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99%の新成人が大迷惑。「荒れる成人式」を作り出したいのは誰か

今年も各地で成人式が行われましたが、メディアで大きく取り上げられたのは「荒れた成人式」の話題ばかり。実際、ほとんどの式典は滞りなく行われているのですが…。『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』の著者で現役小学校教諭の松尾英明さんは、「不適切な行動」を大きく取り上げることは相手に「報酬」を与えていることに他ならないとした上で、偏った報道を断罪しています。

「素晴らしい成人式」とみる

まずは昨年発行して「まぐまぐニュース」で反響のあった次の記事の振り返りを。

「荒れる成人式」を見てニヤニヤする「大人」たちの負の連鎖

ここにおける現象もその原理も、学級経営と全く同じ。原理原則を一言でまとめると、「注目行動の強化」である。

学級で、誰に着目すべきか。全く不勉強の何も知らない状態で学級担任をすれば、確実に「目立つ子に目がいく。担任や友達が話している途中でも、お構いなしに自分の好き勝手な言動を繰り返す子供。「真面目」な教師は、その都度注意したりなだめたりする。学級崩壊の典型パターンである。

不適切な行動に着目して指導を入れていけば、その行動はますます強化される。何度も繰り返しになるが、「叱責も報酬」だからである。先の記事で言えば、「荒れる成人」にスポットを当てた各種報道である。

どう対応すべきか。「不適切な言動に対しては意図的な無視」で対応するのが基本である。その代わりに、何に着目するか。

適切な言動である。なすべきをなしている子供をこそ、認める。それは、ある意味で大変「地味」な言動である。例えば人の話は真剣に聞くといったことである。そんな「当たり前がいかに素晴らしいことかを伝える。不適切な言動を繰り返している子供も、そこに学ぶ。こちらを先の記事でいうなら、素晴らしい参加態度や代表スピーチをした成人式の報道である(東日本大震災の後は、これがかなりあった。復興には若い力が絶対に必要である)。

不適切な言動をしている子供が悪いのではない。不適切な言動そのものがその場において「不適切」であり、悪いのである。だから、その言動自体は無視する。実は子供を無視しているのではなく「意図的な無視という教育を施しているのである。

そして、不適切な言動を無視することは、その意図まで事前に全体へ伝えておくことも大切である。「立派な成人への称賛次の立派な成人式を生む。逆をいかないことである。

この学級経営の原理原則は、社会に適応できる。注目される言動は、正負に関わらず強化される。「日本の成人はダメだ」という点に着目すれば、事実とは別に全体の自尊感情は当然下がる。歴史を含め、そこに着目させるのだから「日本の子供の自国のへ自尊感情は世界一低い」なんて、当たり前である。

全国各地で、素晴らしい成人式が多数開かれているのが事実である。偏った見方だと、都市部の成人式が「荒れる」と見えるのは、当然である。実は荒れているのではなく、分母が大きいだけである。分母が大きければ、割合の関係上、当然不適切な言動をとる「子」の絶対数も増える。

「10人の荒れている成人(?)」を見るか。「9,990人の立派な成人」を見るか。どちらも同じ事実を、違う視点で見ているだけのことである。

何度も繰り返すが、99.9%の立派な新成人にとって、偏った報道は誤解を招く大迷惑である。自尊心を構成する一つである「地域への誇り」も傷つけられる。

日本の未来を担う新成人を、祝福・歓迎したい。

 
 
 
「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術
著者/松尾英明
『まぐまぐ大賞2014[無料部門]教育・研究』の大賞受賞メルマガです。実践例を通して、教育観を磨きながら、具体的な手法にもふれていきます。「教育を志事にする」を信条に、真に役立つ実践的な情報だけを厳選してお伝えします。教育関係者を中心に、子どもに関わる全ての方々に向けて発信します。登録・解除ともにすぐできますので、ご一読よろしくお願いいたします。
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