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日本が軍備を増強すればするほど対中国戦で負けに近づく理由

先日掲載の記事「これだから日本は『韓国よりロシアを下に扱う』という過ちを犯す」中での「ロシアは内心日本より中国を大切に思っているので、日本はロシアをもっと大切にすべき」との見解に対し、読者から「日本が戦争できる国になる方が現実的」とのメールを受け取ったという無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』著者・北野幸伯さん。北野さんは「その意見は理解できる」としながらも、戦争に勝つためには欠かすことができない「二つの方法」があるとの考えを示しています。

常勝日本軍が中国に負けた理由

読者の井上様から、メールをいただきました。

対中戦略に関して、ロシアと仲良くするより、日本が戦争できる体制を整える方が現実的なのではないかと感じていますがどうでしょうか。

 

(中略)

 

勿論戦争できる国にすることは非常に難しいことですが、安倍政権ならそれが可能ではないでしょうか? 任期も長くなりそうですし…。

 

いずれ世界大戦的なものが起こると危惧しています。その時のためにも戦争できる国にしておき、今度こそ戦勝国になりたいのです。

日本が中国に勝つためには、「戦争できる体制を整える方が現実的」というご意見です。もっともですね。

今回は「戦争に勝つためには二つの方法があり両方とも大事」という話をさせていただきます。

内的バランシングと外的バランシング

A国には、敵対的B国がいる。A国がB国に勝つために、大きく二つの方法があります。一つは、バランシング(直接均衡)。これは、A国自身が責任をもって、B国と対峙するのです。

もう一つは、バックパッシング(責任転嫁)。これは、A国自身戦わず、他国(たとえばC国)をB国と戦わせるのです。たとえば、アメリカはプーチン・ロシアが嫌い。しかし、自分で戦いたくないので、傀儡国家のジョージアやウクライナをロシアと戦わせる。

バックパッシングの話は今回しません。バランシングの話。バランシングにも、二種類あります。

一つは、内的バランシング。これは、自国を強くする。つまり軍備を増強する。井上様の「戦争できる体制を整える」というのも、内的バランシングです。ほとんどの人にとっては聞きなれない言葉でしょうから、以後、内的バランシング(軍備増強)と書きます。

もう一つは、外的バランシング。これは、同盟関係を増強するのです。中国が怖い。だから、日本は、アメリカ、オーストラリア、インド、フィリピン、ベトナムなどに接近しています。

大きく二つの方法があることを、はっきり知っておきましょう。

日本の戦略文化、中国の戦略文化

トランプは、「日本がもっと金を出さなければ在日米軍を撤退させる!」と言った。これを聞いて、内心喜んだ人もいたのではないでしょうか? 「ようやく自立できる!」と。さらに、トランプは、「日本が核兵器を持っても問題ない」といった。これも、内心喜んだ人がいたと思います。

何でも自分でやりたい!」。これは、日本の戦略文化だと思います。もちろん今の日本政府は全然違いますが、日本は本来そういう国民性だと思います。つまり、日本は、内的バランシング軍備増強国家なのです。

一方、お隣の国・中国は全然別の考え方をします。約2,200年前、楚漢戦争というのがあった。軍神・項羽と、農業が嫌いな農民だった劉邦が戦ったのです。項羽は戦闘にめっぽう強く、劉邦に連戦連勝。しかし、劉邦は、地道に同盟関係の増強に取り組み、徐々に味方を増やしていきます。そして最後に一勝し、結果400年続く漢帝国を築き上げた

つまり、中国の戦略文化では外的バランシング同盟関係増強)が内的バランシンング(軍備増強)よりも強い。そして、2,000年以上の時を経て、中国では同じことが繰り返されました。

鬼神のように強い日本軍は、中国で連戦連勝でした。しかし、どういうわけか勝てば勝つほど苦しくなっていく。これは、何だったのでしょうか? そう、中国は、アメリカ、イギリス、ソ連から支援を受けていた。中国は、「外的バランシング」(同盟関係増強)を重視し、米英ソ3大国を味方につけることに成功していた。これでは、いくら日本軍が強くても勝てるはずがありません。

歴史は繰り返すか?

そして、2012年11月、中国はモスクワで「中国、ロシア、韓国で反日統一共同戦線をつくろう!」と提案します。さらに、「反日統一共同戦線」には、「アメリカも入れよう!」と。

※ 必読完全証拠→反日統一共同戦線を呼びかける中国

2012年9月、日本政府は尖閣を国有化した。中国は激怒しました。しかし、彼らはそれで「内的バランシング」(軍備増強)をしませんでした。

2か月後にしたことは、「反日統一共同戦線構築だった。「アメリカ、ロシア、韓国を味方につけ、日本を袋叩きにしてやろう!」と。これは、「外的バランシング」(同盟関係増強)です。

そして、日本は、「前回、内的バランシングを重視した日本が、外的バランシング同盟関係増強を重視し、米英ソを味方につけた中国に負けた」という歴史的事実を、100万回思い出す必要があるのです。

ですから井上様の「戦争できる体制を整える」ことも大事。同様に、「外的バランシング」(同盟関係増強)もとても大事。そういう意味で、トランプ・アメリカプーチン・ロシアとの友好は重要なのです。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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