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本気か。ドン・キホーテが「58分以内配達」でアマゾンに挑戦状

「驚安の殿堂」を自負する日本最大級の総合ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」が、速さでも頂点を狙って攻勢をかけてきました。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、ドン・キホーテの即時配達サービス「majica Premium Now」について、アマゾンの「Prime NOW」と比較しながら、今後の成長性などについて考察しています。

ドンキがアマゾンに「58分配達」の挑戦状。即時配達戦争が勃発

佐藤昌司です。ドン・キホーテは、最短58分以内の即時配達サービスmajica Premium Now」(マジカプレミアムナウ)を2月22日から開始します。専用サイトで注文した商品を最寄りの店舗から配達します。

対象店舗は当初はMEGAドン・キホーテ大森山王店(東京都大田区)のみですが、順次拡大していく予定です。対象商品は約2,500点(食品、飲料、酒類、日用消耗品、ペット用品、文具等)、最低購入金額は2,000円(税抜)です。

配達区分や対象エリアが異なる2種類のサービスが用意されています。「58分配達」は、店舗から半径約3kmが対象エリアで、配達料は750円(税込)です。「2時間毎配達」(指定した2時間の枠内での配達)は、店舗から半径約5kmで、配達料は無料です。

これは完全に、アマゾンが既に提供している「Prime NOW」(プライムナウ)に対抗するサービスといえるでしょう。しかも、「プライムナウ」よりも利便性や経済性を少しだけ高く設定しているところに対抗心を見ることができます。

「プライムナウ」は現在、東京都、神奈川県、千葉県、大阪府、兵庫県の対象エリアで利用できます。対象商品は最大6万5,000点以上、最低購入金額は2,500円(税込)です。

「プライムナウ」も配達区分や対象エリアが異なる2種類のサービスが用意されています。「1時間以内配送は配達料が890円(税込)、「2時間便」(指定した2時間の枠内での配達)は無料です。

ドン・キホーテの「マジカプレミアムナウ」は対象商品の品数で大きく劣っています。まずは約2,500アイテムからのスタートですが、「プライムナウ」の約6万5,000点(サービス開始時は約1万8,000点)と比べて大きく劣ります。

対象エリアでも劣勢といえます。ドン・キホーテのグループの総店舗数は2017年2月1日時点で355店舗です。58分配達で店舗から半径約3km、2時間毎配達で店舗から半径約5kmで考えると、仮に全店で対応することになっても対象エリアは限られてしまいます。

ちなみに、ドン・キホーテの「58分配達の半径3km355店舗実施で計算すると、総面積は約1万平方キロメートルです。岐阜県や青森県程度の面積にしかなりません。対象エリアは限定的です。対象エリアを拡大するには、店舗数を増やすか配達距離を伸ばす必要があります。大きな制約があるといえるでしょう。

マジカプレミアムナウ」は会員を対象にしたサービスなので、店舗近隣に住む会員をカバーできれば問題ないのかもしれませんが、会員ではない人を取り込むには対象エリアが若干狭いように思います。そのため、新規顧客の開拓というよりも、既存顧客からの売り上げ増加を狙うサービスといえます。

一方、アマゾンの「プライムナウ」は国内に5箇所ある専用倉庫から東京都、神奈川県、千葉県、大阪府、兵庫県の対象エリアに配送します。わずか1年で、東京23区全域で利用可能になるなど、対象エリアを急速に広げています。

「プライムナウ」の場合、専用倉庫の設置を進めることで対象エリアを拡大させることができます。専用倉庫だけでなく、フルフィルメントセンターと呼ばれる既存の配送センターを活用することでも対象エリアは拡大します。今後の成長は倉庫の設置が鍵となるでしょう。

ドン・キホーテの「マジカプレミアムナウ」は店舗に依存するため、拡大戦略が取りづらいといえます。「マジカプレミアムナウ」のためだけに店舗を増やすことは現実的ではありません。しかし、アマゾンの「プライムナウ」は必要に応じて倉庫を設置すればいいので、拡大戦略が容易に描けます。今後の成長性という点ではアマゾンに軍配が上がりそうです。

とはいえ、むやみに倉庫数を増やすことは効率的ではありません。用地の確保や作業人員の確保の制約によりスムーズに拡大できない可能性があります。そのため、一つひとつの倉庫での効率化が求められます。

アマゾンは倉庫の効率化のために、神奈川県川崎市に建設した新しい物流拠点「アマゾン川崎FC」(フルフィルメントセンター)に倉庫ロボットAmazon Robotics」を導入しました。米国や欧州では導入が進んでいるシステムです。自走式のロボットが可動式の商品棚の出し入れを行います。従業員の手間が省かれるため、作業の効率化作業時間の短縮化が可能となります。

倉庫ロボット「Amazon Robotics」を「プライムナウ」の専用倉庫に導入することができれば短時間配送が可能になるため、従来に比べて少ない倉庫数で運用が可能です。1倉庫あたりの配送エリアが広がるからです。また、昨今の人手不足の問題も解消できるため、人員数をあまり気にせずに倉庫を拡大させることができるようになります。そのため、「プライムナウ」は今後の成長が見込める事業といえるでしょう。

ドン・キホーテの「マジカプレミアムナウ」はアマゾンの「プライムナウ」と比べて、対象商品の品数と今後の成長性において劣るといえます。そこで、配送時間を「プライムナウ」よりも2分短い58分に設定することで利便性を訴求し、配送料をより低額に抑えることで経済性を訴求する戦略を採用しました。アマゾンよりも優れていることをアピールしています。

両者は対象顧客がそれほど重ならないため、当初は激しい顧客の奪い合いは発生しないでしょう。それよりも、新しく脚光を浴びている「即時配送サービス」の分野で先進的な企業としてのイメージを確立する狙いがありそうです。この点においてアマゾンとドン・キホーテは激しく競っていくことでしょう。

果たしてどちらが、またはどの企業が「即時配送サービス」で覇権を握るのでしょうか。他の企業の参戦も十分考えられます。戦いの火蓋が切って落とされたといえそうです。

image by: Takamex / Shutterstock, Inc.

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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