『君の名は。』『聲の形』に続く大ヒットアニメ映画『この世界の片隅に』は、限られたスクリーン数で公開されたにもかかわらず、観客の口コミなどで人気爆発となったのですが、メルマガ『映画野郎【無料メルマガ版】』には、この作品が絶賛される現象から図らずも見えてしまった「日本映画界の低迷」について記しています。
この世界の片隅に
今、巷で騒がせているアニメ映画『この世界の片隅に』をようやく見て来た。試写もタイミングが合わず、公開して直ぐにも行けなかったのでレビューは出来なかった。試写状やフライヤーのイメージからだいたいのこの映画の感覚が掴めていただけに正直わざわざ観る映画とは思えなかったが、水道橋博士、町山智浩、ライムスター宇多丸、「オタキング」岡田斗司夫が軒並み絶賛していることもあり、背中を押される形で観た。
要は広島県広島市南部と呉を舞台にした戦前・戦中・終戦直後の日本のある家族の悲喜こもごもで、そこにゆるゆるふわふわなタッチにのほほん・ぼんやりな感じの主人公すずの周りの温かさで見せている。なるほど、これは小津安二郎や黒澤明、木下惠介、今村昌平、黒木和雄、中村登も同系統の実写作品を作っていたが、このポップな感覚は革命的である。悪い映画ではない。
しかし、だ。やっぱりこのレベルの作品をアニメでしか出来ない、実写では出来ない、ということに今の日本映画界の限界、レベルの低さ、衰退、落ち日などを痛感せざるを得ない。小津や木下、中村登なら10年かけてでもCGや特殊効果なしで実写映画で出来たはずである。かつてはそれだけ素晴らしいレベルが日本映画界にはあった。が、今ではどれだけ資金を積んでも出来るかどうか、といった感じである。
日本映画界と書いたのは、アメリカ映画、イギリス映画、フランス映画、イタリア映画、韓国映画、中国映画、デンマーク映画、イラン映画ならアニメ映画『この世界の片隅に』を実写で出来た可能性が高い。つまり、それだけ日本映画のレベルは低くなっている。漫画原作や似たような俳優・女優の主演映画ばかりやっているツケである。「いや、そうではない」とボクも言いたいが、『この世界の片隅に』程度のレベルで泣いてしまうというのは、それだけ映画を観ていない証拠でもある。もっともっと映画を観ろ、である。
それと、やっぱり水道橋博士と町山智浩、ライムスター宇多丸の影響力も問題あり。いい加減に彼らの時代に引導を渡したいが、こちとらまだまだ勉強中だから、しばらく続くかな。
小川修司
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