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【書評】誰が龍馬を殺したのか? 定説をひっくり返す「真犯人」

日本の歴史上の人物の中でも特に高い人気を誇るのが、坂本龍馬。その龍馬を暗殺したのは京都見廻組とされていますが…、今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、その定説を覆す独自の見解が記された1冊です。柴田さんも「いい線いってる」と評価するその「真犯人」とは?

禁断の幕末維新史・封印された写真編』加治将一・著 水王舎

加治将一『禁断の幕末維新史・封印された写真編』を読んだ。この人の小説は下手過ぎるし、ノンフィクションもあまりお上手ではないのだが、トンデモぶりが面白く、つい手をのばしてしまうのだ。「拡散的疑問から収束的疑問を通過して結論を得た」(どういう意味だ?)という自分に忠実に描いた著作は「歴史殺しとまで言われているようだが、これが「加治史観」であると開き直る。わたしのような酔狂なファンが意外に多く、今までの著作は増刷に次ぐ増刷でロングセラーとして定着している、とは本人談だが。最新作のテーマは今まで読んだものばかり、龍馬殺しだけ初見のような気がする。

タイトルは「坂本龍馬暗殺の真犯人は目の前の男だった!?」、ええっ、対面していたのは親友・中岡慎太郎だよ。定説では龍馬を倒幕の張本人として狙った、京都見廻組の犯行だとされているのだが。龍馬は寺田屋で伏見奉行所の捕り方に急襲された後は、ボディガードを雇って用心に用心を重ねていたはずだ。なぜ刺客を防ぎ切れなかったのだろうか。「もし、犯人が警戒をゆるめる相手だったら?」暗殺の成功率はぐんと高くなる。著者によると、龍馬は土佐藩のスパイだった。一介の郷士が剣術修行で江戸行きを許されるわけがない。後に龍馬は脱藩するが、それは藩による密命で、露見しても切り捨て可能な存在だ。

龍馬は勝海舟、松平春嶽との出会いで人生が決まり、大政奉還という奇手で徳川家を温存する。もはや幕府のVIPである龍馬が、新選組や見廻組に命を狙われるはずがない。幕府には暗殺する動機がない。しかも、警備の厳しい土佐藩邸の斜め向かいの近江屋に、大胆に押し込む刺客がいるだろうか。龍馬は多くの修羅場をくぐってきたから、危機管理能力は高い。ピストルを持っている龍馬に、警戒されずに近づける人物はただ一人、中岡慎太郎しかいない。龍馬は至近距離からあっという間に斬られた。居合いである。剣の腕は中岡のほうがはるかに上だったという。龍馬も反撃し、中岡も負傷、数日は生きていた。

大政奉還後の政局は、武力革命派の岩倉具視、大久保利通、薩摩藩、長州藩、土佐藩の一部(中岡ら)VS.無血革命派の龍馬、後藤象二郎、勝海舟ら、である。近江屋に乗り込んだ中岡は龍馬と直談判に臨んだが、龍馬は頑として考えを曲げない。中岡には岩倉、大久保との約束がある。律義を絵に描いたような中岡に妥協はなかった。というわけで、龍馬暗殺の真相は土佐藩の内ゲバだったというのが加治説である。事件後、関係者はみな口をつぐみ、わずかに残る証言はみな陳腐。遺留品は偽装工作がみえみえ。おかしなことは山ほどあるが追及されずに闇の中。これが「加治史観」だ。いい線行ってると思う

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock

 

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