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切実な問題。定年後も働いたら年金はどれだけ減らされてしまうか

今の時代、定年後も仕事をもって生き生きと働き続ける人は少なくありません。しかし、一般的に「働くと年金が減らされる」とも言われていますよね。それ、本当なのでしょうか。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』で紹介されている、「定年後に再雇用されたケース」を例に見ながら、しっかりと学んでいきましょう。

定年後の再雇用後の無年金期間と、年金支給開始後はどのような年金の支払いになるのか?

これから定年を迎えて、その後の年金に不安をお持ちの方も多いですが、定年後も継続雇用や再雇用で働く人が多い時代でもあります。

ちなみに継続雇用はそのまま雇用契約を解除せずに以前の待遇で働き続ける事。

再雇用は一旦雇用契約を終了させて、新たな雇用で雇用契約を結ぶ。大抵は再雇用を採用している企業が多いですね。新たな雇用で給与見直しができるから。

というわけで再雇用だと賃金も見直しされて普通は大きく下がるんで、そこから年金との関係を書きたいと思います。

1.昭和32年4月25日生まれの男性(来月60歳)。この人の老齢厚生年金支給開始年齢は63歳。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

60歳で再雇用(厚生年金にはそのまま加入)で65歳到達日(4月24日)をもって退職予定。なぜ、4月25日じゃなくて、4月24日かというと、新たに歳を取るのは誕生日ではなくその前日だから。

誕生日は誕生日だけど歳を取るのはその前日!(参考記事)

60歳時点の賃金は40万円だったが、再雇用により24万円。賞与は7月と12月に20万円ずつ(退職まで変わらないものとします)。

以前の賃金割合と比べて60%(24万円÷40万円=0.6)になりました。

60歳時点の賃金(60歳前6ヶ月以内に支払われた賃金の平均)よりその後の賃金が75%未満に下がると、雇用保険から高年齢雇用継続給付金という下がった賃金の最大15%(賃金割合が61%以下の時)が60歳月から65歳月分まで最大5年間支給される場合があります。一般的に会社の総務経理あたりがハローワークに手続きしてるから、60歳間近になったら話してみてください。

まず、この人は60~63歳まで無年金期間が生じます。

ここは賃金24万円と高年齢雇用継続給付金3万6,000円(24万円×15%=3万6,000円)=27万6,000円。7月と12月に20万円ずつの賞与。

一応月収入で書いてますが、高年齢雇用継続給付金は通常2ヶ月分ごとの支給なので注意。

さて、63歳になると年金請求によりまず老齢厚生年金(報酬に比例する部分のみの年金)の支給も開始になります。63歳到達月の前月まで厚生年金に加入した分で老齢厚生年金を計算します(とりあえず460ヶ月という事で)。老齢厚生年金年額は105万円(月額8万7,500円)とします。

65歳から支給される老齢基礎年金は68万8,382円とします。60歳までの年金記録が厚生年金424ヶ月のみで計算してます(老齢基礎年金平成29年度満額77万9,300円÷480ヶ月×424ヶ月=68万8,382円)。

この場合老齢厚生年金が支給減額停止される場合があります。この人の場合は年金が停止されるのか。

まず、月給与(標準報酬月額)24万円と直近1年に貰った賞与(標準賞与額)を12で割った金額(賞与総額40万円÷12≒3万3,333円)の合計額である総報酬月額相当額というのを出します。

総報酬月額相当額27万3,333円(24万円+3万3,333円)

そして、年金月額87,500円(基本月額という)を足す。

{(総報酬月額相当額27万3,333円+基本月額8万7,500円)-28万円)}÷2≒4万,417円←月の年金停止額。

28万円というのは支給停止調整開始額という定数みたいなものです。経済状況で年度により変わることもあるが平成29年度は変更無し。

で、この人は雇用保険から高年齢雇用継続給付金3万6,000円を貰っているので更に年金が減額になります。高年齢雇用継続給付金の最大値である15%を貰っている人は最大6%の年金減額になります。

注意

厚生年金に加入していない人は高年齢雇用継続給付金を受給する事による年金減額は無し。この事例の男性は厚生年金に加入してるから減額される。

だから、24万円(実際は給与そのものではなく標準報酬月額に)に6%を掛けた、1万4,400円が年金から減額。よって、年金停止月額は4万417円+1万4,400円=5万4,817円

