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ライザップがジーンズメイト買収、業績回復にコミットするのか?

「結果にコミットする」というキャッチコピーで、芸能人や一般の方がダイエットに成功するCMをバンバンうち、瞬く間に名を売った「ライザップ(RIZAP)」。最近では英会話教室の経営に進出し話題となりましたが、今度はジーンズメイトなどアパレル会社の買収にも乗り出したようです。その先にある狙いとは? 無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが分析します。

ライザップがジーンズメイトを買収、業績回復にコミット

佐藤昌司です。ライザップRIZAPはジーンズメイトの復活にコミットできるのでしょうか

トレーニングジム「RIZAP」を展開するRIZAPグループは1月16日、ジーンズを核にした衣料品店「ジーンズメイトJEANS MATE)」を買収すると発表しました。株式の公開買い付け(TOB)と第三者割当増資で連結子会社化を目指します。

ジーンズメイトは衣料品製造卸売業「西脇被服本店」が前身です。1978年にジーンズメイトを初出店し小売業を開始します。その後、主に首都圏の駅周辺や繁華街にある商業施設内を中心に店舗網を拡大していきました。2000年には東証一部に上場しています。

売上高のピークは2000年2月期の247億円でその後は低迷します。アパレル不況やユニクロなどとの競争の激化が大きく影響しました。そして、サブプライムローン問題に端を発した景気悪化の影響により業績は急激に悪化し、2009年2月期の最終損益は赤字に転落します。2016年2月期まで8期連続となる最終赤字が続いています。

一方、ライザップの業績は好調で、飛ぶ鳥を落とす勢いです。2012年4月にライザップを神宮前に出店し、ライザップ事業を本格稼働させました。2012年3月期の売上高は134億円でしたが、ライザップの本格稼働が功を奏し、2013年3月期は前年比32.7%増の178億円にまで増加しました。2016年3月期は554億円にもなっています。

ライザップは美容関連分野と健康食品分野、そしてライザップ事業を中心に成長を果たしてきました。一方で、2012年からマタニティウェアなどを販売する「エンジェリーベ」、婦人服を販売する「馬里邑」、婦人服と紳士服を販売する「アンティローザ」、婦人服を販売する「夢展望」、婦人服を販売する「美鈴」などを子会社化するなど、アパレル事業に注力しています。

ライザップは事業の範囲を「自己投資産業」と位置付けています。単に物やサービスを提供するのではなく、自己投資を通じて消費者の夢や願望の実現を手助けすることを包括的に行うことを目指しています。さらに、その結果にコミットすることを標榜しています。

2015年2月に発表した中期経営計画によると、「ファッション、ヘアスタイル、メイク、マナーなど、本当になりたい自分作りを科学的に分析支援するトータル・イメージ・コンサルティング事業を開始予定」としています。体づくりを超えて、「なりたい自分の実現をサポートする新規事業のようです。

この新規事業の構想では、ファッションを含めてトータルで自己実現をプロデュースすることを目指しています。しかし、現状のライザップのアパレル事業は、ほとんどが婦人服で構成されていて、ライザップ利用の男性客をグループ内だけでプロデュースすることができない状況です。

ジーンズメイトを買収した理由の一つとして、ライザップ利用の男性客向けにアパレル製品の提案販売を行う意図があると推察します。ジーンズメイトは男性用と女性用の両方のアパレル製品を扱っています。男性用のラインナップは充実しているので、ライザップ利用の男性客に対する提案の幅を広げることができます。一方、ジーンズメイトとしてはライザップからの送客が期待できます。

ジーンズメイトの業績は低迷していますが、財務内容は決して悪くない状況です。ジーンズメイトは業績の低迷に合わせて不採算店舗の統廃合を断行していきました。最終損益の赤字が続いている理由は、売上高の減少が大きな要因ですが、不採算店舗の統廃合による減損損失の計上の影響も強くあります。それが一巡すれば赤字幅は縮小するはずです。事実、最終損益の赤字幅は縮小傾向にあります。

ジーンズメイトは無借金経営を続けています。自己資本比率は79.7%(2016年2月期末)もあります。流動比率は463%(2016年2月期末)にもなります。どちらも企業財務の安全性を表す代表的な指標ですが、どちらも良い数値を示しています。ジーンズメイトの財務状況は極めて良好と言えるでしょう。

ジーンズメイトはライザップの傘下に入ることにより、ライザップのマーケティングノウハウを得ることができます。今の時代は物が売れない時代です。特にアパレル不況は最たるものです。単純にジーンズメイトの衣料品を販売するだけでは見向きもされません。

しかし、ライザップのマーケティングノウハウを活用し、「ジーンズメイトの衣料品を着ることでお洒落になれ、明るい未来を実現できる」という提案型のコミュニケーションを行うことができれば、ジーンズメイトの業績は回復することができるのではないでしょうか。例えば、「お洒落ではない有名人が、ジーンズメイトの衣料品のコーディネートでこんなにお洒落になった」といった訴求が考えられます。

ライザップによるジーンズメイトの買収は大きな相乗効果が期待できそうです。ジーンズメイトの業績回復というコミットの結果に注目が集まります。

 

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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