開通当初から「税金の無駄使い」との批判が多かった北海道新幹線。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、昨年末に北海道を襲った記録的な大雪の際、北海道新幹線が新千歳空港の航空機の代替として活躍したことに注目しています。同メルマガ著者で鉄道に詳しい作家の冷泉彰彦さんは、北海道という豪雪地帯における「新幹線の威力」は決して低くないと評価しつつ、一方で「豪雪地帯ならではの課題」も存在していることを指摘しています。
北海道新幹線、雪との戦い(鉄道論)
北海道は現在も寒波に見舞われていますが、特に昨年のクリスマス直前の23日の大雪は記録的でした。札幌は十分に雪国だと思いますが、それでも95センチというのは大変で、50年ぶりの大雪だというのも不思議ではありません。
そんな中、新千歳は大混乱になって、「空港ロビーホテル」状態だったわけですが、この23日、JR北海道によれば、昨春開業した北海道新幹線の1日当たりの乗車人数が、開業以来最高の1万4700人を記録したのだそうです。
要するに欠航が相次いだ新千歳空港発着の航空機の代替として新幹線に乗客が流れたわけです。恐らく「道央から函館」を結ぶ特急の「スーパー北斗」なども大混雑であったと思われます。何かと批判の多い北海道新幹線ですが、私が以前から強く主張しているように完全ではないものの、雪には強いのです。
と言いますか、冬の北海道では「JRだのみ」というのが実情で、とにかくそのことを証明した格好となりました。
確かにコンディションが良ければ飛行機で新千歳から羽田は1時間40分で行ってしまうわけですが、大雪に見舞われれば待ち時間を含めて20時間とか、30時間ということもあるわけです。一方で、現在の新幹線が新函館北斗までしかない状態でも、札幌から新函館北斗へ4時間弱、そして東京まで4時間丁度ですから、大変とはいえ8時間で行けるというのは、やはりこれで「新幹線の威力」を感じた人も多かったのではないでしょうか?
一方で、新幹線の苦闘も始まっています。年明けの厳しい寒波が襲った1月14日、北海道新幹線木古内駅でポイント故障(不転換)が発生し、同駅発着の列車が一時立ち往生。最大70分の遅れが出たようです。
70分というのは、本州のダイヤへの影響が最低限になるように、「はやぶさ」を1本飛ばして、新青森始発を南行で送り出して、遅れた編成は「次のスジに乗せる」という対応をした可能性があり、必ずしも除雪に70分掛かったのではないと思いますが、やはり苦闘は苦闘だと思います。
この区間ですが、三線軌条ポイントといって狭軌の貨物と、標準軌の新幹線が合流する複雑な転轍器になっているので脆弱な場所です。鉄道運輸機構は建設にあたって、大げさな鋼鉄のシェルターで覆っているわけですが、横からの吹き込みは防げません。また貨物が落とす氷も防げません。
ここは、電熱システムの容量上げるとか、圧縮空気機構(があるはずですが)を強化して吹き飛ばすとか、何とか新しい対策を取って行きたいものです。とにかく、冬の北海道は寒さのために温水をかけて「消雪」というのは不可能だからです。
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