つまり、63歳以降の収入は月給与24万円+高年齢雇用継続給付金3万6,000円+(老齢厚生年金8万7,500円-年金停止額5万4,817円)=30万8,683円になります。だから実質、年金月額だけ見たら3万2,683円になりますね(^^;;

そして65歳到達月の翌月分から、老齢厚生年金と合わせて老齢基礎年金68万8,382円が支給され始めます(ハガキタイプの年金請求書が65歳誕生月初め頃に届くから再度請求が必要)。

また、年金が初めて支給され始めた63歳から65歳までの24ヶ月間厚生年金に加入しているから、63歳時点の老齢厚生年金より増えます。

65歳以降いくら老齢厚生年金が増えるのか。まあ、ザックリですが…、

報酬に比例する部分→24万円÷1,000×5.481×24ヶ月=3万1,571円。

経過的加算(差額加算ともいう)→定額単価1,625円(平成29年度価額)×56ヶ月=9万1,000円

経過的加算(日本年金機構)

注意

なぜ、60歳から65歳まで60ヶ月間厚生年金に加入してるのに、経過的加算が60ヶ月ではなく56ヶ月かというと上限が480ヶ月だから。この男性は60歳時点で424ヶ月の厚生年金期間があるから56ヶ月が限度。

正式な計算としては、定額単価1,625円×480ヶ月(全体の厚生年金期間は484ヶ月だが経過的加算では480ヶ月)-77万9,300円÷480ヶ月×424ヶ月(20歳から60歳までの厚生年金期間)=78万円-68万8,382円=9万1,618円。

以下、経過的加算は9万1,618円を使います。

65歳以降は合計額で3万1,571円+9万1,618円=12万3,189円の増額。

よって、65歳翌月からの老齢厚生年金は105万円+12万3,189円=117万3,189円。

老齢基礎年金68万8,382円と合わせると、65歳以降は186万1,571円月額15万5,130円)の年金。

なお、65歳誕生日の前日時点で65歳未満の生計維持している配偶者事実婚でも構わないが居れば配偶者加給年金38万9,800円(平成29年度価額。前年度より300円減額になった)が配偶者が65歳になるまで加算される場合もあります。

参考

配偶者加給年金の38万9,800円には、本来の配偶者加給年金22万4,300円(加給年金本来水準22万4,700円×0.998)と合わせて、特別加算本来水準16万5,800円×平成29年度改定率0.998≒16万5,500円含む。50円未満切り捨て、50円以上を100円に切り上げ。

0.998というのは前年度の改定率が0.999だったが、前年の物価が0.1%(→0.999)下がったので、前年度改定率0.999×物価変動率0.999≒0.998になる。

年金は物価や賃金の変動に影響します。

平成29年度年金額が0.1%減額し、国民年金保険料はアップ!一体何が起こったのか!?
加給年金と振替加算(日本年金機構、こちらはまだ平成28年度価額)

あと、あんまり…老齢厚生年金で該当する人はほとんど見かけた事無いんですが、65歳時点で18歳年度末未満の子が居れば子の加給年金22万4,300円(平成29年度価額)も加算されます(3人目以降は7万4,800円)。

もし、65歳未満の配偶者と18歳年度末未満の子1人居るとすれば、この事例の男性は老齢の年金186万1,571円+配偶者加給年金38万9,800円+子の加給年金22万4,300円=247万5,671円(月額20万6,305円)。

追記

働くと年金が減らされてしまう!って思われがちですが、あくまで厚生年金に加入していることが条件です。年金でいう在職中というのは、単に働いてるという意味ではなく厚生年金加入中を指します。自営業とかでいくら稼いでも厚生年金に加入してないなら老齢厚生年金は停止されない

なお、65歳以上も厚生年金に加入したり、70歳以上だと厚生年金には加入できませんが厚生年金が適用されている会社で加入できるくらいの働き方をしている人は、老齢厚生年金が停止される場合があります。その時、老齢厚生年金(報酬に比例する部分と厚生年金基金の老齢厚生年金相当分合わせて)が全額停止になると加給年金も合わせて全額停止になってしまうので注意。しかし、老齢基礎年金は停止される事はない

image by: Shutterstock.com

 

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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