入して片付けを行ったとしても、ごみを溜め込んでしまう行動が改善されなければ、一時的な対応にしかなりません。ごみを溜め込んでしまう背景には心の問題等様々な要因があるということですので、それらにどう対応していくかが今後の問題となりそうです。

 

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